勇者「その武器重くねぇの？」

第32話

勇者「ぐはっ……」

魔王「……っ」

ﾄﾞｻｯ

魔法使い「勇者！」

鎧騎士「魔王様！」

魔法使い「勇者、勇者っ、勇者っ！」

勇者「げほっ、ごほっ……おい、揺らすな……」

僧侶「……治癒魔法」

勇者「ありがとう、僧侶」

魔法使い「やったね、勇者！やったね……！」

勇者「ぐ、ぐるじぃ……」

鎧騎士「ご無事ですか、魔王様！」

魔王「あぁ。勝負はあったが、な」

鎧騎士「……かくなる上は私が」

魔王「これ以上、私に恥を晒せというのか？」

鎧騎士「で、ですが……」

勇者「勝負あり、だな」

魔王「……あぁ、勝負ありだ」

鎧騎士「……」ｷｯ

魔王「……まさか負けるとはな」

勇者「声援一人分の力かもしれん」

魔王「……なるほど、それは大きな差だ」

鎧騎士「……魔王様」

魔王「これで敗者は私、勝者はお前だ。この命好きにするがいい」

鎧騎士「……っ！」

勇者「ああ、そうだなぁ……」

鎧騎士「ゆ、勇者っ！」

勇者「うおっ、なんだっ！？」

魔法使い「……っ」

鎧騎士「この通り、武器は捨てた。抗う気はもう無い」

鎧騎士「だから、頼む……私はどうなってもいい、魔王様の命だけは……！」

勇者「……あのなぁ、さっきからその緊迫ムードやってるの、お前だけだぞ」

僧侶「……うん、うん」

鎧騎士「なん……だと……！？」

魔王「私は本気だったがな」

勇者「おい、話をややこしくしようとするなこれ以上」

魔王「ククッ……」

勇者「そもそも、魔王が死んだら勇者も死んじまうらしいからな。そんなんゴメンだ」

鎧騎士「……おかしな奴らだな、お前ら」

考古学者「おや、もう終わっていましたか」

氷幼女「たわけ、降ろさんかコラ！」

考古学者「こらこら、暴れないでください」

勇者「よかった、無事だったか」

氷幼女「誰に物を言っておる、余裕じゃったわ」

考古学者「……その様子だと、どうやら負けてしまったようですね」

魔法使い「いや、勇者が……」

魔王「あぁ、私の完敗だ。火山王」

鎧騎士「貴様、今までどこで遊んでいた！」

勇者「……は？」

魔法使い「……え？」

僧侶「……？？」

火山王「私は魔王の部下でもなければ、あなたの部下ではありませんよ。鎧騎士」

勇者「お前、魔族だったのか」

氷幼女「なんじゃお主ら、気付いておらんかったのか」

魔法使い「まぁ、ちょっと怪しいなって場面は何度かあったけど……」

僧侶「……こく」

火山王「別に隠していたつもりはないんですが、聞かれませんでしたし」

鎧騎士「貴様がこいつらをここへ連れてきたのか！」

魔王「もういいだろう、鎧騎士」

鎧騎士「……魔王様のご命令とあれば」

火山王「それで、これからどうなさるおつもりで？」

勇者「あぁ、話の途中だった」

勇者「魔王と勇者の呪い……お前にも解き方は分からないのか？」

魔王「分かればとっくにやっている」

勇者「そりゃそうか……」

魔王「……何だ、その手は」

勇者「分からないなら探しに行くしかないだろ？」

魔王「私に着いてこい、と？」

勇者「そ、負けたほうはいう事を聞く約束だ」

魔王「……敗者に拒否権はないな」

勇者「おう」

火山王『やはり、面白い』

氷幼女『とんだ甘ちゃんじゃな』

火山王『あなたが言います？それ』

氷幼女『うっさいわ』

鎧騎士「ま、魔王様が行かれるなら私も！」

魔王「お前には私の留守を任せようと思っていたのだが……」

鎧騎士「……」

魔王「……火山王、私の留守を頼めるか」

火山王「えぇ、問題ありませんよ。私はこの山を離れる気はありませんから」

氷幼女『そうなのか？』

火山王『監視する者がいないと、厄介なことになりかねませんから』

氷幼女『……』

氷幼女「わらわもここに残る。安心して行ってこい」

火山王『あなたならそう言うと思いましたよ』

氷幼女『なんか言ったか？』

火山王『いえ、何も』

勇者「よし、話は纏まったな」

魔法使い「二人とはここでお別れかー」

僧侶「……残念」

氷幼女「なに、今生の別れと言うわけでもあるまいて」

火山王「土産話、期待しておきますよ」

勇者「よし、それじゃ……」

魔法使い「魔王退治改め、呪いを解く方法を探す旅、出発だね！」

僧侶「……出発」

勇者「……それ、全部俺の台詞……」

魔王「……鎧騎士」

鎧騎士「何でしょう、魔王様」

魔王「お前にはいつも苦労を掛けるな」

鎧騎士「苦労など……わ、私は魔王様のためならば」

勇者「おい、二人とも早く行くぞー」

魔王「あぁ、すぐ行く」

鎧騎士「……あぅ」

魔法使い「……勇者のとーへんぼく」

僧侶「……おじゃまむし」

勇者「な、なんだそりゃ？」