百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-95 三人使節団の再始動と海上都市エナリオスの危機 scene.1 下
Act.5-95 三人使節団の再始動と海上都市エナリオスの危機 scene.1 下
<一人称視点・アネモネ>
『飛空挺インヴィンシブル・ジッリョネーロ』で海上都市エナリオスに向かって南下中……なんだけど、想像を絶するほど大量の魔物を見つけ次第討伐しながらだからなかなか進まない。
わざわざ特技を使用するまでもないから、【万物創造】で創り出したガトリングレールガンで適当に撃ち殺しているとはいえ、この数は尋常じゃない……これって異世界化の影響を受けてイベントそのものの難易度が上がったから? それとも、異世界化で追加された新要素だから?
出現する魔物は
そういえば、『サファギンエンペラーの戴冠』と『深淵の洞窟の大海の主』が被ると難易度が一気に跳ね上がるんだっけ?
……あァ、分かっていますよ! イベント開始から一週間以内に
『サファギンエンペラーの戴冠』で
といっても、海を蒸発させる訳にはいかないし、綺麗な海を毒の海に、とかやったら海棲族死滅して、ついでにブライトネス王国の漁業も壊滅するし……まあ、チマチマ削っていくしかないんだけどねぇ。……ってか、
さて、
予想通り、海上都市エナリオスの中心核となっている島の周囲も
海棲族といっても、水中生物の性質を上半身き色濃く受け継ぐ魚人族、指の股に薄い膜と、耳のところにヒレがある水中活動に適した海人族、水中生物の特性を下半身に受け継ぐ人魚族の大きく三つの種族がいて、それぞれが入り乱れながら
そして、間髪入れずに飛んでくる
「さっきと同じようにアクア達には……ってもういないねぇ」
ってもう、二人とも飛び降りて嬉々として
『お姉様、私達も――』
「そういうと思ったよ。欅さん、悪いんだけどこの三人をあの島まで届けてくれない? それが終わったら好きなだけ魔物相手に暴れていいから」
『お姉様のご要望とあらば、致し方ありません。お姉様の命を狙うという最悪な所業を働いた万死に値する者達ですが、ここはグッと堪えて島まで送り届けます』
あっ……欅達は初対面のところで既にあの三人にプッツンしていたんだねぇ。ボクの顔を立てて一応殺さないように連れていくつもりではあるみたいなんだけど……あの、欅さん? 蔦で巻きつけて宙ぶらりんって、それ本当に大丈夫ですか?
欅達が飛び降り、『飛空挺インヴィンシブル・ジッリョネーロ』の中にボク一人しかいない状態になったところで統合アイテムストレージに『飛空挺インヴィンシブル・ジッリョネーロ』を戻して、はい、スカイダイビング!
統合アイテムストレージから取り出した『背繋飛剣ディス・チェーサー』を遠隔操作する「
更に、覇王の霸気を発動して
戦闘力はほぼ拮抗、
「
「魂魄の霸気――《影の甲冑》! 《影撃部隊》! 【虹柱】!」
『『『『『『――蔓鞭ノ乱打!』』』』』』
【天使之王】で天使化して、片手剣、盾と槍、弓、両手斧、戦鎚、鞭、杖を持った七体の天使を光から生み出し、更に自身に聖属性を付与し、《騎士団》でオニキスとディランを模った黒い騎士を産み落としてアクア自身とディランに憑依させて黒いオーラを纏ったアクアは【超加速】を発動して自由落下の速度を加速させて
ディランは《影の甲冑》とアクアの《騎士団》の効果で得た黒いオーラで自身を強化しつつ、《影撃部隊》で
十四体の天使が武器を振るって死を振りまき、梛が三人の海棲族を置いて戻ってくる間にこの近辺の魔物がほとんど全滅していた。
◆
ボク達が海岸に上陸すると、三叉槍を持つ身長約二百三十メートルという巨漢の人魚が兵士を連れて姿を現した。
しかし、よく足が鰭になっているのに歩けるよねぇ、人魚って……まあ、ファンタジーだから?
向けられる大量の敵意に対して、欅達も敵を剥き出しにして一触即発な状況に早速なっているし、アクアとディランも「お前がどうにかしてくれよ。俺達にできる訳ないだろ」ってサクッと丸投げだし……やるよ、やるけどさぁ。
「お初にお目にかかります、アネモネと申しますわ。ブライトネス王国というここから真っ直ぐ北に進んだところにある人間の国の一つで商会の長を勤めております」
「その商会の長とやらが海上都市エナリオスに来た、ということは我らを本格的に奴隷に落としに来たということが!?」
だから、勝手に勘違いして敵意マシマシにするのやめてくれないかな!? 確かに人間は海棲族も奴隷にしてきた前科があるから怒りを覚えるのは至極当然なんだけど、そのまま敵意向けまくったら既に
「欅さん、梛さん、櫁さん、椛さん、槭さん、楪さん、櫻さん、ボクのことは心配ないからちょっと敵意を緩めてねぇ。このままだと話し合いすらできないし……。改めまして、アネモネと申します。ビオラ商会という商会で会長を務めさせて頂いておりますが、同時にこちらに居られるブライトネス王国の大臣を務めておられるディラン=ヴァルグファウトス公爵様、同国のラピスラズリ公爵家でメイドをしているアクアさんと共に多種族同盟の構築を提案するために、各国を巡っております。現在まで、エルフ、獣人族、ドワーフの三種族の代表者にコンタクトを取り、この同盟に賛同して頂き締結に向けて動いているところです。かつて、ブライトネス王国でも奴隷制が国家として禁止させているにも拘らず天上光聖女教の教義を盾に裏で公然と奴隷を取引していましたが、国王と通りすがりの吸血姫が天上光聖女教の総本山を襲撃して教皇を説得、教義に亜人差別の禁止を盛り込ませ、その上で奴隷商に関わった貴族、商人を処罰しましたし、それ以来吸血姫を女神と崇めるようになった天上光聖女教改め天上の薔薇聖女神教団とブライトネス王国が奴隷制は固く禁じておりますので、その禁を破ってまで亜人種族を奴隷落ちさせようとする輩は我が国にはいないと思われます。ただ、これはブライトネス王国一国の話、他のシャマシュ教国をはじめとする人間国家は亜人種族に対して偏見を抱いたままですので、その辺りは覚えておいてください。さて、同盟についてですが、無事締結することができた暁には通商・技術提携・国家危機における戦力の派遣などのメリットを得られますが、これらは勿論、利益ばかりではありません。逆に同盟を締結しない場合は今後一切ブライトネス王国は海上都市エナリオスを含む海棲族の支配地域に一切の干渉を行わないことを約束致します。これには我々が仮想敵として想定している
「……魔物の討伐をしてくれたことについては感謝する。が、それで貴様ら人間の罪が消えた訳ではないぞ」
「別に許して頂かなくて結構です。元より贖罪のためにこの国を訪れた訳ではありませんから。ただ、等しく選ぶ権利を与えず、後々になって不公平だったと言われたくないから……いえ、不公平にしたくはないから私達は各種族を巡って、この提案をしているのです。……復讐は何も生みません。片方が片方に手を出せば、その戦いは果てしなく続くでしょう。それに、私も刃を向けられて無抵抗でいられるほど前人ではございません。どちらかがどちらかを根絶やしにするまで――貴方様が賢明な方であることを心からお祈りしていますわ」
海棲族のトップの人魚の男が兵士達に合図を出すと、兵士達は渋々構えていた武器を下ろした。
まず、最大の峠は越えたねぇ。ここで敵対しなければ、交渉のテーブルにつける可能性は高いし。
しかし、自ら戦場に立つトップか……ラインヴェルドやヴェルディエ、ディグランみたいな武闘派タイプみたいだねぇ……いや、エイミーンも戦えるタイプの族長か。……種族のトップって戦える人じゃないとなれないなんて法則でもあるのかな?
「ただ、確かにこのままでは借りを作ったと感じるかもしれませんね。では、今回の討伐で私達が倒した魔物と得た報酬は全て私達がもらうということでいかがでしょうか?」
「……それが当然だと思うが、随分気を遣ってくれているようだな。どうやら、我らが考えている人間とは少し違うようだ。……しかし、まだお前達を信用した訳ではない。それに、これは海上都市エナリオスの問題でもある……幸い、早めにこの島に避難することができたが、犠牲も出た。この無念を我々の手で晴らさず、他人の手に委ねる訳にはいかん。我も同行させてもらう――その上で、お前達が本当に信用に立つか我自身が見極めさせてもらう。それでいいか?」
「――バダヴァロート国王陛下! 本当にこの人間達と共に!? 危険でございます! まだこ奴らが信用できると決まった訳では……」
「それが手っ取り早いだろう? ……最悪の場合は逃げれば済む。人魚族の泳ぐスピードに人間が勝てる訳がないのだからな」
……それが勝てるんだなぁ、
「……ご納得頂ける方法があるのでしたら、それが一番ですわね。よろしくお願い致しますわ……えっと、お名前伺ってもよろしいですか?」
「海上都市エナリオスの国王を務めているバダヴァロート=アムピトリーテーだ。安心しろ、足を引っ張るつもりはない」
「頼もしいですわね。……それでは、参りましょうか? 今回の襲撃の元凶がいる場所へ」
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