R キーワード能力

 キーワード能力。カードゲームなどでよくある、特定の単語を使用することでその挙動を定義した能力のことだ。

 多くのカードゲームでよく見られるのはタップである。

 縦向きに置かれたカードを横向きに変更することで、1ターンに1度ごとのコストを処理する事ができる。

 こういったモノを積み上げることによってゲームの過剰な複雑さを回避しつつ、戦略性を高めるのだ。


 今回はそのキーワード能力が出てきた話だ。





 リナ・バナディールが忙しそうにしている。

 私の尾行の頻度が下がっており、私から何かを聞き出そうとすることがなくなった。

 そして、私の魔力探知になにかが引っかかる頻度が跳ね上がった。


 そこかしこで怪人が現れては怪物をばら撒いているようで、あの秘密結社がひっきりなしに対応に追われているようなのだ。

 異能バトルモノ的に最終決戦でも近いんだろうか。


 まあ私には関係ないことだが。

 世界の裏側でごちゃごちゃしているのは、正直気分は良くない……というか世界観を侵されている感はある。

 あるが……もう今さらだ。

 慣れるしかない。


 はー。

 ガチャの消化をしてしまおう。

 そろそろ異音を撒き散らす時間が来てしまう。


 R・キーワード能力


 出現したのはバッジだった。

 中学生がつけているようなネームプレートのような分厚いプラスチックに彫り込みで文字が刻まれている作りのものだ。

 数個ある長方形型の板には、それぞれ異なる文面が刻まれており……


「二回攻撃」

「飛行」

「蹂躙」

「スレイヤー」


 ……などだ。

 厚手でしっかりしている割にチープな印象が拭えないそれからはカプセルトイらしさをはっきりと感じる。

 まあ、カプセルトイは一つのカプセルに5~6個まとめてねじ込んだりしないが。


 で、その効果だが。

 バッジである以上、つけることによってなにか変な効果を発揮するタイプだろう。

 他の元からずれた効果を持つ景品に比べれば、バッジとしての機能を保っているだけマシな部類だとは言える。


 とりあえず試してみるか。

 どうせ身につけたら書かれた効果を発揮する道具だろう。

 そう思って私は「飛行」と書かれたバッジを服につけた。


 ……。

 何も起こらない。

 飛行と書かれているにも関わらず、浮かび上がることもなく。

 飛ぶイメージを組み立ててみても、なにも反応しない。


 アレぇ!?






 後日。兄が使い方を見つけ出した。

 カードゲームにおけるキーワード能力は基本的に、そのほとんどがカード同士の戦闘を解決する際に効果を発揮する。

 つまりだ。

 身につけた状態で、そのキーワードに沿った処理……動作を行わなければならなかったのだ。


「二回攻撃」を身に着けたサメ機巧天使シャークマシンエンジェルは攻撃の瞬間に重なり合うような形で二人に分裂して相手を攻撃し。

「飛行」をつけたサメ機巧天使シャークマシンエンジェルはその攻撃を透過するように回避し。

「スレイヤー」をつけたサメ機巧天使シャークマシンエンジェルは攻撃が触れた相手を即死させた。


 う、うーん。

 起動条件がカードゲームのそれと同じとも限らないし。

 検証……検証しづらい……!

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