R 氷
氷。固体になった水であり、飲み物を冷やすのに使われたり、熱を持った体を冷やすのに使用される物だ。
その製造には、文明の技術力が必要となる。
なぜなら水を冷やすだけで出来るため、その冷やすという作業にどれだけの技術が利用できるのかが問われるためだ。
温度を下げるという技術はシンプルであるがために、科学的に単純な理屈でしか実現できないため、投入するエネルギーの量に必然的に依存する。
そして効率的でない技術は普及しない。
現在でこそそのための道具である冷蔵庫が一般に普及しているが、かつては氷を乗せて食品を冷やしていた時代があるほど、冷却を効率的に行うのは難しかったのだ。
今回は氷の塊が出てきた話だ。
心臓部に存在する炉心が、常に進化の秘薬を生産し続け、それを全身に供給し続けることでその存在を進化させ続けているのだ。
それを兄から聞いたとき、あまりにも無茶苦茶すぎると思ったものだ。
心臓が脈打つたびに強くなる、そんな存在がいて許されるのか、と。
呼吸するたび強くなる、そんな存在が存在していられるのか、と。
それに関しては存在できてるんだから出来ているとしか言いようがない。
すでに巨体を手に入れているが故、その進化で内部構造を変化させ続けているようだ。
より強靭に、より複雑に、より高度に。
元がダンジョンだったために、もはや兄でも全貌がわからないほど複雑になってしまったフロアが存在するほどだ。
一体何を招くつもりか全くわからない。
ドラゴンが侵入してきても瞬殺出来るダンジョンとかそれはもはやダンジョンなのか?
しかもその進化の秘薬、余剰分が出て少しずつ溜まっているそうである。
放っておくと自分で飲みだしそうなのが兄だ。
モンスターに使っているうちは良いが、人が飲むとどうなるかわかったものではない。
きちんと良い含めておこう。
だがその前にガチャの消化だ。
少しずつ異音を立てるペースが早まっているような気がするが、気のせいだろう。
さぼってガチャを回すのが遅れたり、早めに回したりしているからな。
R・氷
出現したのは氷の塊だった。
適当に氷山だけを転移させたかのように、テラスから見える視界いっぱいに氷の塊が出現したのだ。
それもかなり純度の高い氷だ。
形が歪みことすれ、向こう側の景色がきれいに見えるのだ。
そして……寒い。
巨大な氷が出現したために、周囲の空気が冷やされているのだ。
それに……この氷、あれだけ周囲を冷やしたというのに表面が溶け出していないのだ。
太陽の光と、周囲の気温で溶け出していてもおかしくないというのに、その表面はさらさらしている。
普通、外気に晒された氷は表面が溶け出してつるつるしだすというのに、だ。
ええー……。
でかい+つめたい+変化しない。
置いておくだけで邪魔は他にもあったが、これは置いておくだけで周囲の温度をガンガン冷やしてしまう。
斧はその点、使わないときは倉庫にでもしまっておけばいい。
これはでかすぎてしまえない。
とても、とても邪魔だ……。
後日。兄がダンジョン内の再配置で氷を移動させた。
移動させた先の部屋を氷室にしてしまうあたり兄はガチャの景品を無駄にしない。
最も、その作った氷室を利用する予定がないので本当に無駄にしていないかは疑問符がつくが。
ダンジョンに冷やしておく必要があるものが存在しない。
モンスターの素材などで腐りそうなものがあるならわかるが、そういうのもまだ集めていない。
じゃあ何のために作ったんだ。
どうせ作りたかったから、でしかないだろうなぁ。
こんな氷それぐらいにしか使えないだろうし……。
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