養老美泉

John B. Rabitan

――《序》にかえて――

『続日本紀』元正天皇 養老元年十一月癸丑条


 天皇軒ニ臨テ、 詔シテ曰ク。「朕今年九月ヲ以テ、美濃国不破ふわ行宮あんぐうニ到ル。留連スルコト数日、より当耆たぎ多度たど山ノ美泉ヲ覧テ、自ラ手面ヲあらフニ、皮膚なめらかナルガ如シ。亦痛処ヲ洗フニ、のぞきヘザルトイフコト無シ。朕ガ躬ニ在テ、甚ダ其ノしるし有リ。又就テコレヲ飲ミ浴スル者ハ、或ハ白髪黒ニかへリ、或ハ頽髪たいはつ更ニ生ジ、或ハ闇目明ナルガ如シ。自余ノ痼疾こくしつことごとク皆平愈セリ。昔シ聞ク。後漢ノ光武ノ時ニ、醴泉出ヅ。コレヲ飲ム者ハ、痼疾皆愈ユト。符瑞書ニ曰ク。醴泉ハ美泉ナリ。以テ老ヲ養フベシ。けだシ水ノ精ナリト。まことおもふルニ、美泉ハすなはち大瑞ニかなヘリ。朕庸虚トいへドモ、何ゾ天ノたまモノニたがハン。天下ニ大赦シテ、霊亀三年ヲ改メテ、養老元年トスベシ」ト。

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