第3話

俺は思わず後ずさりをした。


が、坂下は死体をじっと見つめていたのだが、「中を見てみよう」と近くの入口を開けて中に入ってしまった。


この男、行動力と好奇心が人並みはずれてあるのだ。


俺はもうクルーザーに戻りたかったが、仕方なく坂下のあとを追った。


中は廊下で、左右にいくつかの小部屋があった。


坂下はその部屋を一つ一つ覗き込んでいたが、ある部屋の前で動きを止めたかと思うと、扉を開けた。


「見てみろ」


見ればそこには甲板にあったのと同じような死体があった。


口から血を流し、お腹が不自然なほどにへこんでいる死体が。


「もう帰ろうぜ」


「なに言ってる。どんな状況が確認しないといけないだろう」


何故俺たちがこの船の状況を確認しないといけないのかはさっぱりわからなかったが、わかっていることが一つある。


坂下は一度言い出したら、俺の言うことなどまるで聞かないということだ。


いまその状況にあることを、坂下の口調が物語っている。


坂下は扉を閉め、奥に進んだ。


そこに階段があった。


階段を降りると、その先にまた死体が転がっていた。


まえの二人と同じ状態の死体が。


もう怖いなんてものじゃない。


聞かないだろうと思いつつも、戻ることを提案しようと考えた俺だが、そのときあるものが目に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る