SSR 邪神殺しの聖剣
聖剣。様々な神話や英雄譚で語られる、神やそれに類するものから与えられる超常の力を秘めた剣のことである。
魔剣と異なり、使い手を自ら選び取る性質を持っていることが多く、それ故その剣を手に入れたものは大きな運命のうねりに飲み込まれる。
引き抜いたために王となる定めを背負い、そして最後には国を滅ぼすしかなかったアーサー王が最近だと一番思い浮かべやすい聖剣の担い手だろう。
今回はその聖剣が出てきた話だ。
よりにもよって、タイミングよく。
北限迷宮最深部にたどり着いた
おぞましい色彩でその全身をテカらせ、張り付いた肉片によって周囲の建材と一体化している。
クトゥルフ系の邪神をよりめちゃくちゃにミキサーしたような見た目だ。
それだけでなく、無秩序に生えた瞳は、目を合わせるだけで致命的な影響を及ぼすらしく、全身機械仕掛けの
存在しない感覚を想起させるのはそれだけで異常だと言っていい。
手や足といった、動作に使用するような感覚器を持ち合わせていないようで、ただ脈動するだけの肉塊のように見えるが、その肉塊がこれまで見てきたモンスターと融合しているため、不用意に近づけば取り込まれその肉体の一部とされるだろう。
それも、同化してその能力の一部に混ぜられる。
そう、あの肉塊は学習しているのだ。
周囲のものと同化することによって。
精神攻撃をなんとか乗り越えた
それどころか、動けないように見える肉塊を器用に変形させ、取り込んだモンスターを自分の体かのように器用に操って反撃してくるのだ。
あまりの攻撃の効かなさっぷりに兄はなにか概念的な防御能力でも持っているのではないかと疑っている。
ガチャの景品にたまにある、完全破壊耐性のような。
もしそうなら……
持ち合わせているのは魔法と物理攻撃だけだ。
概念的な異能は無い。
千日手になっている兄を横目に……私はガチャのカプセルを開封する。
1時間ぐらいずっと状況が変わらないから飽きてきたんだよね。
SSR・邪神殺しの聖剣
……はい。
青い透き通った宝石を磨き上げて剣に仕立て上げたような、美しい剣が出てきた。
刃渡りは90センチほどで幅が広い。
片手で振り回すにはでかすぎる剣である。
それにこの青い刀身は不思議な光を内に秘めている。
温かいような、それでいて心が安らぐような、そんなゆらめきのような光だ。
心なしか、体力が回復しているような気もする。
ゆっくりとだが元気になっていく感じがするのだ。
そして、そんな美しくも優しい印象を受けるこの剣には、“邪神殺し”なるやたら物騒な名前がついている。
もうなんというか。
使い方がわかったような気がする。
私はそっと兄に邪神殺しの聖剣を手渡した。
邪神殺しの聖剣を持った
剣に宿るあのゆらめきのような光が邪神の弱点らしく、剣を掲げるだけで邪神に対して魔法が通り始めたのだ。
それでもなおアホほど硬いのだが、聖剣で斬りつけるたびにその耐性もどんどん失われていく。
肉塊を切り飛ばしても、肉片も生きたままなので切断したところで効果は薄い。
だが聖剣は断面から邪神を消滅させていくためかなりのダメージになっているように見える。
あの聖剣、芸術品のような見た目のくせにえげつない性能してるな……。
明らかに振るうたびにその力を増して、斬撃に青白い炎まで載せるようになっている。
邪神も負けじと、肉片をかき集めて変形し、街で見たあの怪物に似た姿にへと変身するのだが。
小さくまとまってしまったせいで、聖剣による上段斬りで真っ二つになってしまった。
死体も青白い炎に包まれて燃えていく。
その光景は幻想的ではある。
凄惨な暴力が振るわれたあとだということと燃えているのは邪神の死体だということを除けば。
ただ今回。
ガチャからあまりにも都合よくこんなものが出てきたことが一番怖い。
ガチャがあるのは私の部屋でなにからそれを知ったのか。
そもそもガチャを引いたのは邪神に遭遇する前である。
やっぱりあのガチャ、得体が知れない……。
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