第39話『いつかは考えなきゃいけないこと』

「はい次〜あぁ、なんだ高杉か」


「なんだってなんすか先生」


八月下旬、俺は三者面談を受けていた

俺が先生の向かい側に座ると

先生はまたか、と呟く

俺は苦笑しながら はい、と答える

俺の両親は共働きでまともに家にいない

今日もどうしてもやらなきゃいけない仕事があるらしい

なので親無しの面談なのである

実際、こういった学校イベントに

俺の両親は一度も参加していない

なので先生もまたか、などと呟くのだろう


「あーえっと、まぁとりあえず進めるぞ。お前確か就職希望だったよな」


「えぇまあ」


「なんで就職なんだ?お前の成績なら大学行けるだろ」


「いやーなんつぅか早く親元離れて少しぐらい楽させてやりてぇっていう感じっす」


「お前なぁ、工業商業系ならまだしもうちはただの進学校だぞ?そんなに就職先があるわけじゃねぇぞ」


先生が困った顔をしながら現実を突きつけてくる

やっぱだよなぁ・・・・いずれこうなるとは分かってても

実質何がしたいとかあるわけじゃねぇし

親父がおふくろの仕事どちらかをひきづければいいやって思ってたし

そんなこと思ってると先生が口を開く


「お前そういや神宮寺の結婚に乗り込んだ時どう思った?」


「えっと・・・・こんなに弱い人達が国守ってんだとか思いましたね。大分失礼ですけど」


「じゃあもう一つ。金華山の姉が誘拐されたときどう思った?」


「俺が守らなきゃって思いました」


そこまで言って先生が言いたいことが薄々わかった


「まさか俺に警備員になれと?」


「どっちかっていうと警察だな」


「警察・・・・?ま、まさか先生」


「そう、百華母に直談判する」


「いやいやいやいや!無理ですよ!しかもそれズルっぽくないですか!?」


「バレなきゃ問題ないんだよ」


「ダメでしょ!大問題ですよ!」


結局話は付かず、また次の日に持ち越された

俺は悩みながら学校を出ると

すれ違いに生徒会長が通った

そういや俺の次だったなこの人


「あら高杉君、就職先決まった?」


俺はせっかくなのでさっきの話をすると

神宮寺さんは嬉しそうな顔をする


「あら、最近警察の人たちが弱くて犯人捕まえられないってお母様が言ってたのよ、丁度良かったわ♪」


「いや、まだ決まったわけじゃ」


「知り合いだからとか助けてくれたとかお母様には通じないわ。ズルした感じにはならないだろうから大丈夫よ♪」


そこまで言ってから神宮寺さんは微笑む


「なら恋愛君とか雲母さんに相談してみたら?」


「そうだな・・・・そうしてみる」

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