87

「ワシがそんな話に乗ると思うかい?」

「ほう、従わぬなら、ここで死んでもらうぞ。我を神と同じと思うな!」

「お生憎様。ワシもそんな簡単には死にませんからね!」


 おばあさんが誘いを断った事で、一瞬の内に険悪な雰囲気が玉座の間を満たします。魔王は早速自慢の極大魔法をおばあさんに打ち込みました。質量を持った闇がおばあさんを襲います。


「この程度かい。魔王も大した事ないねぇ」


 その闇をおばさんはチェーンソーで軽々と切り裂きました。この展開を予想していなかった魔王は、分かりやすく動揺します。


「ば、馬鹿な……」

「それじゃ、今度はこっちから行くよっ!」

「ヒィィィッ!」


 魔王は変身を3つ残していましたが、それらを披露する前にチェーンソーによって一瞬でバラバラにされてしまいます。本気を出し切る前に、魔王はおばあさんによって呆気なく倒されたのでした。


「魔王と言ってもこの程度かい。大した事ないねぇ」

「おお、お見事お見事。流石だねぇ」

「悪魔さん?」

「そんなばあさんにいい話がある。乗らないか?」


 魔王との戦いが終わった後、いきなり悪魔は現れました。自分の主君を倒されたと言うのに、悪魔はそれを当然のように受け入れています。おばさんはそれが不思議でなりませんでした。


「お前さん、ワシはお前さんの主君を倒したんじゃが……」

「ああ、いいっていいって。魔族は強いものが正義。俺はばあさんに従うぜ」

「そんなものなのかのう」

「で、この城で最強になったばあさんに話があるんだ……」


 悪魔の話によると、この魔界はいくつかの国があって、それぞれがいがみ合いをしているせいで争いが絶えず、国民の多くはとても貧しくて大変住みにくいのだとか。


「ばあさんの力なら魔界を統一出来ると思うんだ。どうだろう?」

「仕方ないねぇ。ここまで来たらやってやるよ」


 話を聞いたおばあさんは哀れに思い、魔界統一に乗り出します。最初はうまくいきませんでしたが、小さな戦いに勝利するようになって仲間も増え、いつの間にやら連戦連勝。気がつけば魔界はおばさんによって見事に統一。

 こうして、魔界はその名に反してとても平和な世界になったのでした。


 魔界を統一したおばあさんはそのまま初代魔界皇帝となり、伝説はいつまでも語り継がれましたとさ。


(おしまい)


 魔界統一エンド ED25


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894419987

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る