百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.1-14 大迷宮挑戦と廃棄された計画 scene.1
Act.1-14 大迷宮挑戦と廃棄された計画 scene.1
<三人称全知視点>
情報がある程度の階層までしっかりと存在している
客がいれば観光地化するというのは当然の流れであって、それに合わせて秩序が整えられることは当然のことである。
――だから、
受付嬢はステータスプレートの提示を求め、その情報を名簿のようなものに書き記していく。入った人と出た人の数で死者数を割り出すということだが、なんらかの魔道具を使えばもっと効率よくできるのでは、と園村は心の中で思った。……例えば、ICカード的なもので。
シャマシュ教国や冒険者ギルドの介入がある前は、【ルイン大迷宮】の浅瀬を根城にした犯罪組織や、ろくに装備も整えないまま酔ったノリで挑戦する者達などもいたようで、そうしたトラブルを回避すべくとりあえず危険そうなものは中に入れないようにこの入場ゲートを設置したとか。冒険者ギルドの出張所や素材売却ができる施設、簡易的な武器屋や防具屋もあるので、【ルイン大迷宮】に挑戦する者達は重宝しているらしい……まあ、ここで武器屋や防具屋を使うものは修理や壊れた武器の代わりを買うというがほとんどで、ここで初めて武器を買って挑戦というのは流石にいないが……。
◆
外とは打って変わり【ルイン大迷宮】の内部は静謐とした空間だった。
鉱脈を掘った採掘場のようなイメージの空間で、蛍光鉱と呼ばれる淡い緑色の光を放つ異世界鉱石が光源となる。
その他にも様々な鉱石が存在するようだが、不思議のダンジョンよろしく下の階層に行くほどレアな鉱石が手に入るので、ここにあるものは大した効果もない――つまりは値打ちのほとんどないものばかりなのだろう。まあ、それでも使い方による訳だが。
そんな一行の前に、早速魔物が現れた。
「あれはラッドマンっていう魔物だな。あまり強くはないが、疫病を発生させるから厄介だぞ」
灰色の体毛と赤い瞳を持つ、牙の鋭いネズミのような魔物だ。見た目こそネズミに近いが、上位互換だと身体が大きくなり、筋骨隆々になっていく傾向にある。
「よし、まずは曙光達が前に出ろ。それ以外は後ろに下がれ」
今回、迷宮挑戦にあたり予めパーティーが設定された。
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第一パーティ…聖代橋曙光、荻原鋼太郎、柊木咲苗、五十嵐巴、東町太一
第二パーティ…小田切史朗、一ツ橋源文、上田信司、宗谷椛、富永亜矢子
第三パーティ…山崎三葉、妻夫木槐、豊嶋和子、稲垣香織、風見原夢路、長良椎菜、芳川奈月
第四パーティ…羽戸山啓介、嵐山辰馬、巽半蔵、乾櫻子、本橋朝陽、北村篝火、二ツ杁瑞稀
第五パーティ…鮫島大牙、虎杖勝治、齊藤琢磨、松原重樹、澁澤省吾
第六パーティ…園村白翔、ゴルベール以下騎士団員
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という構成だ。パーティは長篠の鉄砲隊の如く一戦ごとにローテーションしていく形だが、園村だけは例外的に騎士団員が援護に回るという構成だった。その特別待遇にまたしても鮫島達が露骨に反応していたが、彼らは本当に咲苗を射止める気があるのか甚だ疑問である。
ザ・勇者という典型的な全身鎧に兜、聖剣を装備した曙光、重武闘家らしく籠手と脛当てを装備した荻原、大聖女らしく白杖を装備した咲苗、刀剣術士らしく刀擬きを装備した巴、魔剣術士らしく漆黒のバスターソードを装備した東町の中で一番に動いたのは巴だった。
抜刀すると同時に素早く接近し、神速の五段突きを繰り出す。
「…………五十嵐流刀術二ノ型・五光だねぇ」
その初見である筈の技の名を一発で見抜いた園村に巴と五十嵐流の門下である曙光の視線が同時に向いた。
「なんで知っているのかしら? 確か、園村君に五十嵐流の技を見せたことは……いえ、こっちに来てからの訓練で見たのかもしれないわね。でも、技名を叫んではいない筈よ」
「そうだねぇ。……まあ、昔ちょっとあったんだよ」
巴はふと、園村が五十嵐流に通っていたことがあったかと考えてみたが、いくら考えても園村白翔という名の少年を道場で見たという記憶はない。
園村と初めて会ったのは入学式当日だった。
「〝我、ここに焼撃を求めん。真紅の願いに応じて我が手に火球をもたらせ〟――〝
そのやり取りの間に詠唱を終えた咲苗が火球を放ってラッドマンを焼き尽くし、荻原が拳で吹き飛ばした最後のラッドマンを東町が切り倒した。
「おいおい、いくらなんでもオーバーキルが過ぎるぞ! 魔核の回収も念頭に置いておけよ。それと、巴と曙光。いくら余裕があるからと言って戦闘中によそ見はいけない――万が一ってことがあるからな」
オーバーキルな魔法を放った咲苗は顔を赤くし、巴と曙光はバツの悪そうに小さく「すみません」と謝った。
◆
実のところ、騎士団員――特にルチアーノは園村のことを全く戦力として見做していなかった。
ゴルベールと違い、園村の博識を知らないルチアーノにとっては非戦闘職が天職の訓練にも参加しない男というイメージが固定観念としてあったのだ。
だから、他の勇者達とは別ルートで仕上げてきたという園村がどれほどの力を持っているのかと、弱らせた魔獣を嗾けた訳だが……。
「まさか……ここまでとは」
錬金術師と書写師――非戦闘職二つという天職を持つ少年は、予想の斜め上をいく技でラッドマンを圧倒していた。
「【錬成・山津波】」
その正体は鉱物を含んだ大地に干渉して隆起と陥没を繰り返して隆起する高さを増やしながら敵の元に津波のように土ボコを高速で放つ技だ。大きな魔獣に対しては転ばせる効果しかないだろうが、その中に〝
更に面白いのは、その発想の根源が「ホットスポットから海洋プレートによって少しずつ動くハワイ島」というのだ。流石にその回答にはこの場にいる全員が素直に「マジか」と内心で驚きの声を上げた。ちなみに、ルチアーノ達にはさっぱり分からない話だが、原理は分からないものの、未だこの世界では解明されていない星の営みを戦闘技術に入れ込んだという意味での称賛であった。
「……まだまだ何か隠し持っていそうね。園村君ならこれ以外に切り札の一つや二つ持っていても別に不思議ではないわ」
「全く、ボクが非戦闘職だってのを忘れていないかい? ……これでも
巴と楽しそうに話す園村に荻原と咲苗から嫉妬の視線が向けられたが、園村は全く気にした素振りも見せずに新たな札を取り出した。
◆
第九層に至るまで挑戦は順調に進んだ。第九層まで……というのは、咲苗達は第十層を見ないままこの挑戦を終えることになったということだ。
具体的にいえば、第九層の転移トラップを鮫島が踏んでしまい、全員が下層――三百五十一層に転移させられてしまったのだ。
ちなみに、勿論未到達地点である。出現する魔物の姿など見たことがない……筈だ。
「あれは…………
全約五メートルの直立した青い毛を持つ狼といったイメージの巨大な
ゴルベールすら知らない、未開の階層の魔獣の名前を、だ。
「まさか……この世界は『Eternal Fairytale On-line』なの? ……それとも、『Eternal Fairytale On-line』がこの世界を基にしたゲーム」
「――あまりにも早計だね、深謀遠慮に富んだ咲苗さんにしては。この世界を基に『Eternal Fairytale On-line』を作ったという仮説については、ノーブル・フェニックスの平バイト、フルール・ドリスとして正式に否定させてもらうよ。そして、もう一方は惜しいけど、少し違うみたいだ。それを確認するために、ボクはここまで色々と調べてきたんだから、信用してもらいたいな」
「……園村君、なの?」
咲苗だけではない。その場にいるほぼ全員が、彼の豹変に驚いた。
誰一人ついていけていない状況の中、園村が懐から取り出したステータスプレートをゴルベールに向かって投げた。
「どういうことだ!? ステータスプレートは絶対の筈!!」
「そもそも、それこそが固定観念だよ。この世界の技能以外には攻撃手段が存在しないというのも。――まさか、異世界の魔法で偽装されるなんて、考える訳がないよねぇ」
顔に掛かっていた長い髪を邪魔そうに退かすと、その美貌が明らかになる。
クラスメイトの一部は、その姿に衝撃を受けたようだ。
「まさか……幻の女神」
「そういえば、そうも呼ばれていたっけ? まあ、入学からずっと本名を隠していたし、そろそろ本当の名前を明かしてもいいかな? 改めまして、ボクは
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百合薗圓 17歳 男 レベル:68
天職:錬金術師、書写師 職業:ー 副職業:ー
筋力:20
体力:15000
器用:15000
耐久:20
敏捷:15000
知力:13000
精神:12000
魔力:150
魔耐:150
運:-15
魅力:690
戦闘系技能:ー
魔法系技能:ー
耐性技能:ー
感知技能:鉱物感知
職業系技能:錬金術…鉱物系鑑定+精密錬成+高速錬成+複製錬成+圧縮錬成+自動錬成+鉱物分離+鉱物解体+鉱物融合+鉱脈干渉+消費魔力減少・彫金…魔法陣刻印・紙作成…全種類紙生成+魔法紙作成、墨類作成…魔法墨作成・書術…高速書写+完全複製+契約書作成
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園村――否、圓は一瞬で自己紹介を終えると、すぐさま
「えっ……もしかして…………もしかして、まどかちゃんなの!?」
初恋の少女の忘れていた名前を思い出した咲苗は、変わり果てた少女――否、男の娘に視線を向けた。
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