R 賞金首の手配書

 賞金首。何らかの法を犯し、賞金をかけられるまでに至った悪党である。

 都合、賞金の額が大きければ大きいほどその犯した罪は大きくなる傾向にある。

 創作においては倒せば金が手に入る存在とあって、ファンタジーやらゲームやらでは結構出てくることのある名称だろう。

 特にあるRPGでは作中に出てくる殆どのボスが賞金首であり、倒すと結構馬鹿にならない金額の賞金がもらえる形になっているほどだ。


 今回はその賞金首の手配書が出てきた話だ。









 あの才能の卵から得た刻印から、杖が出てきた。

 私の才能が形になった杖だと触れた瞬間に理解してしまったのだが、結構突然出てきたので割と危なかった。

 テラスでくつろいでる時だったのでどうにかなったが。


 で……この杖、だいぶヤバい。

 握った瞬間、私の魔法で法則を改変してしまえることがわかってしまった。

 ごくごく当たり前の世界を、魔力に任せて作り変えてしまえるほどの力。

 そこまでしなくても、台風を対消滅させる程度の出力の魔法を使えるほどこの杖は増幅力に優れている。


 やべえ。

 この杖を手に持っているだけで魔法の制御能力も跳ね上がっている。

 今なら出力に任せて無から黄金を作り出せるかも知れない。


 いや、そんな過大な能力、何に使うんだよ……。

 正直私の手に余る。

 手に余らないものが存在したか? と聞かれるとかなり微妙なところだが。


 そう考えていると紋章の中に杖が引っ込んだ。

 出し入れは自由らしい。


 便利なのかそうでないのか。

 かなり微妙だ……。


 まあいいか。

 ガチャを回そう。


 R・賞金首の手配書


 出現したのは、紐によって綴じられた冊子のようなものだった。

 少しだけ厚い紙を表紙に、ポスターのようなものが綴じられている。

 そして内容はというと、名称の通り賞金首の手配書がいくつも束ねられていた。

 紙の質がページによってバラバラで、掲示されていたものをまとめ直したもののようである。


 それも、モンスターの手配書だ。

 どれも危険度の高いモンスターであるようで、その特徴が注記されている。

 中には見ただけでアウト、とかいうやばすぎる代物まで存在する。


 これは……異世界の手配書、ということなんだろうか。

 内容は凝っているが、どうにもこの世界や霧星に存在する生き物ではない。

 機械改造サイバネしたタコとか、まあ霧星にはいないし、機械じかけの星にも同様に存在しないし、地球にいるはずもない。


 そうして、パラパラとめくっていると。

 綴じが甘かったのか、1ページが抜け、ひらひらと落ちていく。

 拾おうとかがんた瞬間、目の前にそのページに描かれていた賞金首が出現した。


 ああおわああー!?

 出現したのはその甲殻に兵器を搭載したクワガタムシ。

 なんかもう当たり前のようにでかく、軽自動車よりもデカいその体はそれだけで危険である。


 反射的に魔力のこもった拳を振り抜き、その頭部を粉砕してしまったが。

 極めて丁寧な修練と先天的な才能に、増設されたあの紋章によるバフで凄まじい威力となった魔法は、巨大化したことによって硬質化したクワガタムシの甲殻をまるで紙のようにぶち抜く。


 うーん。

 思ったよりも危ないやつだなこれ……。

 どっちが? と聞かれると、どっちも、って答えるやつだが。


 ええー……。

 絶対兄がおもちゃにするじゃんこれ……。









 後日。案の定おもちゃにした。

 賞金首は撃破するとその場にその存在に由来するアイテムをドロップする。

 なんかゲームっぽいなと思ったが、どうもゲームの代物のようなのでゲームそのままのようである。


 まあ、そうなってくると一回でドロップアイテムを網羅出来るわけではない。

 そのため、兄は賞金首を何度も呼び出してはサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを使って即座に始末することを繰り返しているのだ。

 そのたびに積み上がるガラクタ……。


 何に使うのかわからないガラクタを積み上げるのやめてもらっていいです?

 なんかヌメッとした液体とか、まじで何に使うつもり!?

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