百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.6-17 対帝国前哨戦〜フォルトナ王国擾乱〜 謎解き 後篇 scene.1
Act.6-17 対帝国前哨戦〜フォルトナ王国擾乱〜 謎解き 後篇 scene.1
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
「グローシィ=ナイトメアブラック、帝国所属の暗殺者兼医療術師。普段は愛用している黒ロリィタのドレスを身に纏っているけど、状況に応じて衣装やメイクを変えており、変装術も心得ている。その八十歳とは思えない美貌は皇帝から下賜された帝器――細胞を自在に老化・若返らせることが可能な薬
「それを言うなら貴女も女ですわよ? いいえ、前世は男でしたわね? 男の娘とそちらの世界では言うのですか? とりあえず、紹介してくださったことは素直にお礼を言っておきますわ。手間が省けました。……しかし、本当に恐ろしいのはそこの側妃のような女ですわ。自分の都合の良いように子供を道具のように弄び、権力を手にするために夫すら手に掛けようとする。その権力への執着が国を破滅に追い込んでいく、本当に恐ろしいですわね」
「まあ、そのおかげで簡単に潜入できましたので感謝しかありませんが」と付け足し、【濡羽】グローシィは言葉を切った。
流石のシヘラザードとアルマンもまさかこのような状況になるとは予想もしていなかったようで、顔面蒼白……これを機に心を入れ替えてくれたらいいけどねぇ、いい薬になったと後々思い返して思えるくらいに。
「さて、ボクがこの国に来た目的を果たそうか? グローシィ、単刀直入に聞かせてもらう。ブライトネス王国の側妃メリエーナ様を殺したのは君か? まさか、そんな昔のことは忘れたなんて言わないよねぇ」
「心外ですわね、私を呆け老人なんかと一緒にしないでくださいまし!! そもそも、殺した相手の顔を忘れるようにするなんてそもそも暗殺者の性質としては最悪ですわ。いつ殺した相手の関係者の復讐されるかも分からないのですもの。メリエーナ……あれは、愚かな正妃シャルロッテが、誠の寵愛を注がれているメリエーナを恐れ、暗殺を望んだというものでしたわね。彼女が子を成し、その娘が成長してメリエーナ共々大きな力を握ることを恐れたシャルロッテは私にメリエーナ暗殺を依頼した。全く揃いも揃って愚かですわね。残念なことにその暗殺はブライトネス王国を大きく揺るがし、帝国の侵攻を許すほどの大きな効果はありませんでしたが、ブライトネス王国に傷を刻みつけることはできましたわ。そして、その傷口に今度は貴女が塩を塗りつけようとしている。探偵気取りの創造主様? 貴女は今更過去の事件を掘り出して何をしようとしているのかしら?」
「さあねぇ? ただ、真実を知るべきものがそれを知ることができないまま生きるというのはとても残酷なことだとボクは思っている。フォルトナ王国とブライトネス王国では結果が違う――フォルトナ王国は未然に防げた、けど、ブライトネス王国はそうじゃない。そこからどう判断するかはボクの感知するところじゃない。ただ、真実を詳らかにすると決めた以上、中途半端で終わらせるなんて責任逃れをするつもりはないよ」
「へぇ、随分と覚悟しているのね。この世界の人間との距離感を常に意識し、肩入れし過ぎず、しかし責任逃れはしない――それが創造主の立ち位置ということなのね。そのある種達観した視点は神のものに相違ないわ。神の慈悲によって守り、神の無慈悲によって悉くを破壊する」
「それこそ心外という奴だねぇ。ボクはただ
「やはり皇帝陛下の真名を知っていたのね。……皇帝陛下は裏切り者などではないわ! あの方は神!! この世界を統治・君臨すべき、三十の世界の頂点に立つべきお方だわ!! あの方への謁見が許されたその日、私はあの神々しいお姿と拝見し、荘厳な神のお声を拝聴し、そう悟ったわ。あの方こそが現人神。人でありながら神になったお方! その神の御意志とあらば、私のちっぽけな命など惜しくはないわ!!」
グローシィは恍惚に謳い終えると、辺りを見渡した。
「百合薗圓、貴女は私を捕らえ、その罪を白状させることによって帝国と敵対するための大義名分を得た、そう考えているのでしょう? それを私が見抜いていないとでも本気で思っていたのかしら? いいえ、それすらも貴女の想定のうちでしょうね? 私程度のちっぽけな人間の考えなど貴女達【盤上の支配者】にはお見通しなのでしょう? ただ、帝国は違うわ! 私というちっぽけな人間が開戦を告げる花火となり、貴女の駒と帝国の駒が死力を尽くして戦う戦いが幕を開ける! そこで最後に笑うのは帝国よ!! 貴女を殺して『管理者権限』を手に入れ、そのまま全ての神を殺して皇帝陛下が世界神となるの!! 皇帝陛下、万歳!!」
グローシィの心臓付近から急速に熱エネルギーが発生して膨張――激しい爆発を引き起こす。
「護光結界――急急如律令」
素早く物理防御と邪を払う効果を持つ結界を展開し、爆発の威力を最小限に抑えることに成功した。
まあ、今ので誰か殺せたら儲け物くらいだったんじゃないかな?
「ウワァ、サイゴニジバクスルトカ、ホントビックリ」
「おーい、
「まあ、今回は痛み分けかな? ボクが彼女の動きを読んでいたように、彼女もボクの動きを読んでいた。結局、同じ結末を選んだみたいだけど、その解釈はボクとグローシィじゃ違ったってこと。しかし、ここまで頭がキレる子をむざむざ殺しちゃうのはやっぱり勿体なかったねぇ。まあ、あの様子じゃボクの方に鞍替えさせるのは無理だったと思うけど」
「お嬢様って可愛い女の子が好きですからね? あのグローシィの少女姿、可愛いと思ったんじゃないですか?」
「うん、性癖ドストライクだった! ……って、何言わせているんだよ!! まるでボクが可愛い女の子を見境なくカップリングさせるタチの悪い腐女子みたいに聞こえるじゃないか!!」
「
「アハハハ、超ウケるんだけど!! やっぱりお前ら超最高だわ!!」
「命狙われて大ピンチだったこのクソ陛下が狂ったように笑いまくっている方がアウトだと思うんだけど……。国王陛下、真面目な話になりますがフォルトナ王国で発生した魔物について、ブライトネス王国、緑霊の森、ユミル自由同盟、ド=ワンド大洞窟王国、エナリオス海洋王国が加盟する多種族同盟が保有する同盟軍から増援の提案がありました。敵は先程の映像を取得する際にも使用した「サーチアンドデストロイ・オートマトンプログラム」によるものから、先程グローシィが神と崇めていた皇帝トレディチと同種――『管理者権限』を持つ『魔界教』の枢機司教はスロウスと『
「それがお前達が二年前までに紡いだ絆の力ってことだな。ラインヴェルドから話を聞いて凄い羨ましかったぜ? いつかその仲間に入れてもらいたいってな。だが、これはフォルトナ王国国内での問題だ。同盟国に負んぶに抱っこで国の命運を預けるってのはフォルトナ王国国王として許容できるものじゃない。フォルトナ王国の全軍を持ってその魔物どもを討ち果たす。んでもって、今回は俺も出る! クソつまんない書類仕事や謁見なんてやってられっかよ! 少しは俺も楽しませろ!!」
「はぁ……言うと思ったよ。類は友を呼ぶというか、クソ野郎の友達はクソ野郎とか……イリス様、シヘラザード様、今こそお二人で協力して夫を止めるべきでは? アルマン様、宰相としてここは引き止めるべきだと思いますが?」
「……すみません、ローザ様。まさか、オルパタータダ様がこのような破天荒な方だったとは……妻でしたのに、今の今まで知りませんでした」
「し、知らなかったのよ! こんな人だったなんて!! 知っていたら暗殺なんてそんな恐ろしいこと考えなかったわよ!!」
「よくこんな陛下に喧嘩売ろうとしていましたね……さっきまでの私って本当にド阿呆だったのですね」
もうダメだ……このクソ陛下止まんない。
「おっ、そうだ! すっかり肝心なことを忘れていたぜ!! アクアとディランの前世の話、とっとと漆黒騎士団や前世の友人達にきっちり話しておけよ! 国王陛下様の勅令だ!! さぁ、とっとと暴れに行こうぜ!! 勝利した暁には国を救った三人の英雄に素敵なご褒美も用意するからな、楽しみにしとけよ!!」
「全力で辞退致しますわ!! クソ嫌な予感しかしないからねぇ」
さて、フォルトナ王国の擾乱――安寧が破れるほど多人数が入り乱れ騒ぐ一連の騒動も残り僅か。最後の戦いの時となった……既に正妃様とか側妃様とか宰相様とか安寧を揺るがされた被害者が続出しているけど。
さて、ハーモナイアから奪われた彼女の欠片を忌々しい神気取りから取り返しに行きますか……っと、その前にアクアとディランの件を説明しないといけないねぇ。
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