百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-45 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.2 庚
Act.8-45 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.2 庚
<三人称全知視点>
琉璃は薄く張り巡らされた水の膜の中に侵入者が二人入り込んだのを確認し、静かに目を開けた。
とても人間では感知できないほど薄い膜で破ったとしても気づかなかいような代物だが、相手はどうやら琉璃が探知をしたことに気づいたらしい。
『……ラピスラズリ公爵』
琉璃は
HP:30,000,000
MP:50,000,000
STR:60,000,000
DEX:20,000,000
VIT:40,000,000
MND:30,000,000
INT:30,000,000
AGI:10,000,000
LUK:15,000,000
CRI:20,000,000
▼
琉璃の予想通り、カノープスとメネラオスだ。
敵のメンバーから推測し、これほど完璧に近い形で気配を消せるのは彼ら以外考えられないと考えた故の予想だったが、どうやら推測が外れることは無かったらしい。
「君も新たな力を手に入れていたとは思っていたが、人に姿を変える力を手に入れていたか。一筋縄ではいかないのだろうな?」
『僕も優勝……とまではいかないとしても爪痕は残したいからね。大人しく勝利を譲ってよ?』
「残念ながらそれは無理な相談だ」
『交渉決裂だね』
メンバーの関係上、「琉璃って男だと思っていたのに、実は僕っ娘だったの!?」といったツッコミはない。
当然決裂する交渉をし終えた琉璃とカノープス、メネラオスの二人はそれぞれ武器を構えた。
「暗黒魔法-
先に攻撃を仕掛けたのはメネラオスだった。いきなり魂魄の
琉璃は地面から無数の水柱を発生させて「虚無の怨霊」を防ぐと、そのまま地を蹴って加速し、メネラオスに肉薄する。
更に雷雲から雷霆をメネラオスに向けて落とした。
『――千羽鬼殺流・九星!』
「――ッ! なるほど、ローザから鬼斬の技を教えられたのか」
逆袈裟、左薙ぎ、左切り上げの三角、右切り上げ、右薙ぎ、袈裟切りの三角で六芒星を描き、唐竹、逆風、刺突を放つ宋の時代の道教の書『雲笈七籤』二十四巻「日月星辰部」の北斗七星と輔星、弼星と併せた北斗九星の名を冠する鬼斬の技をバッグステップで躱すと、追い縋る琉璃に「
『――渡辺流奥義・颶風鬼砕』
鋭い風の刃をイメージした霊力を武器に宿し、勢いよく抜刀して横薙ぎすると同時に爆発させて周囲全てを斬り捨てる鬼斬の技で「
カノープスは《姿眩瞬移》を発動して錐状の水撃を躱しつつ、そのまま琉璃に肉薄する……が。
ほぼ同時に雷雲から再び雷霆が落とされ、カノープスは一時撤退を余儀なくされた。
「《認識阻害》」
カノープスの姿が戦場から消える。一時的に周囲の人間の限定的な認識に干渉する魂魄の霸気――《認識阻害》によってカノープスの存在を認識できなくなった琉璃は戦場に残ったメネラオスに狙いを定めた。
「
メネラオスの右手の掌に展開された黒い魔法陣から漆黒の魔力の奔流が放たれる。
対する琉璃は水の精霊の力を使って「
メネラオスは素早く展開した裏武装闘気の盾を利用して一瞬の隙を作り出して猛烈な水の奔流から身を守ると、そのまま琉璃に向かって走る。黒い手袋を外し、異様に厚みのある黄色く鋭い爪を空気に晒すと右手全体に武装闘気を纏わせて硬化した。
『
技自体はミーヤのものと同じだが、『Eternal Fairytale On-line』時代から
ミーヤのものは、実は琉璃が取得した「
「暗黒魔法-
虎の子の「虚無の怨霊」を『黒刃天目刀-可変-』の剣先から解き放つが、「
『――ッ!? カノ……プス』
《認識阻害》が解かれ、カノープスの存在を思い出した琉璃は胸元から生えた手を忌々しそうに見つめながら呟いた。
武装闘気と覇王の覇気を纏った腕に貫かれた部分からは血こそ出ていないが、琉璃の身体を構成していた水が血液のようにボトボトと地面に垂れている。
その手から神光闘気が放たれ、琉璃の身体を駆け巡った。
何度も抵抗を試みた……が、神光闘気の痛みと熱から攻撃の狙いが定まらず、また定まっても威力が安定せず、カノープスを倒すには至らなかった。
そして、神光闘気を流し込まれてから約三十分、遂に琉璃は力付き、無数のポリゴンと化して消滅する。
大将の琉璃が倒されたことで琉璃のパーティは全滅し、この時点でエイミーンのパーティの勝利が決定した。
◆
『……負けてしまったな』
琉璃が敗北し、所属していたパーティの敗北が決定してから数分後、火の精霊王イフェスティオとレミュアの姿は大会会場の休憩室にあった。
ローザが【万物創造】によって作り出した自動販売機で清涼飲料をグッと飲み干す。
「今回は負けても仕方ない戦いだった思うわ。相手は優勝候補筆頭の各国首脳チームだった……難しい戦いになることは最初から分かっていたもの」
でも、やっぱり勝ちたかったわ。と心の中で続けるレミュア。
ローザに勝つことは難しいだろう。しかし、ディグラン相手ならばまだ勝ち目はあった。
もっと研鑽を積んでいれば、もっとイフェスティオの力を使いこなせるようになっていれば、レミュアにも勝利の可能性はあった筈だ。
『ところで、レミュア。興味深い話があったな。レミュア――お主は聖人になる気は無いのか?』
考えてもみなかった質問に、レミュアは固まる。
種族の限界を越えることで圧倒的寿命と身体能力、そして聖属性魔法適正を得ることができる聖人の領域――しかし、レミュアは一度もその領域に挑戦しようとは思わなかった。
「――なかなか面白い話をしているねぇ」
一部始終を見ていたかのようにタイミング良く休憩室に現れたのは薔薇を象徴するようなウェイブの掛かった赤い髪に青薔薇のコサージュの髪飾りをした、灰色の瞳の白雪のような白肌が美しい凛々しい美少女だ。
可愛らしいというより美しい系の美少女(本人曰くキツめの悪役顔)――ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルトはお手製のお菓子と紅茶を用意すると、二人と同じテーブルについた。
「丁度イフェスティオさんに聞きたいことがあって探していたんだけど、興味深い話を聞いたからねぇ。……しかし、レミュアさんが聖人か……意外だけどそれはそれでアリだとボクは思うけどな」
「その意外というのはどういう意味かしら?」
「ん? キャラ的な意味でだよ? まあ、気にしないでねぇ。……正直、レミュアさんなら問題なく聖人の領域に至れると思うし、仮に失敗してもサポートがあるから死ぬことはない。興味があるなら後でエヴァンジェリンさんにお願いしてみるといいよ」
『ところで、ローザ。私に用事があると言ったが、一体どのようなことだ?』
「聞きそびれていたことがあってねぇ。具体的にいうと、他の精霊王の居場所なんだけど」
『それは私にも分からん。
「それじゃあ、過去の居場所の情報を教えてもらってもいいかな?」
ローザはイフェスティオから過去の精霊王の情報を受け取ると、紅茶を飲み干してお菓子をほとんど手付かずのまま残していった。健闘した二人への細やかなプレゼントなのだろう。
「さて、私も頑張らないといけないな」
ローザにエヴァンジェリンへの取り次ぎを頼んだレミュアは新たな目標のためにまずは英気を養うことにした。
――そして、手始めにチョコレートのクッキーに手を伸ばす。
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