冒険者達は領主の賄賂を暴きたい

「騎士団に賄賂わいろを渡していたんだね。」

ドロシーは騎士と男に聞き取れない程、小さな声で冷静に事実を説明する。

「あの男が誰か君達は知っているよね?」

エリスは孤児達に説明を促す。

「ラファエロ・アイスフレスベルグ、この町の領主。」

孤児達の1人の少年が初老の男が何者なのか説明すると、ドロシーはその孤児の頭を撫でた。

「よくできました。見ての通り、領主が騎士団に賄賂を渡して、自分の子供達の悪行をもみ消していたわけだ。なので、騎士団を頼ろうにも、賄賂を渡されているとなると、私達がとるべき方法が何かは私達もまだわからない。」

そのドロシーの言葉にエリスも続ける。

「ここであたしが弓で射って領主を暗殺するのは、この町の問題を根本的に解決しようと思うとNG。証拠があったとしても私刑リンチにしかならないし、反逆罪でこちらがアウトになる格好の口実になる。」

そこまで、エリスが説明すると、ドロシーとエリスは「退くよ」と一言促し、孤児達を連れてその場から騎士と領主に気づかれないように去っていく。

「ターゲットは領主とその子供達、でも騎士団も領主についている。今の街の現状をどうにかするには、どうしたものか。」

街の大通りに戻ったエリスは考え込む。

「おーい、ドロシー!エリスー!」

大通りの向こうから何かを包んだ包装紙を抱えたローゼンと、籠を背負ったヴェルデーアが呼びかけて、2人の方に走ってくる。

「注文した君達の武器と頼まれていた薬、完成したよ。」

ローゼンが武器が中に入った包装紙を渡す。

ドロシーとエリスはその包装紙を破いて、ドロシーは槍を、エリスは弓を取り出す。

「ありがとう、ローゼン。これなら、彼らと事を構える時も安心だ」

エリスは自分の新しい弓を見つめて、ローゼンに礼を言った。

「うん、だけれど…敵は騎士達だけじゃあない、ラファエロ領主には私兵もいる。多分、騎士団が敵に回った時の事も考えて雇ったんだろうね…。」

エリスの言葉にローゼンはさらに続ける。

「正直、人数では圧倒的に不利だ。紅の林檎亭の冒険者達も何処までが協力できるかもわからない。」

「そうなんだよねー…」

ドロシーは考え込んだ。

「だから」とローゼンは続け、ヴェルデーアが口を開く。

「今回から、あたし達も戦う事に決めたわけ。」

そういうと、ヴェルデーアはローゼンに作ってもらった弓を取り出した。

「俺も、この新しく作った自慢の品があれば戦える。」

ローゼンもそう言うと、長い斧を取り出した。

「さて、戦う時の武器はこれで良いとして…どうやって、領主の賄賂と、あの兄妹の悪行を公にするかだね…。」

エリスは考え込む。

「あの…すまないが」

ふいに女の声がして、4人は振り返る。

そこに、鎧を身に纏った女性がいた。歳は20代くらいだが、女性としては背が高い。金髪を短く切ったスポーツ刈りが特徴的な凛とした表情と雰囲気で、いかにも女騎士という雰囲気だった。

「君達は路地裏で領主が騎士に賄賂を渡す現場を見ていたね?」

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