R ボトルシップ
ボトルシップ。その名の通り、ボトルの中に入れられた船の模型のことである。
主にインテリアとしての用途や、プラモデルのように組み立てる趣味に使用されるものだ。
小さな口からピンセットでパーツを入れて組み立てる関係上、本来入らないものがビンに入っているという印象を受けるだろう。
そこが人を引きつけるのだと言える。
今回はそのボトルシップが出てきた話だ。
例の秘密結社の動きがここのところ変になっている。
理由はまあ、組織の大目標が突然解消されてしまったことだろう。
敵対してた怪人が突如消失したのだからこの手の組織は簡単にバグる。
特にヤバいのは政治的に動いて組織を私物化しようとする派閥だ。
どこでもありふれているといっていい連中ではあるが、混乱に乗じて動かれると非常に面倒なことになっていそうである。
これが国際政治に影響を及ぼすとか……うーん、ありそうでダメ。
そもそも世界の影に入り込んだ組織である。
その影響力は計り知れない。
介入……する必要あるかな……?
いやいや……そこまでするのはそれはそれでどうかとも思わなくもない。
……まあいいか。
とりあえず今日の分のガチャを回そう。
R・ボトルシップ
出現したのはガラス瓶だった。
それも酒瓶を大幅に大きくしたような形状で、中に船が浮いている。
いわゆるボトルシップというものだ。
中の船は一般的な帆船のようであり、細かい装飾からも身分が高い人が乗るものを想定して作られたもののようだ。
レジンや液体が入っていないのにも関わらず、中空に浮いているのはいつものガチャ景品といった感じ。
手にとってビンを回しても傾く素振りすらしない。
それと。
この手のボトルシップはコルクなりなんなりで口を閉じるものだが、このビンにはなにか銀色の金属で閉じられている。
独特の装飾が施されていて、そこだけ世界観が違うというか、マジックアイテムっぽい雰囲気を漂わせているのだ。
中心にそれっぽい突起もある。
う、うーん。
これを触れってことなのか?
得体のしれなさがものすごいんだが。
しかし試さないわけにもいかない。
そう思って触る。
ツルツルとした、金属のような感触である。
手触りは悪くないけどなにもないな……。
と思った途端だ。
先端にあった突起が指先の圧で引っ込んだ。
つまり、スイッチである。
押し込まれた瞬間、私は船の上にいた。
は?
空はガラスで覆われて、その向こう側に小屋のようなもの。
足元には、明らかにガレオン船。
かなりしっかりした作りのものである。
ええー……。
ということはこれは、ボトルシップの中。
蓋にあるボタンを押すと中に入るボトルシップってこと……?
どうやって帰るんだよこれ。
最悪破壊すればいいか……。
そう思って、私は船内の探索を始めるのだった。
後日。兄は船の底で財宝を見つけた。
脱出はマストの柱に蓋と同じ形のスイッチがあったのでそれを押すだけだった。
普通に出入りできる作りだったのだ。
となると、だ。
船としてきちんと作られているこのボトルシップは探索しがいがあるわけで。
鋲の一つ一つまで作り込まれている……というか、普通の船を瓶の中に閉じ込めた代物のようである。
この船がなんだったのかはわからないが、当然船には物資を積む倉庫がある。
そこで兄が財宝を見つけたのだ。
大量の金貨に宝石の数々。
まあ、お宝を手に入れてもどうしようもないが。
この程度のもの、ほとんど無限に生産できるじゃん!
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