R ぬののふく
ぬののふく。RPGの初期の初期、最序盤で手に入る防具のことだ。
その名の通り、ただの私服である。
防具屋というより、よろず屋のような雑貨を扱う店で買えそうな代物だ。
強度も市販の布並、とても防具とは呼べない代物である。
だが、そんなものでも無いよりはマシだ。
今回はそのぬののふくが出てきた話だ。
地上戦艦の解析中、不意に機械じかけの星に関する情報を手に入れた。
地上戦艦の中に眠っているデータの中に、過去の機械じかけの星の情報があったのだ。
どうも機械じかけの星は機械生命体の住む星だったようだ。
巨大なマザーと呼ばれる機械生命体が自身に似せた機械を作り出し、それが生命として定着したのがあの星だったのだ。
そしてこの地上戦艦もその機械生命体のうちの一体。
すでに生物としては死んでいるらしく、意識の残滓すら掬い上げることはできない。
記録映像はいくつか出てくるが、記憶と呼べるようなデータが破損している。
まあそのせいで兄は頭脳に当たる部分に
しかし地上戦艦の記憶の中にある機械じかけの星の映像には、たくさんの機械生命体で活気に溢れた街の姿が写っていた。
だが宇宙エレベーターから見えるその星の姿は、まるで死んだかのように静かだ。
わずかに光を灯しているだけでその動きも見られない。
この星に何があったのだろうか。
生き物がいたはずなのに無反応なのはやはりおかしい。
警戒してる場合じゃないかも知れない。
まあ、それをするのは兄だから置いといて。
私は今日のガチャを回すことにする。
R・ぬののふく
出現したのはクリップピンだった。
ネクタイを止めるピンみたいなやつである。
横に広い留め具の上に、プラスチックに似た素材の板が張られていて、そこに「 :ぬののふく」と彫刻されているのだ。
……。
なんだこれ。
だいぶ変なのが出てきたぞ。
というか、似たようなのをちょっと前にカプセルトイで見たような気がする。
クリップピンだからとりあえずなにかに留めるのが使い方なんだろうが……。
だから、近くにいた兄のジャージの襟首に挟んで見ることにした。
挟むと同時、プレートの文字の空欄にEの表示が灯る。
それとともに兄のジャージがぬののふくに変化した。
いや、視覚的にはジャージのままである。
だが、それを言葉にしようとするとぬののふくになるのだ。
というか、脳があれはぬののふくだと理解してしまっている。
それの防御力が3であることとか、麻でできていることとか、売値が10Gだ、ということとか。
ぬののふくであることをむりやり納得させてこようとする。
だが、何度でも言うが視覚的にはジャージなのだ。
白色の普通のジャージなのだ。
それはぬののふくではない!
後日。兄がプレートの表面をこすったら落ちたとか言って、「:」だけ残ったクリップピンをこちらに見せてきた。
彫刻されていたはずなのに、指でこすったら印字が落ちた、と。
いや何だよそれ。
しかも兄はそこにゆうしゃのよろいとマーカーで書き込んで、ジャージに留めやがったのだ。
とたんにゆうしゃのよろいになるジャージ。
もうなんだよ……。
しかも兄、この状態で防御力があるか試しだすし……。
結果?
成功だよ!
普通に魔法攻撃を弾き返したよ!
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