第140話 歓迎する

とりあえず見てみるかと、アーネスト女王とバーグナー王が立ち上がる。


王達が行くならばと、王太子達も続いた。


クロウが誰よりも先にとさり気なく気を利かせて近付き、門の向こう側を確認する。


「これが転移門ですか……本当に違う景色……部屋? ですか?」


繋げたのは、ヒストリアの居る洞窟というか、祠の前にリンディエールが建てた家の中だ。


「せや。ケフェラルと接しとる『暗闇の森』の中にあるうちの別荘や」

「……今、暗闇の森と言わなかったか?」

「……私もそう聞こえました……」


バーグナーが王太子に確認する。


「あの森に別荘? 結構な強さの魔獣が居るあの森に? 即効壊されるだろっ」


魔獣が普通に闊歩している森の中に、家など建てられるわけがない。それ以前に建てようなんて思わないのが普通だ。


「ここ、真ん中辺なんやけど、魔獣も避けよるのよ。まあ、結界も張っとるけどなっ」


リンディエールだけでなく、兄や友人達も遊びに来るようになったため、改めてこの辺り一帯に結界を張ったのだ。


「ヒーちゃんの気配で、元々、魔獣はまず近寄らんねやけど」

「「「「「……」」」」」


ヒストリアを知らない面々は、目配せ合い、何者なのかという不安を募らせていく。


「そう警戒せんでもええやんっ。うちの友達やさかい。信用してえな」

「まあ、そうだな……」

「嬢ちゃんの友達なら、まあ……悪い奴じゃねえだろうしな」


アーネスト女王とバーグナー王がそう言って頷く。これにリンディエールは笑顔で答えた。


「あっ、そこは信用してくれるんやねっ。あんがとっ」


この場の誰もが、リンディエールの友人ならばと納得したようだ。


「そんなら、行くで。門はこのまま繋げとくでな。何かあれば連絡頼むわ」

「「はい」」


振り返って指示を出す。この屋敷の管理をしているモルトバーンとユラナーラ老夫妻も、これには慣れたもので、問題ないと了承した。この後、この部屋に護衛騎士だけは配置してくれるだろう。


これもいつも通りなので、この国の護衛騎士は驚かないはずだ。最近は『はいっ。門番やらせてもらいます!』と言って、門番という普段は出来ない役目を楽しんでいるらしい。


最初の頃は、自分も行くと渋々だった近衛騎士長も『お帰りをお待ちしています!』と護衛対象を放置気味だ。


それだけ慣れたということであり、リンディエールの強さを認めた証拠でもあった。


「さあ、入った入ったっ」

「ご案内します」


クイントが先に立った。ブラムレース王もそれに続きながら説明する。


「騎士も連れて行きませんが、危険はないので。何かあっても、この……リンの侍従と侍女がどうにかする」

「ほお……侍女もか……うむ。では行こう」


シーシェの女王アーネストが、王太子アリスレア、それとクロウと共にクイントとブラムレース王に続いて門を潜った。


それにプリエラが続き、次にバーグナーと王太子のログナーが歩き出す。


「おお……本当に別の部屋だな……凄いものだ」

「この先が、暗闇の森だとすると、かなりの距離を短縮できることになりますね……便利です」


そう話しながら、二人は門を潜って行った。


「なら、いつも通りよろしゅう。夕飯終わったら帰るよって。変更あれば、また連絡するわ」

「「承知しました」」


改めて老夫婦にそう伝えると、リンディエールはグランギリアと共に門を潜った。


そして、クイントとブラムレース王に案内され、その家を出ると、初見の五人は目を丸くして立ち止まる。


《よく来られた。お客人。歓迎する。私はヒストリア。竜人族だ》

「「「「「っ……」」」」」

「まあ、最初はそうなるわな」


これは仕方ないとリンディエールは腰に手を当てて笑った。









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