第42話
その後、オリヴィア、イザベラ、ルネの話し合いは続き――。
「大丈夫だってルネ。ようはアタシらしっかりしていればいいんだろ?」
――イザベラ。
「イザベラの言う通りだ。私たちさえ国を守るという意識さえ忘れなければ、アンヌ姫の私兵になることはない」
――オリヴィア。
「ふぅむ……。まあ、そういうことにしておきますか。ワタシも銃士隊の復活は嬉しいですし」
――ルネ。
結果としては、もし噂通り銃士隊が再結成されたときは、再び三銃士として参加するということで話がまとまった。
それを聞いていたシャルルは大喜び。
家の中で腰に下げた剣を抜き、それを掲げながら振り回し始めていた。
「よし! よしよし! これでみんなの意思が一つになったね!」
そんなシャルルを見たイザベラが怪訝な顔をしている横で、オリヴィアは頭を抱えている。
まだ銃士隊が再結成したわけでもないのに喜んでいるシャルルを見て、正直呆れているのだ。
ルネは二人とは違い、クスクスと笑っていたが、やはり心の中では同じようなことを思っていた。
だが、そんなところがシャルルらしい――。
そう思った三人は互いに顔を合わせると、つい大笑いしてしまっていた。
「こんなのがご主人でお前も大変だな」
イザベラがロシナンテを優しく撫でながら、そう声をかけた。
撫でられたロシナンテは「そうなんだよ」と言っていそうな、弱々しい鳴き声を返す。
「だけど、彼女のことが好きなんですよね、ロシナンテは」
ルネが穏やかな表情で見つめると、ロシナンテは少し照れているようだった。
「ボクはロシナンテのご主人様じゃないぞ! ロシナンテとボクの関係は家族だ!」
イザベラの言い方が気に入らなかったシャルルは怒気の含んだ声で叫んだ。
怒鳴られたイザベラは、はいはいと適当に頷きながらも謝罪した。
そして、シャルルにとってロシナンテがただの愛馬ではないことを理解したと言葉を返す。
「わかればよろしい」
両腕を組んで言うシャルル。
そんなシャルルの態度にイザベラは、ずいぶんと偉そうだなと思っていた。
だか、ロシナンテをただの馬扱いしたことはこちらが悪いと、考え直しただ頭を下げるのであった。
「よし。今夜は少しだけ贅沢をするか」
「あらめずらしい。いつも無駄遣いすると怒るオリヴィアがそんなこと言うなんて」
「こりゃ明日はロビン·フッドの奴が自首でもしてきそうだな」
シャルルは何も言わずにいたが、ルネとイザベラが言っていることを、その通りだと思っていた。
二人がからかうように言われたオリヴィアは、ブスッとして冷たく言葉を返す。
「そうか……ならやめだ。贅沢は中止する」
「冗談だよぉぉぉ! ちょっとからかっただけじゃん! アタシらが贅沢したってロビン·フッドは自首なんてしないよっ!」
「ごめんなさいっ! お願いだからたまにはいいワインを飲ませてくださいっ!」
オリヴィアの中止という言葉を聞いたイザベラとルネは間髪いれずに叫んだ。
そして、オリヴィアに泣き崩れ、すがるようにその体を引っ張り始めていた。
シャルルは剣を鞘へと戻し、そんな三人を見て呆れている。
「やっぱりこっちがホントの三銃士なのかなぁ? ねえどう思う? ロシナンテ?」
訊ねられロシナンテは、ただ首を左右に振るだけだった。
「シャルル、何をボサッとしている? 早く買い物へ行くぞ」
「えっ!? ちょっと待ってよみんな!?」
一方、シャルルたちがこれから夕食の買い出しに出ようしていたとき――。
宮殿では、ルイ女王とアンヌ姫の前にリシュリューが呼び出されていた。
「お呼びでしょうか。ルイ女王」
リシュリューはまずは拝謁。
丁寧に頭を下げたが、そう訊ねていながらも呼び出された理由はわかっていた。
そう――。
最近街で盛り上がっている銃士隊再結成の噂話のことだ。
「忙しいところすまぬな。リシュリュー。実はこのところよく聞く街での噂話のことなのだが」
ルイの邪気のない声そう言う横には、扇で口を隠しながら頬笑むアンヌ姫の姿があった。
リシュリューは早速来たなと思いながら、下げていた顔を歪めるのだった。
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