10 [付録]「思考と行動が乖離した明晰夢」
[付録]夢の報告
「思考と行動が乖離した明晰夢」
ぼくは滞在先の(ホテルの?)部屋を急いで出ようとしている。すぐに出なければ、列車の時刻に間に合わない。しかし、ぼくは手間取っている。一緒にいた友人たちは、ぼくを置いて、部屋を出て行こうとしている。ベッドの上には、私物が散乱しており、すぐには出られそうにない。リモコンを操作して、エアコンの電源を切ろうとするが、まったく反応しない。
ぼくは、もう間に合わないと思っている。ぼくは、あきらめてもかまわないかと自問する。どういう不利益があるのか。すると、不意に、これは夢だから、間に合わせる必要がないと気づく。夢の中のぼくは、こうつぶやく。「そうか、これは夢なのか……。」口では言いつつも、ぼくはまだリモコンを操作して、エアコンを消そうとしている。古びたリモコンはぜんぜん反応しない。ぼくは、これは夢なんだからそんなことしなくていいと思っており、暖房を消さないと気が済まない自分を、可笑しく思っている。
急にばからしくなって、リモコンを床に投げ捨てる。ぼくは苦笑して、吐き捨てるように言う。「ばかげてる。」そして、せっかくの明晰夢なのだから、何か意味のあることをするべきだと気づく。手始めに、部屋の様子を少しだけ観察してみると、物が散乱した部屋は、細部まで丁寧に作り込まれているように見える。やはり、リアルな世界なのだと感じる。
それから、ぼくは部屋を出ようとするが、これから何をするつもりか、あらかじめ決めておこうと思い、扉の前でいったん立ち止まる。『そうだ。女を求めに行こう。』急に、なぜかそういう衝動に駆られた。しかし、求めるものがうまく得られるだろうか。少し不安に感じつつ、ぼくは扉を開けた。
扉の外には、別の部屋があり、幾人かの男女がいた。すべて西洋人であった。ぼくは不服に思い、日本人を探すが、見当たらない。日本人を見つけるには、さらに別の場所に移動しなければならないと思う。しかし、そのようにすれば、ぼくの企図は未遂に終わるかもしれない。あまりうろちょろしないほうがいい。この部屋にとどまるのが得策だと思う。
すると、部屋の奥から、一人の娼婦が、男に連れられてやってきた。娼婦は、ぼくのすぐ前に来て、座った。ぼくが娼婦の両腕をつかむと、確かにつかんでいるという感覚があった。ぼくは、満足だと思う。やはり、単なる空想とは次元がちがうのだということが確かめられて、ぼくは満足している。ぼくは、女を求めて得られたことより、むしろそのことを喜んでいる。
メモ
この夢と、きみの仮説との関連性について、ぼくは頭を悩ませている。きみの意見も聞きたい。
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