闇の者達は本気で排除する気だ

ある日、エアルとマーシャが部屋から出て、くれない林檎りんご亭の何時もの食堂を見渡すと、冒険者達がざわついていた。

「一体、何があっ…!?」

近づきながら、エアルがそこまで言いかけた所で、数名の冒険者が血を流すほどの重傷を負っていて他の冒険者達の手当てを受けている事に気づく。

マーシャの治癒の神術と、サムソンと共に遅れて降りてきたスズネの気功で冒険者達の傷を癒しながら、エアルとサムソンは負傷していた冒険者達から話を聞いた。

「一体何があった?」そう語り掛けるエアル。

「俺達のパーティは…闇の職人と闇の武闘家の逮捕に向かったんだが…待ち伏せされていて、返り討ちに遭ってこのざまだ。奴ら、自分達の中でも相当な手練れを招集したらしい。」

「相当な手練れを招集した!?一体何のために?」サムソンは闇の者達の意図が読めなかった。

「エアル、あいつらは本気でお前達のパーティを排除する気だ。」

「え!?」

「それは、私達が闇の職人と闇の武闘家が繋がっている証拠を見つけたからですか!?」

驚いた様子で聞くエアルとマーシャ。

「ああ。あと、あの人間の犯罪者を殺して回っている4人の女冒険者も狙われている。」

一連のやり取りを聞いていて、サムソンは気づいた。

彼らが無事ではないとはいえ、紅の林檎亭に生きて戻ってこれたのは運が良かったからとかではない。これは、自分達への罠だ。

あいつらはわざと返り討ちにした冒険者達に情報をらした上で逃がした。

闇の者達が、本気でエアルら8人を排除する気だと、こっちで証言させる為に。

「どこまでも卑劣なんだ、あいつらは!!」

本気で自分達を排除する為なら、手段は選ばない。全てに気づいた、サムソンは怒鳴り散らした。

「憤っている場合じゃないわよ、サムソン。落ち着いて」

「すまないスズネ…」

激昂するサムソンをスズネは冷静さを取り戻すよう諭す。

「それより、ルイーゼのパーティは…今何処に!?」

そう質問するスズネに朝から宿に居た冒険者達は答えた。

「ああ、確か…割と早朝に闇の者達の討伐に…」

エアル達は、彼女達の危機を確信した。

「…助けよう。」

そうエアルは呟いた。

「エアルさん!?」

驚くマーシャにエアルはこう答える。

「彼女達が誰に復讐したいのかは知らない。復讐は何も生まないとは言わないし、否定も肯定もしない。だけれど、彼女達がもし本当に復讐を成し遂げたいのであれば、今、闇の者達の罠に遭って死ぬべきではない筈だ。」

それにサムソンも共感する。

「確かにね。生きていれば目的を果たせるが、殺されてしまっては、それを果たせなくなる。」

「はい、そうですね。」

「そうよね。」

「そうだ!!その通りだ!!」

「助けよう!!俺達の仲間を!!」

マーシャとスズネのみならず、紅の林檎亭の冒険者達の多くがエアルに共感した。

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