R クレーンゲーム
クレーンゲーム。それは悪夢の貯金箱である。
内側にディスプレイされた景品を、鉤爪型のアームで掴んで落とすことで入手できる……という遊技機だ。
しかし、今ゲーセンなどに置いてあるクレーンゲーム機は確率機といい、投入された金額が一定になるまでアームが弱く景品を持ち上げられないものばかりである。
まあ、設定金額まで金を入れれば取れなくもないので一長一短ではあるが……。
今回はそのクレーンゲームが出てきた話だ。
エルフの里を整備している合間に、魔法を学習していた調査団のメンツがだいぶ入れ替わっていた。
機神が作り出した超わかりやすい代わりに超分厚い教科書と、
直接授業に参加しているメンツがだいぶ入れ替わっている。
あと、修練場に来ている人が大幅に増えている。
つまり……魔法を学ぶためだけに来ている人が増えて来ている。
というか教室がだいぶギュウギュウになってしまっているのだ。
これは……拡張しないといけないやつだな?
すでに大講堂並の広さがある教室なのだが……。
まあ未来技術として学びに来ているし、皆、国の威信を掛けて参加しているので意欲に溢れている。
そのため教えるスペース以外では問題は余り起こっていない。
……あれ、これ別の技術を開示したらプラットフォームがパンクするやつでは。
魔法以外のもあれやこれや、まだ大量にあるというのに。
そんなことを兄に話していたら、すっと世界樹の接ぎ木を持ち出そうとした。
それで土地を広げようとするのはやめろ。
兄に回し蹴りを加えたあと。
ガチャを回すことにする。
R・クレーンゲーム
出現したのはクレーンゲームの筐体だった。
なんか似たようなのが前に出たような気がしなくもない。
箱はまあどこのゲームセンターでも見る、一般的なクレーンゲームのものだ。
だが……中身はそうではない。
見たこともない作品のフィギュアが飾られている。
きっちりアニメのタイトルロゴまで入っていて、まるでその手の景品のようだが、スマホでググってもそのアニメは出てこない。
しかし、まあこれは普通だな。
どっちかというと問題があるとすれば、レバーの横にボタンが3つ並んでいることだ。
一般的な横に移動するボタンと奥に移動するボタン。
それに加えて、謎の三枚の板と上向きの矢印が書かれたボタンだ。
なんとなくだが、SFの次元面の説明に出てくるような絵に見える。
……いや、レバーがあるのもおかしいな。
よくわからないが……やってみればわかるか。
そう思って百円玉を投入する。
いきなりその上昇ボタンが点灯した。
うわぁ……。
押して見る。
すると、クレーンゲームの内部が上に上がり始めた。
上部には天板があるというのに、乗せられた台ごと景品が飲み込まれていき、やがて下部からべつの台がせり上がってくる。
全く違う様相、というか小さな世界のように丁寧にジオラマされた盤面だ。
ボタンから手を離し、うっかりレバーに触れてしまう。
すると、今度はジオラマがレバーの動きに沿ってずれた。
ガラス面を境界に、際に達したものは消え去り、反対側の面から別のなにかが出てくる。
う、うーん?
なんだこれは。
盤面が異常すぎて何が起こってるのかわからない。
なお残り2つのボタンは普通だった。
あとアームが弱すぎて景品をつかめない。
複雑そうな形のものを掴んだのに滑るってなんだよ。
後日。兄がクレーンゲームのガラスを外した。
後から気がついたのだがガラス面のすべてが一枚ガラスで作られていて、開ける方法が存在していなかったのだ。
だから兄はドライバーを持ち出し……ネジを一つ一つ外してガラスを取り外したのだ。
そこには何もなかった。
完全な無である。
なんなら景品を落とすようの穴すら無い。
アームもない。
だが、ガラス越しに見ると存在しているのだ。
ええー……。
しかも兄がレバーをいじくり回した結果、見える盤面の一辺の長さが、少なくとも一キロメートルほどあることがわかった。
そこには様々な景品が乗せられていて……中には生き物みたいに動いているものすらあったのだ。
なんだこれ。
動いている景品の集落みたいなものまで見つけて、もうなんなんだよこれ。
兄はアームをぶつけて壊そうとするし。
アームが超弱いせいで舐めるだけで終わったが。
いや、ほんとなにこれ。
あまりにわけがわからないし、景品も取れないので。
倉庫に封印することとなった、南無。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます