第23話

 そういえば、たしか中国では師弟関係というのは家族と同じだったはずだ。

 つまり、俺とアリサ先生が家族ということは、大きな目で見れば父親であるアドリアンも家族ということになるのか?

 

 そうすると、母親であるライラもアリサ先生にとってはお母さんなのか……。

 なるほど全ての謎は解けたな。

 とにかく、これで魔法が習える態勢が整ったと見て間違いない。


 なんだか、今日一日で色々と有りすぎた気がするな。 




「――え!? 今日から、僕は居間で寝るのですか?」

「そうよ……」


 シューバッハ騎士爵家の当主であるアドリアン――つまり、俺の父親から魔法をアリサ先生から教わっても良いと許可が出てから夕食を摂ったあと、俺はいつもどおり両親が寝る部屋に向かったら、母親に居間で寝なさいと言われたのだ。


 これは、所謂……虐待という物ではないだろうか?

 ――と、言うことを考えていたら母親が膝をつくと抱きしめてくる。

 いつもと違って、とても力が入っていて痛いくらいだ!


「ああっ、アルス。まだ5歳なのに! いくら、貴方が選んだと言っても私は、貴方をあげたくない!」

「……お母さん、僕は物ではないです」


 少しばかり過保護すぎではないだろうか?

 だけど、その反面、母親が俺のことをすごく気にして心配しているという気持ちは痛いほど伝わってくる。


「分かっているわ。分かってはいるけど……。私の大事な息子がと思うと……」

「一体、何の話をしているのですか?」


 俺は首を傾げながら母親に聞き返す。

 

「さっきも説明したわよね?」

「はい、さっき……今日からは居間で寝なさいと……」

「そう、それが問題なのよ! 居間では昨日から誰が寝ていると思う?」

「――あっ!?」


 俺は思いだす。

 昨日から、居間で誰が寝ているのかということを……。

 そう、俺達の家は人が泊まれるようなスペースというか客室がないのだ。

 つまり……、俺の家というかシューバッハ騎士爵邸では、部屋が余っていない。


「――え? で、でも……」


 年頃の、まだ結婚もしていない魅力的な女性であるアリサ先生と同じ部屋に一緒に寝るという現実に、俺の心臓の鼓動は高速で律動を始める。


「……もう、顔を真っ赤にして! アルス? アドリアンから許可が下りたと言っても、そういうのはダメよ? 」

「――わ、わわわわ、分かっています!」


 俺は3オクターブくらい高い声で母親の問いかけに答える。

 それでも……本当に一緒に寝ていいのだろうか?


 アドリアン――つまり俺の父親である当主が許可をしたということ。

 そこから導き出される答えは、師弟関係になったのだから、寝食を共にしろ! と言うことなのだろう。

 

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