R 黄金のスカラベ
スカラベ。フンコロガシとも呼ばれる虫の一種だ。
古代エジプトでは丸い玉を転がす姿から、太陽を運ぶ神の化身として信仰されている。
そのため、多くの壁画や装飾品のモチーフに利用されてきた。
その丸い形に分割線を書くだけでもスカラベのような形になるためわかりやすい意匠としての側面もあったのだろう。
今回はそのスカラベが出てきた話だ。
意図せずしてマッチポンプの形になってしまったガチャレクシア側での騒動だが、すぐ撤回された。
理由は簡単である。
向かう途中にある森が、完全に異界化してダンジョンに変貌していたからだ。
その森が世界樹から続く巨大な根の一部からなっていることがあちこちから隆起し巻き上げている根を見てもわかる。
ガチャレクシアは前も言ったとおりに、ダンジョンから得られる資源で成り立っている街だ。
そのため、ダンジョンの取り扱いやそれの周辺を開発する技術などが集積されている。
それを使って新たな街を作ろうという方向に切り替わったのだ。
そもそも利益を目的に行動していた集団だからそりゃそうなる。
世界樹を調査するにもダンジョンの踏破は必須。
そしてそれはある意味で外様である
ダンジョンの先行踏破はダンジョンに関する知識を独占出来る。
故に、依頼は撤回された。
最もその森のダンジョンは世界樹によって作られたダンジョンなんだが。
領域としては、機神の支配下にあるものだと言える。
だから
だから兄は体のいい防壁が出来た、と……。
ダンジョンの構造を難化し、そしてランダムポップモンスターを増強。
ドロップ品の品質を上げることで、それ以上進ませないようにした。
なんというか、兄が他人を餌で釣る方法を身につけていっているような気がする……。
はー。
まあいいか。
ガチャを回すとする。
R・黄金のスカラベ
出現したのは、その全身を黄金で作り上げられた、機械じかけのスカラベだ。
全身が歯車で出来ていることを示すように、外装の隙間から歯車が顔を覗かせており、それは動くたびに回転をしている。
まあ、それだけなら機械仕掛けのスカラベでしか無いんだが。
これがまあ、直径1メートル50センチぐらいあるとなると話は変わってくる。
背中に座面と思しき凹みも付けられていて、明らかに上に誰かが乗る想定で作られているのだ。
ええー……。
機械仕掛けの虫型の、乗り物。
なんというか、もうその時点で用途がさっぱりわからない。
効率的でない。
乗り物というものは効率を追求するものだ。
まあとりあえず座ってみるか。
手に持てるハンドルのようなものがなく、安定に欠きそうな座席だが、実際座ってみると意外と安定している。
どっしりと座ると、びっくりするぐらいバランスが取りやすい。
無理な姿勢をしても倒れなさそうなぐらいである。
そして、座るとスカラベは動き出す。
私の意志を読み取る、というより私がどうしたいかを考えて動いている、そんな感じだ。
6本の足でゆっくりと歩くのだが、思いの外安定している。
なんというか。
自動で動く座布団……みたいな……。
想像以上に安定しているのと、乗り心地がとてもいいせいで、余計座布団感がある。
なんだ……これ……。
足は遅い。
はっきり言って遅い。
何に使うために作られたものかやっぱりわからない。
さっぱりわからん。
後日。兄がデカい球を転がさせていた。
スカラベの上に座ったまま、2メートルぐらいある球体を、あのスカラベ特有の運び方で。
どうして安定しているのかと感じるぐらい不自然なほど、兄は傾いている。
普通に滑り落ちておかしくないのに、安定している。
……。
えっ。
そんな球体、転がしながら運ぶ用途ある?
変な機能が見つかっても、結局用途がわからない。
……、これまじで何に使うものなんだ……。
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