ぺるそな@ハイドアンドシーク

脳内航海士

プロローグ かくれんぼ@もういいかい


◆ プロローグ かくれんぼ@もういいかい



 いつもの夢だった。


 幼い頃の記憶。

 何年前だったかは定かじゃないけど、まだかくれんぼという遊びを必死になって楽しめていた頃だ。


「もういいかい」

「もういいよ」

 遠くで、誰かのはしゃぐ声が聞こえる。


 家から少し離れたところにある公園だった。空には太陽が高く上っていた。

 鬼は誰で、一緒に遊んでいたのは誰で、どういう経緯でかくれんぼをすることになったんだっけ。

 いつも考えてはみるけど、思い出せない。これが実際にあったことなのか、それとも単なる空想の出来事をただ夢として見ているだけなのか、それさえ曖昧だ。

 まあ、そんなのはどうでもいい。

 かくれんぼなら、鬼に見つからなければいいだけだ。


「みいつけた」

 また遠くで声が聞こえた。

 まだ私が見つかる気配はない。


 昔から、かくれんぼには自信があった。

 隠れることも、隠すことも得意だった。

 声を出さないように。音を立てないように。絶対に見つからないように。改めて細心の注意を払う。

 どれくらい時間が経っただろう。日が傾きかけていた。

 いつの間にか、一緒に遊んでいた友達の声はおろか、足跡すらも聞こえなくなっていた。


 かくれんぼは、鬼から見つからないように身を隠すゲームだ。逃げ続けて、隠れ続けられる人が強い。

 このままずっと隠れていれば私の勝ち。下手に物音を立てなければ誰にも見つからない。そう思っていた。

 けど、ふと疑問が浮かんだ。

「勝ち」って何? 鬼は全員見つければ「勝ち」なのかもしれないけど、隠れるほうには「勝ち」ってあるの?

 そうして隠れ続けた結果、私は一人、公園に取り残されていた。


 そう、私は気づいちゃったんだ。

 誰にも見つからなかったら、ひとりぼっちになっちゃうことに。


 ──私の夢は、いつもここで終わる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る