第232話

なるほど。思ったより早いな……。陸路を使っても戦争の準備と物資の搬送に兵の手配などを含めると3ヶ月は掛かると見ていたがわずか一ヶ月で纏めてしまうとは……。


「ずいぶんお早い到着なのですね?」


俺は、遠まわしに情報収集をするためにカナリアに話をするが


「はい。元々聖女アリア様と教会の枢機卿より魔法帝国ジールを攻めるとお達しが出ていたらしくその軍を動かしたと王宮内で噂になっておりました」


「そうなのですか。ですが早くなる分に越した事はありませんね」


つまりセイレーン連邦はかなり前から周到に戦争の準備をしていた事になる。しかも教会主導とかどんな大義名分を持って攻めようとしていたのだろう。ただ、枢機卿が戦争を引き起こした原因と言うことはかなり危険だな。こちらの情報収集をしてきてる可能性が非常に高くなってきた。これは下手に言質が取られる前に何とかしたほうがいいかもな。


それから3ヶ月ほどが経過した。

座天使サマエルとの戦況は一進一退状態であり俺の加護を得ていないアルゴ公国以外の国の騎士団は聖女と教会関係者達の治癒魔術で怪我を治してもらっているようであった。よく聖女達の魔法師達が魔力が足りてるなと感心してしまう。いくらアルゴ公国の騎士団が優秀であってもそう魔力が持つものなのだろうか?


その理由はすぐに判明する事となる。


「クサナギ様!商人仲間から聞いたのですが、教会はとんでもない事を行っているようです」


俺が町の人達に治療を施していると商人のユーカスがテントの中に足を踏み入れてきた。様子からかなり慌てているのが分かる。


「どうかしたのですか?」


「はい」


ふむ。そろそろ仕掛けてくると思っていたが本当に仕掛けてきたな。さて何を仕掛けてきたのか……。


「各国の軍の治療に当てる魔法師をここに集めているのです」


まあ絶対的、魔力量が足りないのだがそれは利にかなってると思うが。


「そうなのですか?」


「はい、しかも各国の王都、衛星都市、町や村すべての治療魔法師を強制召集しここに集めているのです」


―――ガタッ。


思わず俺は椅子から立ち上がった。


「それは各国の王宮に勤めてる治療魔法師も含んでいるのですか?」


俺の言葉にユーカスはそんな事は無いと答えてきた。つまり王族貴族以外の民を見る全ての治療魔法師をここの維持のためだけに集めたという事になる。つまり平民を診る治療魔法師が他の国々にはいないと言う事だ。そしてここまでは移動に3ヶ月もかかる国もある。往復だと半年近い。


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