第103話 戦況確認と反撃狼煙
僕はいつまでも悲しんでいる場合ではない事を再認識すると。
一度次元の狭間に全員で戻る。
即座に敵兵が次から次へと撤退していく映像が見れた。
やはりナーポレノン国王の敗走は大きな事で。
部下の兵士達も国王が自国に逃げるので思わず撤退してしまったのだろう。
僕はほっと一息を突くと、仲間達を見ていた。
そこには先程誘拐されかけたネンネがいた。
後父親である狼介もいた。
後は黄色のローブを着用しておりアメリカ人のフォスフォーカス、浴衣のお相撲さんであるデンリュウ、メイド服の日本人で九条、カウボーイ帽子を着用しているロシア人のイヴジンとピエロ娘のマリーことマリアルドがいた。
盾剣組織のメンバーであるこの5人は僕達のDNAが入っている特殊な薬によってこの世界にやってくる事を可能にした。
後は一度裏切ったが【空気】部隊が彼の家族を救出したおかげで、再び僕の従者となってくれたテクスチャ・デボルドさんは腕組みをしている。
この場にいるほとんどのメンバーが頷いているのだ。
後父親が弟のリンスケの死体をこの空間に持ってきている。
この次元の狭間の操作方法はよく分かっていない。
リンスケが手足のように使っていたのだが。
「この空間は元々は初代勇者の物であったのをわしが引き継いだのじゃ」
そこにいたのは狼介であった。
死んだと思っていた父親が生きている。
まぁうすうすと生きているだろうと思い始めていたのが事実だが。
「代々勇者と魔王の血筋としてわしらはこの次元の狭間を守ってきた。ある時リンスケに渡したのがきっかけじゃ、あいつはこの世界で活躍するより現実の世界で活躍したほうが向いていたらしい。君達5人の仲間達を見れば一目瞭然だよ」
フォスフォーカスは親指の腹で鼻を擦って見せる。
デンリュウは大きな筋肉質の腹をぽんぽんと叩き。
九条はメイド服の皺を直すようにしている。
イヴジンはカウボーイの帽子の鍔を掴みにやりとほくそ笑む。さらに葉巻を吸い始める。
マリアルドはピエロの仮面をつけながら、照れ臭そうに体がくねくねと動いている。
一番年下のマリアルドは感情を上手く表現できない少女のようだ。
「恐らくじゃが、ナーポレノンはトロールの地へ向かう準備を始めるであろう。この次元の狭間はこの惑星の外側にあると思ってくれ。ようはわしたちの世界でいう衛星みたいなものなのじゃ」
「つまりその衛星から見える所には瞬間移動のように飛ぶ事が出来るという事ですね」
「それはリンスケから説明があったかもしれないが、再び説明しよう、この衛星は魔法で作られておりその見える範囲に瞬間移動が出来る。ただしこの衛星のマスターはゲームマスターになる必要がある。血の契約じゃ、それをすると随時世界と繋がっている感覚になる。リンスケはそれに耐えられないと言う事もあり元の世界に戻っていた。という事じゃ」
僕は考えていた。
世界と繋がる感覚がどれほどつらいものなのか?
今の僕には到底信じられない世界なのだろうけど。
なんとなく繋がっていた方がいいと思っている。
見えない所で仲間が誘拐されたり、殺されたり、奴隷にされたりするくらいなら、僕の神経をすり減らした方がまだマシなのだから。
僕ことヒロスケは新しい力を手に入れる為、次元の狭間と契約を交わした。
その瞬間頭の中にこの魔法の衛星から見える全ての景色が入って来る。
拡大したい所をイメージすると、即座にそこを拡大して見る事が出来る。
どこか問題が起こると!マークが出現する。
そこを拡大すると、ひったくりがあったり、殺人事件があったり、強盗があったり、色々な情報が頭に入って来る。
その膨大な量の情報に酔いながら。
僕はふらふらになっていた。
それを父親であるロウスケが受け止めてくれた。
彼は笑って。
「どうやらヒロスケには適正があるようだ」
「それがあるのとないのとでは違うのですか?」
「リンスケには適正がなかった。だからこの次元の狭間を使うのは苦痛だった。だけどヒロスケは違うだろう?」
「そうだね、なんだろうふわふわとしていて気持ちがいい。思うようにイメージが湧くんだ」
「それが適正有という奴さ、さてわしは次なる戦争の為の準備をする。お主達はお主達で出来る事をせよ、それが遥かな昔から勇者と魔王の血筋を守ってきた一族の長が言える事じゃ」
「ま、まって」
僕は必至で父親を止めた。
せっかく死んだと思っていた父親と再会する事が出来たのだ。
しかし父親はその場から消滅した。
まるで土煙のようになくなってしまった父親のロウスケの残像を見ていた気がする。
「大丈夫? ロウスケさんはきっとヒロスケに色々な物を託したのね」
「そうだと思うよ、ではみんなに作戦を伝える」
ネンネが少し励ましてくれる。
その言葉に仲間達は反応した。
もちろんここにいない仲間達には後で説明するとして。
「フォスフォーカスとデンリュウさんは現実の世界に戻って盾剣組織の創立者の1人が死亡したと伝えてくれ、その代替わりとして【黄昏の商人】が付くと言ってくれ、今まで リンスケは自分の事をなんと言っていたのだ?」
フォスフォーカスさんはこくりと頷き。
「リンスケ殿はレッドサムライと名乗っていました」
「よろしい、では僕の事はこれからは黄昏の商人で頼む」
「御意」
「問題は他のリーダー達だ。盾剣組織は沢山のリーダ格でなりたっている。トップリーダーは3人いるとされその一人がリンスケ殿であった。ヒロスケ殿が3人のうちの1人になるなら、他の2人のトップリーダーと会合しないといけない、時間が空いたら現実にきてくだされ、そなたのリサイクルショップの倉庫にいる。ミカンという中学生の女の子がいたぞ。その子に連絡がいけばこちらに伝わるようにしておく」
「それはそれで助かる。あちらに戻った時ミカンからフォスフォーカスさんに連絡がいくようにするよ」
「そうしてくれると助かるよ」
するとフォスフォーカスさんが戻ってきた。
「リンスケ殿の遺体がなくなっているのじゃが」
「あ、本当だ。そういえば親父が運ぶと言っていた。すっかり忘れていたよ」
「ではわしとデンリュウ殿は一度現実に戻りまする」
「それがいいと思うんだなぁ、あっちは色々と建設が進んでるからなぁ」
「あなた達はリサイクルショップの後ろにある倉庫に何をしようとしているのですか?」
「それはリンスケ殿の願いで、今改造中じゃ、お主が戻って来る頃には完成しておるじゃろう」
「ミカンちゃんに無理はさせないでくださいよ」
「ミカン殿はリサイクル品を集めてもらっている。それ相応な護衛をつけてね」
「はは、きっとミカンは文句をぶーたら言っているだろうね」
「よくわかったのう」
フォスフォーカスさんはかっかっかと笑いながら。
「さてデンリュウよ行くとするか」
「はい爺」
「お主のわしの呟き方がなっとらんのう、わしの事を呼ぶ時はご老体または爺さんだ。爺はダメじゃぞデブ」
「ご老体もおいらのことをデブと言った」
「それはすまない事をしたな、かっかっか」
2人をあちらの世界に行く事が出来る所まで次元の狭間の力で飛ばした。
リンスケは言っていた。次元とは生き物だと、沢山の次元は生きているのだと。
最初それがよく分からなかった。
しかし全ての空間を見せられて。次元その物が鼓動している事を感じ取る事が出来る。
そして僕は次元に心を開いていた。
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