第84話

 男子三日会わざれば活目して見よという諺もあったが、一体どこから諺がきたのか気になるが……、あまり第一周目と違う行動は取りたくないが……。


 父親がアルセス辺境伯の説得に俺が必要というなら行くしかないんだろうな。



 その翌日、俺は父親と一緒にアルセス辺境伯が治めるアルセス辺境伯領の首都とも言えるアルセイドに向けて出発した。

 



 一回目には発生しなかった出来事。


 それはアルセス辺境伯領の首都とも言えるアルセイドへの移動。


 本来であれば一回目に魔王が倒されているのだから、最初と同じ行動を取りたかった。

 ただ、一回目に魔王を倒した後の事が、どうなっているのかが分からない。

 やはり、早めに軍隊を出してもらおうとアルセス辺境伯に伝えるべきだろう。


 でも……、それが俺にとって正しい事なのかどうかは分からない。


 それでも、アルセス辺境伯は、魔王をかなり恐れていた。

 きっと話して理解してくれれば、すぐにでも軍隊を動かしてくれるはずだ。


「アルス、大丈夫か?」


 薪の前に座って体を温めながら、色々と考えていると父親であるアドリアンが話しかけてきた。

 現在、俺は父親と一緒に行動をしている。

 そして、明日にはアルセス辺境伯領の首都とも言える都市に到着する予定だ。


「はい……、静かになると色々と考えてしまって――」


 シューバッハ騎士爵領は、森に囲まれていたがアルセス辺境伯領に近づくに森林は減り代わりに平地と草原が増えていった。

 現在、野営をしている場所以外は、周囲全部が草原に囲まれている。


 草原といっても子供の俺からしたら胸元まであるから、高さ60センチから80センチくらいはあるだろう。


「そうか……、お前は、何度も同じ時をやり直したのだからな。考えることはあるよな」

「はい。実際のところ、僕は……アルセス辺境伯に会わないほうがいいと思うのです。最初の周回の時には、それで上手くいったので――」

「だが、それだとお前が……」


 アドリアンは途中で口を閉じた。

 そう、俺は最初の周回の時には魔王と、その配下である魔法王を倒したのだが、その後に矢で射抜かれた影響からなのか……たぶん俺は死んだのだろう。

 2回目のときに、首をチョンパされて死亡は確定だからな……。

 一回目も死んだと思って間違いない。


 俺としてはフィーナと母親さえ助けられれば別に、最初の周回でも問題ないんだが……。

 ループに突入されると、それも出来なくなる。


 それに父親が途中で口を閉じたのも俺の身を案じたからなのだろう。


「そうですね。辺境伯が誤解をして行動を起こしても困りますからね……」

「そうだな。お前が死ぬのだけは私もライラも許容はできないぞ?」


 父親が優しい目で俺を見ながら、頭を強く撫でてきた。


「――はい。気をつけます」


 親になったことがないから分からない。

 でも、きっと自分の子供だからアドリアンは心配しているのだろう。

 自分の子供が死ぬのは、大半の親というか生物は忌避するものだからな。


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