第188話 偽物

 今度の患者は八幡信男48歳である。

渋沢吾郎:どうしましたか?

八幡信男:たちの悪い自分の偽物がいるのではないかと思っています。

渋沢吾郎:どうたちが悪いんでしょうか?

八幡信男:どうやら自分の所に来る訪問看護師さんのある人と遭遇したらしいです。

渋沢吾郎:どのような感じで。

八幡信男:自分の弟の声で、その看護師さんと電話で接触して、自分のふりをして会っている者がいます。しかし、その者は弟ではありません。その者は自分が行かない場所に誘っています。看護師さんはそこに私がいると思いこんだのでしょう。

渋沢吾郎:なるほど。しかし、なんで、その訪問看護師さんは偽物だと気づかなかったのですか?

八幡信男:普段の自分は声がある超能力者によって弟の声にされていて、弟の声で彼女が誘われたからでしょう。

渋沢吾郎:で、看護師さんは貴方と会ったのですか?

八幡信男:その日は会ってないです。偽物と会っていたらしいです。私と、顔が違います。で、その者と何かが起きたかもしれません。また、幻聴からの情報なのですが、その看護師さんはそこへ、2回行っています。そこは弟が住んでいますが、弟があったのは2回目で、1回目は違う人物らしいのです。

渋沢吾郎:不思議な幻聴ですね。貴方に教えてくれるのですか。

八幡信男:はい。で、看護師さんが1回目にあったと思われる日は自分と弟は親の実家にいました。自分は親の実家にずっと住んでいて、弟の家には行っていません。監視している人に尋ねてみてください。

渋沢吾郎:ということは、偽物が巧みに看護師さんをだまして、弟さんが住んでいる家に連れ込んだことになりますね。

八幡信男:で、私は、その看護師さんのプライベートの電話番号は知りません。おそらく、その看護師さんに電話したものが私と弟を陥れようとしたものです。

渋沢吾郎:その看護師さんが偽物と何かトラブルがあったかもしれないということですね。

八幡信男:幻聴からは自分のことに関しては、情報が入ってきています。

渋沢吾郎:で、貴方に不利なことは聞きましたか?

八幡信男:今行っている病院での診察中、電話が先生にかかってきて「措置入院させろ」という声が聞こえました。先生は今回は様子を見ましょうといって止めてくれました。

渋沢吾郎:電話の声が聞こえるなんて耳がいいんですね。

八幡信男:自分に関してのことなら小さいささやき声でも聞こえます。

渋沢吾郎:あなたは入院されそうになったから不審に思ったわけですね。

八幡信男:はい。しかし、その偽物は簡単に追跡できます。その看護師さんにかかってきているプライベートの携帯の番号を調べればいいんです。それに、その看護師さんが顔を見ています。

渋沢吾郎:なるほど。貴方は天性の分析力も持っていますね。

八幡信男:しかし、事前にその看護師さんには心配だから連絡しましたが、その声は普段その看護師さんに話していない自分の声でしたので、そのあと、その看護師さんへ何度か電話しましたが繋がりませんでした。

渋沢吾郎:その看護師さんにかけた携帯は?

八幡信男:その看護師さんの職場の携帯です。自分の携帯番号は彼女にかかってきている電話番号とは明らかに違います。

渋沢吾郎:なるほど。

八幡信男:また、その看護師さんは私だと思って電話していたらしいですが、性格が違い過ぎますし、話す内容も違います。

渋沢吾郎:そうですよね。偽物ですから。

八幡信男:その看護師さんを騙して自分と弟を陥れる者が許せません。

渋沢吾郎:しかし、声を変えられているとは自分では気づかないのですか?

八幡信男:話している時はわかりません。後から幻聴で教えられます。

渋沢吾郎:私に相談した理由は?

八幡信男:何かあったらフォローをお願いしたいと思いまして。

渋沢吾郎:わかりました。貴方の言っていることは貴方の本音のようですね。波動がそう教えてくれています。

八幡信男:波動でわかるんですか?

渋沢吾郎:でも、安心してください。きっと、解決できるでしょう。

八幡信男:わかりました。ありがとうございました。

 と、八幡信男は帰って行った。

夜、吾郎は、清子と話した。

渋沢清子:なるほどね。八幡さんは不安だったみたいだね。

渋沢吾郎:昨日他の看護師さんに話そうとしたらしいけど本人じゃなきゃ確認できなかったみたい。

渋沢清子:ねえ、あなた。今日もナイスなカップルでいようね。

渋沢吾郎:そうだな。しかし、八幡さんは気づかなかったのかなあ。ふつうその看護師さんに愛されているかもしれないのに。

渋沢清子:愛されているなら実家に行くでしょ。実家にいるってわかってるんだから。

渋沢吾郎:そうだよな。ネイティブキャンプで言ってたな。お互い告白がないのに終わりそうだって。

渋沢清子:八幡さんの立場から言えば、そうなんだよね。

渋沢吾郎:そういうことになるな。ただ、みんな、八幡さんを誤解している。八幡さんはみんなが思っているよりずーと大人だ。

渋沢清子:ただ、偽物がいたのは不運よね。なんでその看護師さんは偽物を信じたんだろう。

渋沢吾郎:信じ込まされたんだろうな。偽物に。八幡さん不幸すぎる。実際にコンタクトとっていないのに。コンタクトをとっていたのは偽物なのに。

渋沢清子:それでも、コンタクトをとろうとするのが女性なのよね。

渋沢吾郎:それなら職場の携帯にかかってきている番号を使えばいいじゃないか。

 と、今夜は、吾郎と清子は八幡信男の話でもちきりだった。



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