第292話

 ホテルから出る時に、一人だと危険ですよみたいな事を言われたが大丈夫ですよと微笑んで出てきた。フロントの方がすごく心配していたがそこまで一顧客にたいして感情を持つのは良くないと思う。


 ――そして


 現在、俺は一人で町を散策していた。それと言うのも俺を護衛していたアルゴ公国の騎士団は、城塞倍部への入場を禁止された為、別ルートから進んで次の町がカルカで待ち合わせる事にしたのだ。

 ちなみに俺達を案内してきたイスカの部隊のメンバーは領主館に俺達のことを伝えた後に兵宿舎に戻ると言っていた。

 衛星都市ルゼンドから護衛してきた兵士達には、ルゼンドの復興には貴方達の力が必要です。戻ってあげてくださいねと言ったらさすがですとか感激していた。

 そんな事もあり今、町にいるのは俺とレオナだけであって俺以外の人間が聖女様職をしてくれてるからとっても自由なのだ。


「それにしても、イスカが言うことを裏付けるように人通りが疎らだな……」

 市場を見ても活気もないし置かれてる食材もあまり質がいいとは思えないし体調が悪そうな人も結構いるしこれで本当に聖女はきちんと仕事をしてるのだろうか?

 これは、お金を稼ぐついでに少し調べたほうが良いかも知れないな。


 ――カランカラーン


 と軽快な音を立てた錫の音が、一人の人間が冒険者ギルドに入ったことをギルド職員に伝えた。冒険者ギルドカウンターに座っていた職員は入ってきた人影を見てその動きを止めた。

 それは冒険者ギルドに居た冒険者も同じであった。

 

 神が作り出したとしか思えない程の美貌の中に存在する気弱そうな大きな黒い瞳はどこか庇護欲をそそられる。そして腰まで伸ばしてる漆黒の髪は日の光を適度に吸収し光を放ってる事でどこか神秘性を漂わせている女性になりかけの少女の様相をより一層引き立てている。

 これでドレスなどを着ていたら、聖女様や大国のお姫様と勘違いをされてしまうだろう。

 ただ、少女が纏っているのは機能性重視な防具であった為そこがより一層、少女の魅力と謎を強調していたのを本人だけは理解していなかった。

 

「ここが冒険者ギルドか……」

 初めて別の町の冒険者ギルドに来てみたが他所とはあまり代わり映えはないな。それよりもまずは仕事だな……、クエストボードを見ていくと薬草関係の採取の仕事はないがウリボウの討伐クエストと言うのを見つけた。ウリボウってあれだよな?たしか、イノシシの子供みたいな奴。

 クエストボードに貼ってある内容をもう一度見ていくが、ゴブリンとかオークとかトロールとかそういう人間系な討伐ばかりしか無かった、


「ふむ……」

 ウリボウ討伐クエストの紙をもう一度見る。


名前 ウリボウ。イノシシの子供1匹

討伐報酬 金貨1400枚

Sパーティ推奨


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