少年は女装させられる
さて昨日、クルスがヴェルデ―アの薬屋の風呂場に連れていかれた時のことだが、マーシャとスズネは服を脱いで、クルスが身にまとっていたボロ布も脱がして風呂場に入ると、まずクルスの身体と長く伸ばさせられた髪を洗う事にした。
「ちょっと、何すんだよ!!」
「まず、汚れている身体を洗ってあげるからねー」
クルスにそう優しく語り掛けたスズネは、クルスを風呂場内の椅子に座らせるとシャワーと石鹸でクルスの身体を洗っていく。
スズネがクルスの身体の汚れを落としたところでスズネがある事に気づいた。
「この子…思ったよりも、身体が全体的に細いし、肩幅も狭い。髪長くなった今では、ついてなかったら、完全に女の子かも。」
スズネのその言葉にマーシャも反応する。
「本当ですねー、思ったより女の子みたいな綺麗な顔だし…」
その言葉に赤面するクルス。
「や…やめろよ、僕は男だぞ、こんな女みたいな長い髪、早くバッサリ切りたいんだよ!!」
「んー…クルスちゃん的に、洗うのが面倒だったらそれでもよかったんですけれど…ここまで、可愛いとそんな気ももうないですねー」
「な…!?」
「じゃあ、髪を洗ってあげますからねー。その内、自分でもできるように頑張ってくださいねー」
「あっ…ちょっ…!!」
マーシャに長く伸ばせられた髪をシャンプーされるクルス。
リンスも使ったうえで、薬で伸ばしっぱなしだったクルスの長髪は本当の女の子のようなサラサラのロングヘアになった。
「あーん!!男の娘みたいで可愛いじゃないですかー!!」
「あっ…ちょっ…!?」
クルスの愛らしい姿を喜ぶマーシャに抱き着かれて、もがくクルス。
そして、身体にマーシャの柔らかい胸が触れてクルスは可愛くなった自分が男である証拠が立ってしまった。
(よくみたら、この金髪のシスターも、栗毛の武闘家もすごくスタイル良い…)
男である証拠が立ったまま、赤面して硬直していたクルスだったが、抱きしめるマーシャを振り払い、言う。
「もう、やめろよ!!僕は男だぞ!!」
「可愛ければ、男の子でも、女の子でも関係ありませーん」
笑顔でマーシャに突き返されてしまう。
「さ、湯船に入るよ。キミも髪長くなっちゃったから、纏めるよ。いつかは自分でやってよね」
マーシャが自身の髪を纏めて、スズネがクルスの髪を纏め、湯船に入る3人だが、クルスはスタイルの良い年上の女性二人と一緒に風呂に入ってしまって、気が気でなかった。
(うう…12年生きていて、こんな事初めてで…)
クルスは顔は夕日のように真っ赤、男である証拠が立ったまま恥ずかしさに悶えていた。
「ところでさー」
「はいっ!?」
スズネの不意の言葉にクルスは素っ頓狂な声を上げてしまう。
「あんた、どうして孤児になって、仲間と盗みを働いていた訳?」
スズネの質問にクルスは神妙な顔になる。
「まず、僕に性なんてものはない。ただのクルスだよ」
「「な!?」」
驚くマーシャとスズネ。
「僕の両親は身分違いの恋の結果、実家から廃嫡された貴族だったと姉さんは言っていた。僕が物心つく頃には、2人とももう死んでいたけれどね。だから、僕に名乗る性は無い。」
「お姉さんがいるのですか?」
マーシャが質問する。
「…正確にはいたと言った方が正しいね。最初は僕の姉さんがあのグループのリーダーだったんだよ。でも、あの劣悪なスラムの環境で死んでしまったよ。」
「そう、ですか…」
神妙な顔をしたマーシャは祈りをささげた。
「でも、何で盗みを?」
このスズネの質問にクルスは、
「そうしないと生きていけなかったからだよ!!」
怒鳴り散らすクルスに動じないスズネは、こう質問する。
「働くという選択は考えなかったのかい?」
「それも考えたが、スラムの汚いガキなんて、何処も雇わないよ」
諦観したようなクルスにマーシャは、
「つまり働く場所があればいいんですね?」
「まあ、そうだけれど…」
「丁度、あなたに良い話があるんです。その可愛さならきっと…」
そして、風呂から上がった後、全裸のクルスに与えられたのは…
「ちょっ…なんで女物の下着なんだよ!?僕が元々つけていた布は!?」
「ああ、あれもう汚過ぎたら、近所のリサイクルボックスにポイしてきた」
風呂場でエリス共々、待ち構えていたドロシーはそう答えた。
クルスはドロシーに無理矢理女物のフリフリの柔らかな無地に赤いリボンが付いた下着を下半身に穿かさせられて赤面している。
「ここ、ヴェルデ―アの店舗兼自宅だから、女物の服しかない。ちなみに、それもヴェルデ―アが子供の頃の下着で、この服もヴェルデ―アの子供時代の物だよ。」
ドロシーがそう言って指さしたのは、エリスが持っているフリフリワンピースだった。
「え!?これを着ろと!?」
クルスはこれを自分が着せられるのかと赤面する。
「さーて…と…」
ドロシーがそう言うと、クルスは無理矢理鏡の前に座らさせられる。
エリスがヴェルデ―アの子供時代の服をクルスに着せると、マーシャがクルスの髪を梳いて、スズネがクルスの髪をセットする。
「うん!!可愛いじゃない!!」
「あ…」
スズネが可愛いという自分の姿を鏡で見ると、クルスの姿は大きな赤いリボンでツインテールを結んだ、フリフリワンピースの男の娘になっていた。
「確かに可愛い…」
「でしょ!?」
スズネのその言葉にクルスは、
「…って、自分に見とれてどうするんだよ、僕は…」
と、肩を落とした。
そして、5人は居間に戻るとヴェルデ―アは1人で居間にいた。エアルとサムソンとローゼンは見当たらない。
ドロシーとエリスに連れられて、テーブルに座らされたクルスの目の前には、エリスとドロシーが有り合わせの食材で作った、羊の肉やニワトリの卵など色とりどりの食材が米に入ったチャーハンと、人参や玉葱などが入った野菜のスープ、果物のジュースなどの料理が置かれていた。
「さ、ドロシーとエリスが作った食事、食べなよ。」
そうクルスに語り掛けるヴェルデ―ア。
「施しのつもり?」
「そうだよ。後、食べ物を粗末にしたら、シめるからね?」
クルスの言葉にそう笑顔で返すヴェルデ―アに気おされたクルスは、エリスに渡された木のスプーンでたどたどしく出された食事を食べる。
そのお味は…
「おいしい…」
「でしょ!?前に、あたしの故郷の村を訪れたピオニーって人が言っていた事なんだけれどさ、鍛冶で作る武器も、料理も作る人の人間性が出るから、愛情のある人の料理は美味しいんだよ!!」
クルスの感想に笑顔で大声をあげるドロシー。
そして、クルスが料理を食べ終えた頃にエアルとサムソンとローゼンが戻ってきた。
「お!!予想以上に可愛いじゃないか!!クルス!!」
そう笑顔で叫ぶローゼン。
「自分でそう思うけれどさ…」
複雑そうなクルス。
「さて、クルス。僕達は今、ひとっ走り行って、紅の林檎亭でちょっと交渉してきたんだ。まず、君の仲間達をみんな集めてくれるかな?」
サムソンはそう笑顔で語り掛けた。
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