百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.6-10 オニキスの愉快な仲間達、という名の問題児達。 scene.2 上
Act.6-10 オニキスの愉快な仲間達、という名の問題児達。 scene.2 上
<一人称視点・アネモネ>
「この空間で戦闘で負った傷は現実にはフィードバックされません。肉体がデータによって作られたものに置き換えられたというイメージですね。より性格に言えば、人間の魂をデータで作った乗り物に載せ換えられ、その間、物質的な肉体は四次元空間に保管されます。戦闘終了後、または戦闘が終了する前に戦闘不能になった場合はこの空間内部の特殊な電脳体から物質体に魂が戻されます。内部での時間を加速させることもできますが、その場合は時間加速終了予定時刻まで内部に留まる必要があるため、戦闘フィールドが狭い今回は時間加速を使用せずに行こうと思います」
「
Career Service of Null Silhouetteのプログラムの一部を流用し、電脳体を守るように強固なシステムでコーティングしたものが戦闘用電脳体ということになる。バトルロイヤルや獣王決定戦で使用したものもこれと同じだけど、あの時は物質体と同じ装備、同じ身体能力の戦闘用電脳体を構築していた。バトルロイヤルでは、その戦闘用電脳体を『管理者権限』で物質化し、内部に物質的な装備品を設置して、内部でも得た装備を使用可能にするという割と複雑なことをやっていたけど、今回は獣王決定戦の時と同じようにただ戦闘用電脳体に換装しただけだからそれほど複雑ではないと思う。
「なるほど……さっぱり分からんな!!」
「まあ、ドロォウィンが分からないのも無理はないだろうけど、今回は俺もさっぱり分かんねぇわ。四次元空間への物質的な身体の保存と、別の身体への魂の移動? いや、言いたいことは分かるけどよぉ、そんなの本当に可能なのか?」
「副団長にもよく分からないなら、俺が分からなくても特に問題はないっすね」
「随分オカルトじみた話ですわね。……でも、もしアネモネさんがそんな技術を現実にしているとしたら……この方は本当に何者なんでしょうか?」
「ジャスティーナ様、残念ながら今はその答えをお返しすることはできませんわ。しかし、時が来れば皆様が望まないとしても事情を説明させて頂きたいと思っています。――全ては
この世界の人間に過去転生した人物が転生前の人物に会って過去転生したことを告げても時空に変化が及ぼされないことは確認している。この世界は完全に二人が死んだ世界線とは全く別物――ボク、アクア、ディランの三人がフォルトナ王国に乗り込んだ時点で決定的に流れが変わっている。
ボクの転生前の世界との差異については正直分からない。ただ、シャマシュ教国に関わらずボクの死に関わる運命を変えていないから問題なく世界線が合流を果たすと思う。
逆にアクア達は運命を変えることを選んだ――同じ転生者でもボク達が目指す方向は全く逆みたいだねぇ。
「さあ、この話はここでおしまい。とっとと部屋帰って商会の仕事を終わらせたいのでサクッと決着つけちゃいましょう。今朝デスク見に行ったらどさっと書類の山が積み重なっていた上に、商会の融資担当の方が頭を下げられて頼まれてしまった演劇関連の融資依頼にも目を通して受理するか決めてしまいたいので……各々、自分が普段使っている装備を頭で思い浮かべてください。この空間ではその思考を実体化させて武器を生成することが可能ですので……まあ、そのシステムを悪用して普段使っているものよりも性能が高いものを使うということはできない設定にしてありますので、ご安心ください」
ちなみに、ディランには大臣装備を使われると一発で身バレするので普段から武器のみを使用してもらうようにしている。今回も自分が何故偽名を使っているのかをきっちりと考えて行動してくれる筈……流石に本当のド阿呆じゃないからねぇ、ディランは。
全員が装備を顕現したのを確認し、ボクも装備を顕現した――『銀星ツインシルヴァー』と『
「あっ……これ、詰んだかもな。お嬢様のアネモネとしての本気モードって噂の十二刀流だ」
「あれがダヴァルットの街の冒険者ギルドを壊滅に追い込んだってヴァケラーが言っていた奴か。……相棒、案外まだマシかもしれねぇぜ? こっちは二十人いるから速攻掛けたらまだ可能性も……まあ、厳しいことは承知しているけどよ」
オニキス達も、ボクが冗談で十二刀流をやっているとは思っているみたいだねぇ。浮いた十本の剣と、構えた双剣を見てボクが本気で十二刀流で戦う気だと見抜いたみたいだねぇ。
「「最初は僕から仕掛けさせてもらうよ! 遊ぼうねぇ、お姉ちゃん! その眼鏡叩き割ってあげるよ!!」」
ヨナサンとジョゼフは軽々と得物の剣を握ると、ボクに肉薄して素早い斬撃を放ってきた。片手で軽々と振るわれる剣は、遊んでいるかのように空気を裂く。
「うふふ、私の眼鏡はポラリス様の度が入っていない伊達眼鏡と違って高度な技術で作り上げられた特注品ですわ――私の大切な仲間が作ってくれた一点もの、壊される訳にはいきません! 守るべきものがあるの!! ダブル・ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー!!」
『銀星ツインシルヴァー』の二刀の刀身に月属性の魔力を宿す付与術式を発動し、円を描いて中心を突く。
巨大化した刀身がヨナサンとジョゼフの身体を刺し貫き、身体のほとんどを消滅させる。HPゲージが軽々と吹き飛び、悪魔の少年司書達は戦場から姿を消した。
「全く馬鹿な弟達……無策で突撃したって勝ち目がないのに、趣味を優先してとっとと負けてしまうなんて」
「どんな攻め方で来るかって思っていたけど、プリムヴェールさんの『ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー』の応用か……典型的な魔法騎士タイプの戦い方で攻めてくるのか。相棒、どうする?」
「情報が少な過ぎる、今は無策で突撃しないことが懸命だな」
十二刀流とプリムヴェールの月魔法コンボ、確かに厄介極まりないよねぇ。まあ、この『月の十二刀流騎士ビルド』の本領を見せつける前に――。
「以前の模擬戦では運悪く吹き飛ばせなかったヅラ、今回は吹き飛ばさせて頂きますね!!」
二刀を翼のように広げ、無音の踏み込みと同時にポラリスの部下達に肉薄――加速が存在しない急激な緩急を旨とする「圓流耀刄」の斬撃がすれ違い様に次々とポラリスの部下を撃破していく。
「っ、やはり捉えられんか!?」
剣を槍のように構えたポラリスが踏み込みと同時に一気に突きを放ってきた。迷いなく打ち込まれた一撃を通常の斬撃に切り替えたボクは素早く左の剣を回転させて絡め取り、右の剣で絶妙な力加減と起動でポラリスのヅラを派手に吹き飛ばす。
ヅラが急所設定されているポラリスはこの一撃で撃破され、蒼月騎士団は早々に全滅した。
「どんどん行きますわよ!!」
「なんかアネモネさんがこっちロックオンしているんだけど!? 俺ってアネモネさんに恨まれることした記憶がないんけど、どういうことっすか!? マジで助けてください、団長! 副団長!!」
「……相変わらずの記憶力だな、ファイスは」
ファイスが覚悟を決めて自己流の荒々しい喧嘩剣術でボクのHPゲージを削りに掛かったのとほぼ同時に左方向から砲弾のような勢いで飛び出したウォスカーが見事に型のとれた見慣れた正統剣術で切り掛かってきた。
「ウォスカー、サンキュー。俺だけじゃ無理そうだから助かった。アネモネさんって全く容赦ないから死んだフリも通用しないし……そもそも死体蹴り度が平気でしそうだよね!? マジで怖いんだけど!!」
「……アネモネさん、いつにも増して楽しそうだな」
「ホント、なんでだろうね!? いつも以上にアネモネさんが嬉々としているんだけど!? やっぱりアネモネさんって腹黒でドS――」
「全く心外ですわ? 私はオニキスさんやアクアさんほどのエスっ気はありませんわ? 確かに戦闘狂なところはあるかもしれませんが」
「そっちの方が危険だと思うけど!? アネモネさんって
「全く的外れもいいところですわ! 私は理性を失って無駄なものを破壊するような愚かな真似は致しませんわよ?」
なんか、ファイスに乗せられて次々とヘイトを溜めている気がするんだけど……もしかして、これって時間稼ぎなのかな? 多分無意識だけど。
しかも、ボクにだけじゃなくて自分へのヘイトも溜めてしまっているから完全にアウトだよねぇ?
「ファイスさん、とりあえずお大事にしてくださいね?」
「えっ、俺風邪ひいていないっすよ?」
しゃがんで攻撃を躱し、剣を下ろして次の攻撃パターンの予測を困難にしてニヤリと笑ったファイスに向かって左の剣で「圓流耀刄」の斬撃を放ち、一刀両断。
更に、ウォスカーの砲撃のような重い斬撃を右の剣で受けつつ体内で回転させ、瞬時に切り替えた「圓流耀刄」の斬撃に乗せて放つ。
圓式基礎剣術、又は「圓流耀刄」と対をなすボク独自の剣技群の一つ――圓式独創秘剣術、又は「圓流祕刄」。
その一の型にして名にボクの名である「圓-Madoka-」を冠するこの技は衝撃コントロールを旨とする高難易度技……まあ、圓式基礎剣術には劣るけどねぇ。
鬼斬の技、静寂流、その他剣術――それらで培った技術を基に作り上げたこの「圓流祕刄」はある意味でボクの奥の手とも言える……まあ、既存の技術が優秀過ぎて使う頻度が遥かに少ないから奥の手みたいになっているってことだけどねぇ。
空気を擦過する大気の燦きが瞬いた瞬間、ウォスカーは身体を両断されてフィールドから姿を消した。
残るは十一人……って、なんでみんなボク一人に攻撃を仕掛けてくるのかな? まだ二チームの主要メンバーは残っているし、ボク抜きで楽しんでくれてもいいのに。
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