Act.9-138 フルレイド『大穴の果てへの参道』終盤ゾーン 十五日目 scene.1

<一人称視点・リーリエ>


 正三角形デルタを描いた青い光に導かれ、突入したレイドゾーンの後半戦。


 レイド前半戦には死を呼ぶ汚泥オルクス・ジェリー魅惑の大魔布顛女王プリン・プリンセス滅鬼の牛頭大鬼ミノタウロス・ターミネーター積鬼の馬頭大鬼サジタリウス・マローダー脚根の妖毒華ルートヴェノム・ハイドランジア変異した迅猛竜ミュート・ヴェロキが出現したけど、この後半戦のレイドゾーンではレイドエネミーの顔ぶれが大幅に変化した。


 まず、死を呼ぶ汚泥オルクス・ジェリー変異した迅猛竜ミュート・ヴェロキが姿を見せなくなった。他のレイドエネミーは続投しているものの、レベル自体は三つの前半戦ゾーンに比べて上がっている。


 そして、後半戦ゾーンのみに登場するレイドエネミー達。

 まず、暴走の降霊師スピリット・マリオネッター。レイドエネミーの枠に収まらないレイドボス級の強さを持つレイドエネミーだ。

 ……本当に見た時、衝撃を覚えたよ。


 ゲーム時代はアイビート・ランチェイスタという名前のNPCで、高い降霊能力を有する降霊師の家系に生まれた人物だったけど、強大な力を持つ怨霊に逆に体を乗っ取られてしまう。暴走の降霊師スピリット・マリオネッターと化したアイビートは『フルレイド:暴走の降霊師』のレイドボスとなり、フルレイドの最後の壁として立ち塞がった。

 ステータス値も見た目も寸分違わずアイビート――それが一体ではなく、二体三体……と姿を見せている。つまり、通常敵ということで扱いで出現しているということだよねぇ。言いたいことは分かるよ? だけど、同じ顔、同じ姿の人間が無数にレイドエネミーとして登場するってちょっと信じられないよねぇ。


 次は初見のレイドエネミー。名前は付喪化した銅鏡鐸サイキック・ブロンゾングというらしい。

 付喪神と化した銅鐸型の魔物で同じく付喪神と化した銅鏡を三つ盾のように操って戦うらしい。超能力を攻撃に使用するみたいだねぇ。


 次も初見のレイドエネミー。名前は黄金の馬の黙示騎士イエローゴールドライダー

 この名前から想像できると思うけど、『オーバーハンドレッドレイド:天軍降臨』に登場する雑魚モンスター――白い馬の黙示騎士ホワイトライダー赤い馬の黙示騎士クリムゾンライダー黒い馬の黙示騎士ブラックライダー青い馬の黙示騎士ペイルライダーと同じ系統に属する魔物ということになるんだろうねぇ。


 『ヨハネの黙示録』には登場していないオリジナルの黙示騎士で黙示騎士を召喚する力を持つ。……その力で白い馬の黙示騎士ホワイトライダー赤い馬の黙示騎士クリムゾンライダー黒い馬の黙示騎士ブラックライダー青い馬の黙示騎士ペイルライダーが大量に召喚されている。……召喚された白い馬の黙示騎士ホワイトライダー赤い馬の黙示騎士クリムゾンライダー黒い馬の黙示騎士ブラックライダー青い馬の黙示騎士ペイルライダーも追加のレイドエネミーに含めるなら、追加のレイドエネミーはもっと増えるねぇ。


 続いて、呪われた戦乙女カースド・ヴァルキューレ。エヴァンジェリン・γ・ラビュリントを彷彿とさせる呪われた戦乙女……というか、かなり似ている。髪色とか瞳の色とか違う、ゲームでよくある色違いグラフィックモンスターみたいな扱いなのかな? 当然、レイドボスとレイドエネミーでは戦闘力に歴然の差があるので、エヴァンジェリンの斬撃で一撃で沈む。ちなみに、エヴァンジェリンと違って自我はない……まあ、自我が芽生えている魔物は珍しいんだけどさぁ。確定で自我持っているのってアルラウネ系統くらい?


 続いて聖刻魔槍術師ホーリー・ランスマンサー。リヒャルダ・δ・ラビュリントを彷彿とさせる純白の鎧を纏い、聖なる槍を持った女騎士。


 続いて。超塩基粘性体の女王アルカリティー・スライムクイーン。ドミティア・λ・ラビュリントを彷彿とさせる豪奢な銀髪の豊満な胸を持つドレス姿の女王のような容姿をした魔物でその名の通り水酸化ナトリウム水溶液も真っ青の強塩基製。


 ……この三体に関しては大きな違和感を感じている。似ている魔物がたまたまレイドエネミーとして出現した……と考えていいのか? もしかしたら、このレイドゾーンにはエヴァンジェリン達と繋がる大きな秘密が隠されているのかもしれないねぇ。


 そして、最後が大悪魔の召喚術師サモナー・デーモン

 召喚魔法を操る悪魔型の魔物で様々な攻撃魔法や漆黒の爪や三叉槍による物理攻撃も可能なんだけど、最も脅威的なのは召喚魔法。前半エリア、後半エリアを問わず出現するレイドエネミーを多数召喚し、戦力を強化してくる。後半追加組の中では比較的弱い部類に属するんだけど、こいつがいるから先程出没しなくなった死を呼ぶ汚泥オルクス・ジェリー変異した迅猛竜ミュート・ヴェロキも場合によっては召喚されることになる。


 つまり、事実上、このレイドゾーンの後半戦エリアはレイドゾーン前半部に後半部のレイドエネミーを加え、更に白い馬の黙示騎士ホワイトライダー赤い馬の黙示騎士クリムゾンライダー黒い馬の黙示騎士ブラックライダー青い馬の黙示騎士ペイルライダーが追加されるというレイドゾーン全体の集大成みたいなものになっている。しかも、レイドエネミーの数も前半部より多いから戦闘はより過酷に……まあ、レイド前半戦と変わらず特に苦戦はしないんだけどねぇ。


 召喚使いが多いのでレイドエネミーも無尽蔵に増えていく。一部はレイドゾーン外――ジャイアントホールに放流しているが、正直キリがない。二百パーセントの混雑率の満員電車の中を泳いでいるような感覚に陥る。

 まあ、逆にどこへ撃っても攻撃が命中するってことなんだけどねぇ。


 アクアとディランは武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣を構えて、それぞれの翼で高速飛行しながら次々とレイドエネミーを仕留めていく。二人が突撃する前に厄介な大悪魔の召喚術師サモナー・デーモン黄金の馬の黙示騎士イエローゴールドライダーを徹底的に潰すように伝えたので、その指示に従ってなるべくこの二体の討伐をメインに動いてくれているみたいだ。


終焉齎す断魔の紅炎劒プロミネンス・スパタ!!」


 ラインヴェルドは剣技メインだけど、攻撃範囲が広めな技を選んで使っている。超塩基粘性体の女王アルカリティー・スライムクイーン赤い馬の黙示騎士クリムゾンライダー呪われた戦乙女カースド・ヴァルキューレ大悪魔の召喚術師サモナー・デーモンを纏めて一斬で撃破してしまうのは流石という他にないねぇ。


結晶騎士軍クリスタル・クルセイダーズ


 一方のオルパタータダは魔法メインにシフト。量には量と言わんばかりに大量の結晶の騎士を創り上げ、武装闘気と覇王の霸気を纏わせて嗾ける。

 まあ、作り上げた後は武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣を構えてどの結晶の騎士よりも素早くレイドエネミーの群れに突撃していくんだけどねぇ。


「巽風八卦掌」


 ヴェルディエも遠距離攻撃が可能な「巽風八卦掌」をメインに戦っている。霸気製の黒い竜巻を連続で放ってレイドエネミーを討伐し、竜巻から生き残った運の良い個体は「震雷八卦掌」で撃破するという使い分けを行っているみたいだねぇ。


「朧黎黒流・疾風覇薙-飛爪-」


 ディグランは手や足を刃に見立て、超人的脚力や腕力で放つ飛ぶ斬撃を放つ八技の刃躰の技術を応用して「朧黎黒流・疾風覇薙」を飛ぶ斬撃に改造したみたいだねぇ。こちらも遠距離攻撃が基本で一撃で複数体ずつ撃破している。

 横一列撃破だけに留まらず、レイドエネミーを貫通して後ろのレイドエネミーにも斬撃を刻んでいるみたいだから、一度に討伐できる個体数は結構多めみたいだねぇ。


 ちなみに、聖属性の魔力を纏わせて斬撃を放つと同時に解放すれば光の斬撃を飛ばすこともできる。ドリームチームトーナメントで使っていたのがこの方法だけど、使わないのは魔力節約のためかな? ……レイドエネミー、ゲンナリするほど多いからねぇ。


海王の三叉薙ポセイドン・ホリゾンタリー


 そんなディグランとは対照的に激流を纏った三叉槍で至近距離から薙ぎ払いを浴びせ、レイドエネミー達を撃破しているのはバダヴァロート。魂魄の霸気海皇を使えば「海王の三叉薙ポセイドン・ホリゾンタリー大波撃ハイパーウェイブ」で猛烈な波の斬撃を飛ばせるけど、「海王の三叉薙ポセイドン・ホリゾンタリー」では飛ぶ斬撃の技術を融合しなければ水の刃を飛ばせない。


 魂魄の霸気海皇には味方へのデメリットが大きいから味方が多いレイドでは迂闊に展開できないんだろうねぇ。

 飛ぶ斬撃と組み合わせないのは、恐らく直接薙ぎ払いを浴びせた方が威力が高いと判断したからじゃないかな? 三叉槍の重みを飛ぶ斬撃に乗せ切るのは多分不可能だし。

 基本的に飛ぶ斬撃の威力は普通に斬撃を放つより落ちるからねぇ。


紫電迸る凍結世界フリーズ・ボルト・ワールドなのですよぉ〜!」


 エイミーンの魔力が迸り、極寒の冷気がレイドエネミーの群れを纏めて凍結させる。

 エイミーンのオリジナル氷属性、雷属性複合魔法「紫電迸る凍結世界フリーズ・ボルト・ワールド」の特徴は魔法に生じた氷の中に大量の電気が含まれていることだ。この電気が紫電と化して氷の中を駆け巡る。流石に一度の紫電でレイドエネミーの撃破には至らないが、幾度も分厚い氷の中を紫電が駆け巡ればレイドエネミーと雖もタダでは済まない。

 分厚い氷に閉ざされたレイドエネミー達は氷を破ることもできないまま一方的に蹂躙されて消滅。残った氷はエイミーンが蒸発魔法を発動して戦場から瞬時に消すため、レイドゾーンの場所塞ぎにはならない。


「『神殺しの焔レーヴァテイン断罪の焔剣ブレイズブレイド煉獄の裁断クリムゾン・ジャッジメント』」


 ミスルトウは 『神殺しの焔レーヴァテイン』を天を覆う巨大な円形に変形させて、そこから焔の剣を降らせてレイドエネミーを殲滅していく。大概は『神殺しの焔レーヴァテイン断罪の焔剣ブレイズブレイド煉獄の裁断クリムゾン・ジャッジメント』で殲滅できるんだけど運悪く近距離まで接近された場合は『神殺しの焔レーヴァテイン裁きの焔鞭フレイム・タン』と攻撃を使い分けているみたいだねぇ。


燦く星の流星群デウス・セーマ・ライトグランネメシス


 マグノーリエは後半戦のゾーンに突入してからアルベルトが完成させた「燦く星、宙より堕ちるデウス・セーマ・グランネメシス」と「穿光条の流星群ミーティア・ライトニング」を組み合わせた聖属性魔法を多用するようになった。

 臨時班候補達との模擬戦にゲストとして参加したプリムヴェールがマグノーリエに教えたんだろうねぇ。かなり有用な魔法だし、後でアルベルトに許可もらって魔法の術式を聖属性魔法の使い手全員に公開しよっかな?


 そのプリムヴェールは「ダークマター・ファブリケーション」などのダークマター系の魔法をメインに切り替えて戦っているみたいだねぇ。他のメンバーの魔法を阻害する「ロマンティシズム」は使用せず、広範囲攻撃が封じられている中でも効率良く大量のレイドエネミーを殲滅している。

 近距離まで迫ってきた敵は「ルナティック・キャリバー」で圧倒、流石はプリムヴェール――近距離遠距離共に隙が全くないねぇ。

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