第221話

カナリアと呼ばれた王女さんは、どうせ直らないのだろうと寂しげな眼差しのまま仮面を外して素顔をこちらへ見せてきた。頬には裂傷の後があり状態からかなり古い傷のように見受けられる。


「これは何時頃の傷でしょうか?」


「幼少期の頃に園遊会でな……それより直せるのか?直せないのか?」


俺は鑑定をしつつ、彼女が殺人系スキルを保有していないかを確認する。


そして……


「私の力はあくまでもリメイラール様の力を自身の魔力を呼び水として使うだけです。怪我が治るかどうかはその方の普段の行いです」


俺は手を翳しヒールと唱える。とたんに王女カナリアの顔の傷があっという間に消えてなくなる。


「―――!?カナリアよ……」


「お父様?どうかなさったのですか?」


「ルベルトよ、鏡をもてー!」


「はっ!お持ちいたしました。」


ルベルトと呼ばれた執事服の男性はすぐに鏡を馬車から取ってきて王女カナリアに差し出す。鏡を受け取った王女カナリアが鏡を見て驚きのあまりその動きを止めていた。しばらくすると実感が沸いてきたのだろう。目の涙をためて


「お、お父様……わ、私……」


とシュタイン公国陛下に抱きついて涙を流し始めた。シュタイン公国陛下も何度も頷きしばらく王女カナリアさんをあやした後に俺に視線を向けてきた。


「これは失礼……無礼な言い方をして申し訳なかった。貴女を試すような事をしたことを謝罪する。娘の傷を治してくれたこのお礼どうすればいいだろうか?」


「全ては普段から品性公平に善良な行動をしていたからだと存じあげます。リメイラール様はカナリア様の善良なる行動を見ており加護を与えてくれただけに過ぎません。私の力ではありません」


俺の謙虚な言葉にシュタイン公国陛下は驚いているが俺もまさか王家相手に恩が売れるとは思っていなかったので想定外であった。きっと近衛兵を配属したのは娘を治療したいと願う親心が少しでも可能性があるなら俺を逃がさないとした結果なのだろう。


―――まぁそれならそれで。


「差し支えなければ、この国の騎士の方々は今、精一杯国を守るために戦っていらっしゃいます。騎士や冒険者の方々に激励のお言葉でも頂ければ士気が上がると思います」


俺の言葉にシュタイン公国陛下は偉く感激したようで仕切りに頷いている。


「なるほど、これが本来の聖職者の姿なのだな。今までは教会が何かと寄進をせがんで着ていたがそうか……これが聖女なのか。うむ……わかった。貴女のその純真な願いと思いに私も答えよう」


シュタイン公国陛下は周囲の騎士達に指示を出してるようだが、そろそろ治療に戻らないとほかの人の迷惑になってしまう。


「それではシュタイン公国陛下様、カナリア様。私はまだ待って頂いております方の治療がありますのでこれで失礼いたします」


それだけ俺は告げると彼らから離れた。クサナギ様素敵!とかカナリア様から聞こえたがそれはスルーしよう。女同士でそういうのはやめてほしい。





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