キングロードクエスト3

「ういーっ、よし、戦闘だな」

美子が肩を回しながら言った。

「そんな身構える必要ないでしょうよ。どうせ攻撃コマンドゴリ押しなんだから」

江奈が言った。

「冷めてんなぁ、もっとノリノリで行こうぜ!」

「分かった分かった……えー……」

「ん?」

「テーテテー! 戦闘開始!」

「……大丈夫か?」

「……ごめん、大丈夫じゃない」

「おう……まあ、やろうぜ」

「……どうど」

「まあ、やることは攻撃コマンドゴリ押しなんだけどな」

「うぉい! それさっき私が言ったやつ!」

「す、ステイステイ……お?」

「何よ?」

「魔法を一個使えるぞ」

「うっそ、こんな序盤で? 名前は?」

「えー……スピーディー? だって」

「何か速そう。すばやさを上げる魔法かしら」

「使ってみるか」

「……わざわざこんな雑魚相手に使う必要ないと思うけど。まあ、いいんじゃない」

「よし! 魔法入りまーす!」


『勇者の逃げ足が速くなった』


「……」

「……」

「……このゲーム大丈夫か?」

「さあ? まあ、時代が時代だし、ちょっとした遊び心ってやつよ。多分」

「んーそうかぁ? あっ、1ターン無駄にしちゃったな」

「別に平気でしょ。相手はゴブリンよ」

「……お前の中のゴブリンの評価低すぎだろ」


『ゴブリンの攻撃』


「いって! ほら、怒られたぁ」

「何、大したこと……え!?」

江奈は驚愕した。なんと、今の攻撃で勇者の体力は風前の灯になったからである。

「いやいや、おかしいおかしい!」

「おいおい、まずいぞ。次の攻撃でしとめないとゲームオーバーだ」

「いや無理でしょそんなの。えーどうしよう……」

「初戦闘でこれは……中々ハードよのう」

「感心してる場合か! えっーと……あっ、そうだ! コントローラ貸して」

「何だ?」

江奈は美子からコントローラを受け取ると、あるコマンドを選んだ。


『逃げる』


「……」

「……」


『勇者は逃げ出した』


「……」

「……」

「……流石、策士」

「ま、こんなもんよ」

二人は勇者の逃走成功を祝してハイタッチを交わした。


「……で、生き恥さらしてのこのこと町に戻って来た訳だが」

操作する勇者を町に戻した美子が言った。

「言い方、言い方」

江奈が苦い顔をして言った。

「おっと失礼。でも、どうするよ。このまままたフィールドに出ても同じ轍を踏むだけだぜ」

「フィールドが危険地帯である以上、レベル上げは無理ね。と、なると」

「お?」

「ズバリ、装備を強くするしかないわね」

「なるほど」

「早速、武器屋に向かいましょう」

勇者ミコは武器屋に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る