R ゲーミング魔法陣

 魔法陣。もともと外界と内界を区切るために使われた円陣のことである。

 悪魔を召喚するなどを行う際に、魔法陣の中に立つことで悪魔からの干渉を防ぐ、などの用途で使われる。

 ただ……創作の影響からか、魔法を使う際に生じるエフェクトのような扱いをされている。

 魔法陣の中に悪魔を召喚したり、魔力をためると自動で展開されたり、内側や外側のモノの形を組み替えたりなどだ。


 今回はその魔法陣が出てきた話だ。














 乗り込んだダンジョンは4層しかなかった。

 そしてその4階層はセキュリティのしっかりしたエレベーターでのみ接続されている。

 階段のような動力を使わない移動手段が完全に存在しないのだ。

 防衛という意味では侵入経路が存在しないのは最良の防御だと言っていいだろう。


 第一層を危険なモンスターまみれにしておくことで人が入れないようにもしているためそのセキュリティに気がつくこともない、という寸法だ。

 まあサメ機巧天使シャークマシンエンジェルは蹂躙したが。


 エレベーターを破壊して潜り込んだサメ機巧天使シャークマシンエンジェルが見つけたのは、捕獲したモンスターを改造してキメラにしている研究施設と、巨大な魔法陣。

 空間的に歪んでおり、ねじれた空間はどこかに繋がっているようである。


 こんなわかりやすい仕掛け、兄が試さないわけがない。

 当然のようにサメ機巧天使シャークマシンエンジェルと突入させた。


 そして突入させたサメ機巧天使シャークマシンエンジェルが出てきたのはガチャレクシアの、あの化け物が出てきた倉庫があった場所だった。

 同様にダンジョンと他の倉庫を繋ぐ魔法陣も存在していた。


 つまり奴らはこのテレポート魔法陣で出入りをしていた、と。

 巨大な穴だ。

 あんな怪しい商品を抱えて検問を素通りするわけである。


 ダンジョン荒らしに兄が夢中になっているうちに、ガチャを回してしまうことにする。


 R・ゲーミング魔法陣


 魔法陣。

 私の目の前に、虹色に光り輝く魔法陣が出現した。

 訂正、1677万色に光り輝く魔法陣が出現した。

 だって名前にゲーミングって付いてるんだもん!


 いやゲーミング魔法陣ってなんだよ。

 百歩譲って魔法陣は良いだろう。

 非実体っぽくて、線だけが地面スレスレに浮かんでいるのも、光っているのもまあ分かる。

 魔法陣だしな。


 でもゲーミングってなんだよ!

 この気が狂ったかのように色が変わり続ける虹色を見せられるこっちの身にもなってくれ!

 それにこのタイプのゲーミングな代物何個目だよ!


 ……はあ。

 まあいい。

 で、この魔法陣は、魔法陣だからなにかの魔法の力を秘めているはず。

 とりあえず魔力を注いでみるか?


 そう思って、私はシャドーボールを練るイメージで体から力を押し出す。

 うちにある水を血管に通して、それを指先から放出するような感覚。

 便宜上魔力と呼んでいるそれを、魔法陣にへと流す。


 するとそのエネルギーを、魔法陣が吸っていく。

 そして……。

 魔法陣はより力強く光り始めた。

 もはや見ていては目がおかしくなってしまうほどの明滅を繰り返す。

 その色はのたうちまわるかのように変化を繰り返し、吐き気をもよおすほどだ。


 そこまでの過剰演出の果てに……、光が弱まった。

 そして、魔法陣の中央には、なにもなかった。


 ……。

 お前光るだけかよ!













 後日。兄はこの目に喧しい魔法陣を踏むと、体力を急速に奪われることを発見した。

 というか、兄が勢い余って踏んづけただけなのだが。

 みるみるうちに元気を失っていく兄。

 兄が言うには急に空腹感に襲われるようだ、とのこと。


 そしてその吸った体力を使って光り輝く魔法陣。

 その光はまるで煽っているようで。


 うわあ……すげえムカつく……。

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