R 時短コーラのレシピ

 コーラ。濃縮されたシロップを水で溶いて飲む飲料……だった炭酸飲料である。

 コーラという名前は、元々コーラの実から抽出したコーラエキスからシロップが作られていたことから来ている。

 最も、現在はコーラの実に代わり、様々な香料や調味料を組み合わせて作るのが一般的だ。

 元は炭酸飲料ではなかったが、誤ってシロップを炭酸水で希釈して提供したのがきっかけで炭酸飲料となった。


 今回はそのコーラのレシピが出てきた話だ。


















 兄が発掘ダンジョンのショートカット階段の改修で困っているのは、明かりだ。

 発掘ダンジョン自体はなんやかんや、いろんな場所に半端に明かりが置かれていたり、フロアそのものが明るくなっていたりするのだが、ショートカットの階段にはそういったものが一切ない。

 そのため、夜の闇もかくや、というべき暗さが延々と続いているのだ。


 行って帰ってくるだけならば、サメ機人シャークボーグの目と懐中電灯だけで十分なのだが、何度も往復するとなると流石に暗い。

 ショートカットとはいえ、ダンジョン。

 いつモンスターが迷い込んで闇の中に伏せていないとも限らない。


 なので少しでも明るくしないと危険……多分危険なのだ。

 最もサメ機人シャークボーグの目なら夜の闇程度の暗さなら見えているのだが。


 さて、ガチャを回そう。


 R・時短コーラのレシピ


 出現したのは、なぐり書きがされたA4サイズの紙だ。

 そこに書かれているのは飲み物のレシピらしい。

 レシピか。

 すき焼きのレシピ以来のヤバいものが出てきて身構える。

 どうせこれも完成すると別物に化けるんやろ騙されんぞ。


 さりとて、これをそのまま兄に渡すとヤバいことになるのも必定。

 試すだけ試す必要はある。

 さて、材料は……と。


 ■材料

 炭酸水

 ミント

 ジンジャー

 ローリエ

 チリペッパー

 ガーリック

 クミン

 コリアンダー

 カルダモン

 ガラムマサラ

 ミックススパイス

 鷹の爪


 またカレー粉か!

 カレー粉じゃねーか!

 すき焼きの割り下でそれはもうやっただろ!


 うわ……しかもスパイスの内容が違うだけで手順が一緒だ……。

 とにかく順番通りに投入して混ぜる。

 ただそれだけ。

 ただそれだけでコーラのシロップが出来るので炭酸水で割って完成、だと書いてある。


 いや、少しだけ違うかな。

 炭酸水を少しずつ入れながらカレー粉を練る作業がある。

 カレー粉じゃない、シロップだ。


 とりあえず練ってしまおう。

 案外あっさり練上がり、トロトロのシロップ状に変化していくのだが、その過程でどんどんカレー粉色になっていくのが不安を誘う。


 色といい、匂いといいカレー粉そのものなのだ。

 いや、材料がカレーに使うスパイスだらけなんだからそりゃカレー粉にもなろうものではある。


 さて、シロップの出来上がり。

 カラメルみたいな粘度のカレー粉が出来上がってしまった……。

 不自然に透き通っているのが心をざわつかせる。


 しかし、結構時間がかかったけど何が時短だったんだ?

 まあいいか。

 出来たシロップに炭酸水を注いで希釈していく。


 炭酸水が注がれると共に、シロップは溶け、液体は青色に……。

 青色に発光し始める。

 それは、まるでチェレンコフ光のように。


 ガッ、放射線測定器ガイガーカウンター

 確か兄の道具箱にあったはず!















 後日。兄は、ペットボトルに詰めたコーラをショートカット階段に明かり代わりに並べ始めた。

 未だ青色に発光しているコーラからは放射線は検出されなかった。

 明らかに危険なモノ……核反応のそれの光に見えたのだが、全くそんなことはなかった。

 一応帯電してるかとも思って電流計も突っ込んでみたが無反応。

 サメもどきに飲ませて毒性がないことも確認した。


 安全だとわかった兄は、よくわからない原理で尽きず光り続けるこれを階段に並べることにしたのだった。

 青く照らされる階段は神秘的である。

 それがペットボトルから照射された光じゃなければな。


 なお味は兄曰く、時が加速する味で美味い、だそうだ。

 意味わかんねえ。

 

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