第27話 金属のドラゴン
「固定ダメージ」を付与した式神がちゃんとメタルな敵に効くことを確認した俺は、換金所に折り紙を売りに行ったのだが……換金所に行くと「そういう話になってくるとここで売るよりJMEO本部に相談した方がいいかもしれない」と言われたので、俺はその足でJMEO本部へと向かった。
そしてJMEO本部に持っていくと、JMEO本部職員による査定が行われたのち、「JMEOの管轄で一括販売、一般に流通させ、純利益の9割を俺に配分する」ということで、話がまとまった。
JMEOの受付の人からは、「これは相当売れるはずだから、これからも大量に生産して欲しい」などと言われたのだった。
その時は、そんなに売れるのかと思ったものだが……JMEOから初回納品分の売り切れが通知されたのは、なんと3日後のことだった。
本当に飛ぶように売れるんだなと思った俺は、平日の夜は形代作り、休日はモンスター狩りをするルーティーンで日々を過ごすようになった。
そうして、約1か月が経過した。
◇
日曜日の朝。
朝食を食べながら、スマホを眺めていると……久しぶりに、JMEOのアプリから討伐要請の通知が来た。
早速通知をタップし、詳細を確認する。
すると……「竜型のモンスター、日本アルプスより東京に向かって移動中」という見出しと共に、一枚の航空写真が表示された。
航空写真に写っていたのは、おそらくメタルな敵と思われる、全身に金属光沢のあるドラゴンだった。
今ドラゴンがいる位置は、飛騨山脈の南端付近で……そこから、真東に向かって飛んでいる感じだな。
JMEO職員から聞いた話によると、「メタル定義変換」の普及率はあまり芳しくないみたいだし……今日は、これでも倒しに行くか。
何だかんだで俺、今までコツコツ集めてきた甲斐あって、「メタル定義変換」は併用上限の3つまで装備してるからな。
朝食を食べ終わると俺は「力源の衣」を着て、「極・低燃費高速飛行」「透明化」「実態消去」の3つを併用しての移動を開始した。
ドラゴンの移動速度から逆算して、鉢合わせするであろう地点を予測しつつその方向に飛んでいると……しばらくして、「第6のイーグルアイ」に、そのドラゴンの反応が映った。
脅威度は……モスプルヘイムと似たようなものって感じだな。
俺のレベルがモスプルヘイム戦当時の倍近くになっていることを考えると、実際のドラゴンの強さはモスプルヘイムより上ってとこか。
それを踏まえつつ……今回は、俺はディスラプター作戦は使わず正面から戦うことにした。
モスプルヘイム戦と今回の戦いでは、決定的に違うことが1点ある。
それは、俺が身代わりの式神である人形を大量に装着していることだ。
こんなこともあろうかと、俺は毎日コツコツ自分用に人形を折ってきていて……今ではその数なんと400枚以上になっている。
そしてそれら全てを、俺はポッケというポッケに突っ込みまくって全部携帯しているのだ。
俺の現在の最大HPは9450だが、身代わりが肩代わりしてくれるダメージの合計は100000。
実に、最大HPの10倍以上だ。
もしあのドラゴンが、即死の10倍以上の威力の攻撃手段を持ってたとしたら、これでも危ないのだが……だとしたら、「第6のイーグルアイ」による脅威度判定は「中くらい」なんかになるはずがない。
最悪、無傷で宣戦離脱するていどの余裕はあるはずなのだ。
だから、わざわざ相手を弱らせてからブチのめす必要はない。
俺はそう判断したというわけだ。
更にドラゴンに近づくと……俺はその姿を、肉眼で見れるようになった。
せっかくなので、鑑定してみる。
すると、あのドラゴンはやはり、「エンペラーメタルドラゴン」というメタルな敵だった。
さて、どうやって倒すか。
とりあえず、まずは「アークストライク」で様子見といくか。
「アークストライク」
MP10000を消費するつもりで、そう唱える。
すると、雷撃はドラゴンに直撃したのだが……その瞬間、ドラゴンからはバリアのようなエフェクトが発せられた。
あれは……確か、メタルな敵がダメージを抑え込んでることを示すエフェクトだったな。
「メタル定義変換」によって1発あたりメタルな敵に与えられるダメージが拡張しているとはいえ、どうやら今のはその上限よりも過剰なダメージを与えるものだったようだ。
つまり、MPを無駄遣いしたということになる。
あのドラゴンは、これでもまだピンピンしているし……おそらく今のダメージは、最大HPからすると微々たるものだったのだろう。
それを踏まえると……このドラゴン、攻撃回数を多くしない限りいつまで経っても倒せないということになるな。
そんな結論に達した俺は、アプローチを変えてみることにした。
攻撃の手数で勝負するといったら、あれしかない。
「化身の一撃——ヘカトンケイル召喚」
俺はこのメタルなドラゴンのHPを、ヘカトンケイルの連続打撃で削っていくことにした。
「化身の一撃——ヘカトンケイル召喚」
「化身の一撃——ヘカトンケイル召喚」
「化身の一撃——ヘカトンケイル召喚」
・
・
・
試しに唱えてみると、ヘカトンケイルは複数体同時召喚することができた。
これは、時短になりそうだな。
などと考えているうちにも、ヘカトンケイルたちはありとあらゆる方向からドラゴンをタコ殴りにしていき……もはやそこで何が起きているのか目で見ても分からないほど、光景はカオスになっていった。
そして、呼び出した全てのヘカトンケイルが攻撃をやめ、姿を消すと。
流石にオーバーキルだったのか、ドラゴンはすでに消滅し、そこにはひらひらと舞うガチャチケットが一枚残るだけとなっていた。
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