第26話 耳舐め


ホームルームが終わり、天音ちゃんがこちらの席に来ようとする時、窓側に座るメイドが先にこちらにやってきた。


『じぃー』


俺の前に無言でたたずむメイド。純粋な目でこちらをただ睨み付けている。睨むのが慣れてないのかこちらを見るメイドは凄く可愛いく思ってしまう。


「どうした?」


『じぃー』


俺の言葉に反応を示さない。

もしかしたら朝1人で登校させてしまったことを根に持っているのだろうか。


「朝は悪かった。メイドの時間になったら埋め合わせするから許してくれ」


『じぃー』


「・・・」


「その言葉忘れません。あと、あまりイチャイチャしないでください。私のゆう様なのですから...」


「わかった。なるべくしない」


「なるべくですか。絶対しないと誓わないあたり全くゆう様は駄目なご主人様です。ですが、私を本妻にしてくだされば話は違ってきます」


胸を手に当て、したり顔で言うメイド。


「え?」


「私と結婚してください。そしたら愛人の1人や2人など気にしません。むしろゆう様が幸せになられるなら喜んで賛成いたします。ですので...私とー」


「ちょっと聞き捨てならないけど〜。今は私の時間だから自分の席に戻って〜?」


メイドの言葉を遮り、天音ちゃんが俺の席に来た。


「良いところでしたが邪魔が入ったみたいですね。では私はゆう様を1秒たりとも逃さず見守っておりますので何かあれば私をお呼びください」


「無理しない程度でな...」


「私はゆう様を見ることだけが生きがいです」


純粋な目でメイドが見つめてくる。


「あぁ」


「愛してますゆう様」


そう言い残し、メイドは自分の席へと戻っていった。

すると、俺たちの会話に不満を持ったのか、天音ちゃんが俺の頬を人差し指で押しながら言ってくる。


「ねぇ〜?結婚ってしないよね〜?」


だんだんと強く押すものだから痛い。


「し、しません」


「よろしい〜」


痛みと天音ちゃんの殺気のこもった眼差しに素直に従うしかなかった。


「そしたらゆうさん〜?」


「なんだ?」


「1時間目が始まるまでイチャイチャしよ〜?」


満面の笑みを浮かべる天音ちゃん。


「何するんだ?」


「こうするの〜」


「って、おい!早く離れろよ」


「さっきの続きで、今回は逆向き」


さっき珠ちゃん先生に注意されたのが俺が下に座り、その上に天音が座るという状態だったのが今回はその逆向きで、俺と天音ちゃんが抱き合う形になってしまっている。天音は目一杯に足を広げ、椅子の後ろまで俺の身体を包むように抱きしめてくる。それに俺の大事な所に天音ちゃんが座るものだから、我慢できるかわからない。


『こうやって耳に囁かれるのってゆうさんは好き?』


「や、やめろよ...」


天音ちゃんの吐息がこそばゆい。


『照れてる〜。やっぱゆうさんは好きなんだ囁かれること。だったらこれはどう〜?」


「さ、さすがにやばいって...」


天音ちゃんは俺の耳を甘噛みしきた。少し痛みは感じるが何故か気持ち良いと感じてしまう。荒い吐息を漏らす天音ちゃんはより一層顔を赤らめてエロい。


『感じてる〜。ゆうさんは変態だったんだね〜』


「ち、違うし。周りが見てるし、もうすぐで始まるぞ、、、っっん、や、やめ...」


『耳舐めは刺激的すぎるかな〜。でもやめないよ〜。まだチャイムは鳴ってないし〜」


「で、でも...」


『私に抵抗する気〜?だったら抵抗出来ないようにもっと激しくするよ〜』


天音ちゃんが耳舐めより激しいことをしようとした刹那、教室中に響き渡る声が響いた。


「「「待ちなさい!!!!!!」」」


「「「それ以上は看過できない」」」


一斉に席を立ち上がり、クラスのみんなも驚いたのかこちらを振り向く。


キーンコーンカーンコーン


「邪魔が入ったし、チャイムも鳴っちゃった〜。でも覚えていてね〜?黒崎さんと西園寺さんと長峰さんは私の邪魔をしたってことを〜。だから私に邪魔されても文句ないよね〜?」


「流石に見逃せるわけないじゃない。あとでルールの改変を望むから黒崎さんと柚木さんと長峰さんとゆうくんも集合しなさい」


我慢出来なかったのかルカはルール改変を求める。


「何を勝手なことを〜」


天音ちゃんはルカの意見を受け入れられない様子だ。


「私はルールの見直しは必要だと思います。ですので私は西園寺さんの言うことに賛成です」


メイドはそのルカの意見に賛成する。


「私も少しはルールを付け足した方がいい気がするわ」


腕を組みながら千崎は冷静にそう言う。


「これで3対1。柚木さんはどうするの?」


「あっそ、分が悪いし、参加するだけする〜」


ルカちゃんの意見に天音ちゃんは渋々賛成した。

そう天音ちゃんが言い終わると同時に1時間目の英語の先生が教室へと入ってきた。そして俺はクラスから冷たい視線を受けながら授業をするのだった。

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