R トランシーバー
トランシーバー。主に音声をやり取りする通信機器のことだ。
相互に無線の発信と受信が行えるようにまとめられた機械であり、その機能を持っていれば据え置き型のものでもトランシーバーと呼ぶ。
実のところ、無線機器のほとんどがトランシーバーと呼ぶべき部品を持つが、一般的には手持ちで音声をやり取りする機器がそう呼ばれる。
今回はそのトランシーバーがでてきた話だ。
例の怪人のアジトを虱潰しに襲撃し始めた。無論主導は組織の方である。
で、襲撃したアジトだが……。正解だったんだろうか。
そこにあったのはクローンチンピラの儀式場と同じく、なんらかの儀式の痕跡となにかの術式がびっしりと書かれた複数の柱だけだったのだ。
そして、逃げられたという感じでもない。そのアジトに最後に人の出入りがあったのが数ヶ月前っぽいのだ。
踏み台、という感じではない。作った探知魔法は踏み台の先すら網羅する代物だ。隠蔽があるならその隠蔽を引っ掛けてそれの情報が上がってくるはずである。
大雑把な場所しかわからない魔法として構築したのは失敗だっただろうか……。
なにかおかしいような気がするんだよなぁ。
見落としているような違和感が……。
まあいいか。とりあえず今日の分のガチャを開けよう。
R・トランシーバー
出現したのはトランシーバーだった。長いアンテナが伸びた手のひらサイズの機械が一対。
黒いプラスチックのボディに、周波数を合わせるためのつまみが取り付けられている。
外観は一般的に思い浮かべられる無線機だ。そこにおかしな点はない。
むしろ、一般のイメージによりすぎているぐらいで。
トランシーバーといえばこれ、といいたくなる見た目をしている。
景品にはこういう、一目でこれ、といいたくなる代物が割とちょくちょく出てくる。
それが景品全体の特性なのか、イメージに沿った物品をイメージのままに出力しているような印象だ。
異常性を無視した場合、機能も完全に再現されている。異常性のせいでだいたい台無しなんだが。
で、当然このトランシーバーもちゃんと機能が成立しているはずなのだが……つまみが動かない。
ガッチガチだ。接着剤で固められているかのよう。
通信用のボタンも動かない。押し込むことすら出来ない。
そして電源スイッチも入れられない。異常なほど硬い。
ぐ、ぐぐぐぐ……。
力任せに動かそうとしても動かない。どこの部品も可動しないのだ。
なんならアンテナはしなりすらしない。
なんなの? 通信機器なのに通信しないの?
それともこのガッチガチに固まってるのがこれの変なところなの?
後日。兄がこのカッチカチなトランシーバーを分解してみせた。
なんでも、複数の部品を同時に動かそうとするとそこで完全な変化耐性を帯びる、とかなんとか。
でもこの手の道具ってだいたい歯車とかスイッチとかバネとかで複数の部品が噛み合って出来ているものだ。
それなのに複数の部品を同時に動かすと変化しなくなる……つまりカチカチになるってなんのことやら。
ボディを指で押し込むだけなら可能、ネジを外すのも可能、アンテナを曲げるのは外装とアンテナ線を同時に動かすから不可能。
なんなんだよこれ。どういう道具なんだよ。
なんかの失敗作か?
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