UR 無限連結式転移ゲート

 ワープ。それははるか宇宙へと旅立つのに必要な空間制御技術だ。

 原理はいたってシンプルで、空間を折り曲げて短くしてしまうだけだ。

 短くなった空間の上を移動すれば折りたたまれた空間の分だけ、移動に必要な距離が短くなるという寸法だ。

 まあ口で言う分には簡単だが、現実問題としてどうやって空間を曲げれば良いのかという話になってくる。

 現代技術で空間に干渉することは不可能なのだ。

 ただ……空間が歪むという現象は起こりうることだけがわかっている。


 今回は、空間が歪んだ話だ。











 UR・無限連結式転移ゲート


 出現してしまった……。

 私の視線の先、テラスから見える大陸の端。

 そこに超巨大な……、それこそSFでしか見たことがないサイズの塔が出現していた。

 それは天高く、空の向こう側まで続いている。


 すなわち、宇宙エレベーター。

 天の向こう側、重力のくびきを超えて宇宙にへと飛び出す超巨大建造物だ。


 幸い、出現位置は崖であり、思いっきり魔物がうろついている危険地帯のため人がいなかった。

 というか海中を起点に出現したようで、大陸の端に掛かっているのは基部の一部である。


 見えている基部だけでも竜鮫迷宮機神ドラゴシャークダンジョンマシンゴッドの数倍はデカい。

 機神が乗り上げて問題がなさそうなほどだ。

 そしてその周囲には港湾設備としてだろうか、メガフロートが存在している。

 その上に倉庫が立ち並びそれを利用する人々を待っているようだ。


 やべえよ……でかすぎるよこれ……。

 出現しただけで地球から観測できるレベルででけえよ……。

 しかもガチャ景品だから当然の如く、瞬間的に出現している。

 新惑星のときの比ではない。

 監視されている中で突然出現したのだから、誰だって超常現象を疑う。


 しかも超技術による建造物だ。

 どう考えても興味を惹かれないわけがない。

 ただでさえこちらにある文明に興味津々なのだ。


 ……と、そこまで考えて、カプセルの中に残った紙に目を落とした。


 無限連結式転移ゲート


 ……。

 無限連結式。

 転移ゲート。


 無限連結式はまあいい。

 多分使われている技術の名称だろう。

 問題はその後だ。


 転移ゲート。

 転移ゲート!?

 この超巨大な建造物は、宇宙エレベーターではなくて転移ゲートだと申すか!?


 すなわち、宇宙にまで上がらなければ実現できないタイプの超技術が使われていて、しかもそれは転移ゲートだと。

 ありえねえ……。

 実験室のドアも似たようなもんだが、この宇宙エレベーターには明らかにもっとやばい技術が使われている。


 だがそのヤバさがなにかさっぱりわからない。

 私の認識していないところでもっとやばいことが起きているような、そんな気がしてならないのだが、宇宙エレベーターは直立しているだけである。


 兄に言ってサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを送り込まないと行けないかなぁ。







 その日の夕方。夕食を食べているときである。

 静かに味噌汁を啜っていると、そのニュースは始まった。


 沖縄本島の沖合に、突如として出現した超巨大建造物の映像が。


 私は味噌汁を吹き出しそうになった。

 その超巨大建造物には見覚えがある、というか実験室のドアを抜ければすぐ見える。


 無限連結式転移ゲートじゃねーか!


 イヤな直感がビンビン反応していたのはこれが原因か。

 見事に対になるように作られているらしく、デザインもそっくりである。


 えええええ……。

 しかもバリアのようなものが張られているらしく、近づいた船が見えない力で押しのけられている映像が流れている。

 って、そのバリアも超技術じゃねーか!


 案の定、色んな国が声明を出す事態になっている。

 宇宙まで伸びていて、しかも宇宙ステーションのようなものまで備えている突如出現した超巨大建造物、国家として手中に収めたいという気持ちはわからないでもない。


 えー……。

 あんな、あるだけで社会をしっちゃかめっちゃかにしそうな代物。

 ガチャから出現したから多分私の所有物扱いになってるはずなんだよな……。


 めっちゃ困る……。

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