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愛されたい…誰もがもつ欲望。


愛されたい為に、苦痛すら我慢する。


嫌われたくない為に、なんでもする。


自分の心が傷つきたくないから。


人の弱さ…脆(モロ)い面。


ミスズはそれが顕著だった。

溶けそうなバニラよりも、脆かった。


最近、ミスズは何事にも謝るようになった。

私に依存すればする程、嫌われたくない想いは強くなる。


[感じなくてごめんなさい]

[気を使わせてごめんなさい]

口癖になったかのように謝る。


嫌われたくないから…自分が傷つきたくないから。

私は謝るミスズを見てそう思ってた。


自分を自傷する…そういった意味ではマゾ。


今まではリスカ…手首を切る事。

今はエムになり、私に痛めつけられる事。


それで自分を罰して心の安泰…平穏…均衡を保っている。


ミスズは性の快楽を求めてるのではない。


ショープレイにもミスズは謝るようになった。


[ごめんなさい。私はいけない女です。お仕置きしてください]

マイクを通じて泣きながら謝る。


私に…観客に…誰に?


観客の興奮は高まる…ミスズの人気は高まる。


今ではミスズは、お店にとってドル箱だった。

観客にはスターだった。


私を興奮させてくれる…大事な恋人だった。


彼女の身体は傷だらけになる…傷が治るのも遅くなる。

そんな傷付き弱っていくミスズを見たい客が増える。


月に3回の出番…それだけでミスズは60万の給料…私とほとんど同額。


彼女は私にお金を渡す。

[私はこんなに要らないの…好きに使って]

…と。


私は彼女名義の通帳を作り貯金する。


ミスズの願いは変わらない…毎晩一緒に寝て。キスして。


叶えている…毎日かかさず一緒に寝ている。誰もいない時はキスしている。

それでミスズが幸せなら。

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