手編みのマフラーの使い道

澤田慎梧

手編みのマフラーの使い道

 えっちゃんは編み物が得意な女子高生。いつも彼氏のゆーくんに、手編みのマフラーや手袋を編んではプレゼントしていました。

 けれども――。


「ごめん、えっちゃん! またマフラー無くしちまったよ……」

「え~? また~? ゆーくんこれで何度目~?」


 ゆーくんは物をよく無くす男の子でした。

 なので、せっかくえっちゃんから手編みのプレゼントをもらっても、いつの間にか無くしてしまうことがよくあったのです。


「もう~。せっかく編んであげたのに、ひど~い!」

「だからごめんって! 帰りに何かおごるからさ。機嫌なおしてくれよ~」

「ゆーくん、今月お小遣いが厳しいんじゃなかったっけ?」

「それがさ、臨時収入が入ったんだよ! タピオカミルクティーでもチーズケーキでもなんでもおごるからさ」


 頬を膨らますえっちゃんに、ゆーくんは一生懸命に謝ります。

 その姿を見て、えっちゃんもついつい許す気になってしまいました。


「ん、じゃあ甘いものはいいから……帰りに手芸屋いこ?」

「手芸屋?」

「うん、新しい毛糸買うから……また何か編んであげる!」

「マジ!? やっっっったぁー!!」


 ゆーくんのあまりの喜びように、えっちゃんは思わず頬を緩ませます。

 えっちゃんが手編みの物をプレゼントすると、ゆーくんはいつも大げさなくらいに喜んでくれました。だから何度無くされても、えっちゃんはめげずに手編みを続けられたのです。


 二人はその日の帰り、仲良く手芸屋に行きました。




 ――でも数か月後、えっちゃんは自分で編んだマフラーで首を絞めて、ゆーくんを殺してしまいました。

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