君と千の鳥
耀
1-1
年が明けて少し経つと、日の出ている時間が長くなっていることに気が付く。
わずか20日ほど前までは、街灯の明かりや家から漏れる光程度しか、暗闇の中を埋めるものがなく、点々とした明るさだけがあったが、今では空全体がほのかに明るい。
そして日が長くなっていく速度に追いつこうと季節も春に向かっていく。
空気が暖まるのには時間がかかるそうなので、日が長くなったからと言ってすぐにそれに比例しては暖かくならず少しのラグはあるが、それでも確実に日の光が力強さを取り戻しているように感じる。
現に、颯の住むこの地域ではこの1、2カ月が毎日のようにニュースで今期最低の気温だと言われるくらいには寒いが、建物の日の当たる場所に行き、椅子にしばらく座っていると暖かさを感じるのである。
今はそのような条件がそろわないと暖かさを感じることができないが、やがて、季節が進むと外にいても寒さの中に暖かさを感じる日が出てきて、それも少し経つと暖かさの中に寒さがある日に変わっていく。そして冬が終わり春になる。
この地域ではそれは3月の本当に終わりころの話ではあるが、多分あっという間に過ぎていくのだろう。
年明けの少し明るくなった夕方の時間帯に近所の公園に行き、一周900メートほどだという池を、公園と池を分ける階段のようなところに座り颯はそんなことを考えていた。公園にはこの寒さだというのに人が全くいないというわけではなく近所の小学生などがサッカーなどをして遊んでいた。だが、夜が近づいてきているのでもうすぐ帰り始めるだろう。
颯は朝は学校があるので通り道ぐらいにしかこの公園を利用しないのであるが、夕方は散歩がてら家から近いここを目的にして来ることが多かった。
そして今のように、階段のところに座りながら、ボーっと他愛もないことを考えたりするのである。
それなりには着込んでいるし池の周りを一周歩いてからだったのでもう少しはこの熱がもつかと思ったが、リミストシアの北に位置するこの地域は山の方から冷たい空気が吹きおろしてくるのでそれが顔に当たり痛いし、衣服の隙間から冷気が流れ込んでくるので、あまり熱はもちそうにはなかった。
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