R 時計塔

 時計塔。時計を周囲から見やすいように高く作られた建造物のことである。

 公共施設など、街の中心機能になる施設に併設されることが多く、また古くは鐘の音で時間を知らせる役割もあった。

 現在は街の景観のためにモニュメントとして建てられることが多い。

 これは個人用の時計の普及によって、時計塔の知らせる時間を当てにする必要がなくなったためである。


 今回はその時計塔が出てきた話だ。






 植えたネギが剣山みたいになっていた。

 小さな根っこから競うように複数の頭が出たと思ったらそれが元のネギよりも大きなサイズに育ってしまったのだ。


 うーん、どうしてこうなったのか。

 しかもそのネギすべてに切断能力が宿っているらしく、不用意に近づくとあっさり足を持っていかれかねない。

 素材はただのネギだと言うのに。


 まあネギがなくても農場に足を踏み入れるのは危険なのだが。

 もう何が育てられているのか把握していない。

 外側から見るだけでもろくでもない植物が生えまくっていることだけはわかる。


 もういろんな金属鉱石が生っているトマトに似た植物とかもうね?

 前と比べるとだいぶ変わったな……という感じもある。

 あと植物庭園なんかにありがちな生け垣の迷宮を作っている蔦植物とか。

 一つの種から勝手にこうなっていることを除けばきれいなのだが。


 まあ、外に出さなければやかましく言う必要もない。

 適当に放置しておこう……。


 さてガチャ回そう。


 R・時計塔


 出現したのは建造物だった。

 それも見上げるほど巨大な塔である。

 その塔の上層部には時計が据え付けられており、現在の時刻を示していた。


 テラスの端……ではなく、それはテラスの外側に出現していたのだ。


 うおん、機神に新しいパーツが増えてしまった。

 幸いテラスの外側というか、城上部の空きスペースに強引にねじ込んだというか。

 テラスと同じ高さに扉が付けられているが、それは高さを揃えた結果のように見える。

 本来の入り口はテラスよりも下にあるのだろう。


 しかもまたこの時計塔がゴシック調で……機神のデザインに全く調和していない。

 機神はまあ無骨なデザインであり、白亜の城! とかとても言えるような代物ではない。

 良くて要塞とかそういうやつだ。

 質実剛健と言えば聞こえは良いが。


 それに装飾過多なゴシック調の時計塔が強引に生えているのは……。

 ぶっちゃけシュールというか、なんというか。

 不釣り合いではある。


 というか……。

 時計塔がゴシックホラーに出てきそうなデザインなんだよなぁ!

 豪華な分だけ怖い!

 ご丁寧にまで入っている。


 いやあこれ……幽霊が出てきたりしないよな……?






 後日。兄が内部の調査に出た。

 内部はホコリまみれであり、いかにもホラーの舞台になりそうな外見となっている。

 だが、特に何も起こることなく時計の裏まで上がれてしまった。


 そこで兄が見たのは、12個の穴だった。

 ちょうど瓶がハマる大きさの穴だ。

 だから好奇心が旺盛な兄は……そこにポーションの瓶をぶっ刺した。


 鐘の音とともに拡散されるポーションの効果。

 聞こえる範囲にいた生き物にポーションの効果が反映され、その傷を癒やし疲労を回復させる。

 たまたま傷を癒やすポーションだったから良かったものの、ダメージを与えるポーションだったりしたらどうなっていたことやら。


 というかポーションの効果を拡散させる時計塔ってなんだよ!

 何に使うために作ったんだそんなのもの!

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