R 帝王の冠

 冠。それは頭に乗せる装身具で、主に権力の象徴である。

 権力の大きさ、立場の強さに応じてかぶる冠をかえ、自身の立場を表明する道具でもある。


 今回はその冠がでてきた話だ。





 基部の街で研究している研究者アホどもには研究成果の発表も兼ねて配信動画を上げているやつもいる。

 現状、使えるようになった魔法の紹介とかがメインだが、中には魔法を応用して配信者にありがちなモノボケを飛ばしてくるやつらもいるわけだ。

 人類最高の知能持ちでも目立ちたいという人の性に抗えないのか……。


 まあ、大げさなことになることもないのだが。

 大体企画からアップロードまで、その研究者の国の監視がついているため、出していい情報かどうかでストップがかかるようになっている。


 そんな見ると知能が上がるのか下がるのかわからん動画だが、今回は料理動画がバズった。

 魔法でする料理とはこれ如何に。


 しかし、物質変性で火を入れない焼き肉を作ったり、一連の儀式手順ですき焼きをワイバーンのステーキに変化させたり、虹色に光って唸る食パンを焼いたりするだけでバズるとは。

 まだカエルの形をした動くチョコレートすら作れてないのに。


 世間一般は何がウケるかわからないなぁ……。

 まあいいか。今日の分のガチャを開けてしまおう。


 R・帝王の冠


 出現したのは薄黄色がかった色合いの金属で作られた冠だった。

 わずかに力を込めてみても、たわみもしない。極めて頑丈な金属の感触が返ってくるだけだった。

 熱の伝わり方とか、吸い付くような手触りであるとか、触れたことのない手応えである。


 もしかして未知の金属……?

 金属の色味も金やそれの合金に似ているようにも見えるが、それらより明るい色合いで、かつ青みがかった影色をしている。

 金属の専門知識は当然ないから、それが見当違いである可能性は往々にしてあるが、なんとなくそういう印象を受けるには十分な不可思議さがそれにはあった。


 そして手に持ってわかる。

 ぬちゃりとした魔力……いや怨念が冠のすみずみにまで行き渡っている。

 それは時間の経過によって溜まっていったものではなく、何者かの手によってそれを定着させたものであることもわかる。

 そして、そのようなものはだいたいマジックアイテムだ。


 帝王の冠という名とねちゃっとした魔力、未知の金属で作られたマジックアイテムというところから、大体の効果は予想出来なくもない。

 可能性として大きいものを上げるなら洗脳・魅了系だろう。

 見たものを魅了して傀儡にする。カリスマを極大化して心服させる。発した命令を絶対遵守させる。

 当然類例には事欠かない。


 あるいはその逆。

 国のあまねく力を王に集中させる焦点としてのマジックアイテムの可能性もある。

 国の人間から生命力を吸い上げる。土地に眠る力を自在に差配する。人数や国の規模に応じて力を増大させる。

 いずれにせよ、強大な国をさらに強大にする代物だ。


 他には、身につけたものを乗っ取る邪悪な王の残骸であるとか。

 装備したら魔法耐性があがるだけとか。


 とりあえず予想できるのはこれらのいずれかである。

 普通に厄い。身につけて試すのもはばかられるが……。

 試さざるを得ないだろう。

 私は対策となる魔法を展開してから冠をかぶる。


 すると、視界の中にウインドウのようなものが開き。

 そこには様々な数値……人口を始めとする国の主要な統計情報が表示されていた。


 え!?

 皇帝用の業務アプリ!?





 後日。兄が冠を機神に組み込んだ。

 被せる形ではなく、内部に接続する形で機神の機能の一部としたのだ。

 それにより、機神は周辺の国の統計情報を正確に収集することが可能になった。

 だからなんだというのはある。

 もともと機神はそのあたりの集計は得意だったので意味がないといえば意味がない。

 多重チェックして情報の正誤を確認するぐらいか。


 え? 機神の演算能力を組み合わせて使うと大体の機密情報をぶっこぬける?

 マジ?

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