R グラビトンクッキー
クッキー。それはサクサクとした食感の焼き菓子だ。
ビスケットとは語源が異なるだけで同じものを指しているらしく、国によって混同されていたりすることがあるそうだ。
様々なものを混ぜ込む事が可能で、チョコチップやドライフルーツを加えることで食感や味を変えることができるため様々なレパートリーが存在する。
今回はそのクッキーが出現した話だ。
あの像から解放された組織の連中がニュースになることはなかった。
大した情報操作能力である。
解放されたのとほとんど同時に組織のバックアップメンバーが動き出して放心状態の彼らを保護していたのだ。
それと同時に人目を避ける結界のようなものを展開していたのでそれが原因だろう。
彫像のものほど強力ではないが、一般人に認識させないのには十分である。
それに報道関係のコネなどもかなり強固だ。
これを駆使することで大体の情報を握りつぶせ、更にはそれでも黙らない相手は……洗脳することすらできる。
うーん危険な組織。
やはり関わるべきではないのでは?
あー……でも。
月曜日の学校で顔を合わせてしまうか……。
……。
考えるのはやめてガチャを消化してしまおう。
R・グラビトンクッキー
出現したのはクッキーが入ったビンだった。
ビンの外装にはラベルが貼られており、それがクッキーであることを記述している。
また中身には内側に黒いチョコレートのようなものを蓄えたクッキーがいくつも入っているのが見てとれる。
……ラベルに暗黒宇宙のグラビトンチョコレートブレンドクッキーと書かれたロゴさえなければまともなものに見えたのだが。
このチョコレートのように見えるものは
異常な食料の中でも常軌を逸脱している。
なんならビンの中の空間が揺らいで見えるほどだ。
恐る恐る一枚だけクッキーを取り出してみるが。
人生でも経験したことがないほどの美味そうな匂いを漂わせている。
チョコレートの宝石を超えた光沢と、芸術的なほどの完成度を誇るクッキーの組み合わせは、食べ物の領域を遥かに逸脱していた。
なんなんだこれは。
そのクオリティに……私の直感は激しく警鐘を鳴らす。
これは旨い、と。
危険を知らせないそれが信用できるとは思えないが、直感でなくても美味いであろうことは誰だって見ればわかる。
どう考えても食べて良いものではない。
グラビトンなどと書かれているものがまともな人類に食べられるはずもなかろう。
それにラベルには水爆10個分のエネルギーを凝縮などという文面が踊っているのだ。
人が食べて良いものではない、はずだ。
だが。
私は負けてしまった。
その暴力的な美味さに。
うっっま。
後日。思わず一ビン食い尽くしてしまったのだが。
数時間空けてからビンを見ると、中にクッキーが再生していた。
食い尽くす前の数と同じだけ入っていたのだ。
ん、ん? と首を傾げていると。
兄が指先でビンの蓋を叩き始める。
するとビンの蓋の裏側からクッキーが生成されてビンの中に落ちていった。
いや、それはその……。
この美味さのものが増えられるのは困る……!
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