第9話

村長「いやー、この村にもやっと平和が!」


村長「本当にありがとうございます、勇者様!」


魔法使い「いやー、その……ははは」


村長「魔王が復活してから間もなくして現れたあの忌々しい女王め……」


村長「魔物に脅かされる日々ももう終わりですじゃ!」


魔法使い(どんどん尾ひれがついていってるよ……なんか勇者様にされてるし)


魔法使い『僧侶ちゃん!なんで黙ってんのさ』


僧侶『……都合がいい、から?』


魔法使い『い、意外と黒いね……まぁ、そうだけどさ』


村長「さ、さ、ゆっくりしていってください!」


魔法使い「え、でも……ボクたちお金……」


町長「勇者様からお金なんてとんでもない!もちろん、ただでいいですよ」


僧侶「……」(……少し、心配)


魔法使い「……」(勇者探しにいきたいけど……体力限界だしなぁ……)


僧侶「……よろこんで」(……でも、休みたい)


魔法使い「感謝します、村長さん!」(ま、勇者なら大丈夫か……)




勇者「……なんだか、もの凄い邪険にされたのを感じた」


氷女王「む、どうかしたのか?」


勇者「いや、なんでもない」


勇者「しかしなー……あんた本当に強いんだな」


魔物「ガガア」「ギャギイ」「グゲゴゴ」


勇者「みんな整列して跪いてる……」


氷女王「誇り高き女王のわらわに、下賎の者は顔を向けるだけで許されん」


勇者「いやまぁ、今は……」ピシッ「おうふ」


氷女王「だ、だまれい!そのことを知られたらお主も危ういのだぞ……!」


氷女王「このものたちはわらわの力で押さえつけてはおるが、本来は獰猛な魔物なのじゃからな」


勇者「……ふむ?」


勇者(……なんか引っかかる言い方だな)


勇者「なぁ、お前さ」


氷女王「なんだ?」


勇者「周りの魔物抑えるために女王やってんの?」


氷女王「……まぁ、結果的にはそうなっておる」


勇者「いい奴だな」


氷女王「……は?」


勇者「だってお前がいなかったらこいつら暴れだすんだろ?」


氷女王「……この者達が暴れると、生贄まで殺してしまうじゃろうが」


勇者「いや、理由はどうにせよさ……」


氷女王「うるさいうるさいっ」


氷女王(こいつ……なんだと言うのだ、さっきから)


氷女王(わらわもわらわじゃ……さっきから、らしくない、らしくないぞ)



魔法使い「……やっぱり」


僧侶「……心配」


魔法使い「死なない、とは言っても……閉じ込められたりしたらアウトだしなぁ」


魔法使い「逆に死なないってことが、さらに悪い方向に思考を向けちゃうよ」


僧侶「……うん」


魔法使い(無事でいてね、勇者……)



勇者「なぁ、どんぐらいしたら着くんだ?」


氷女王「後もう少しだから辛抱しろ、軟弱者」


勇者(あいつらの手がかりが少しでも見つかればいいんだがな……)


勇者(ん?というか……こいつを連れて行って大丈夫なのだろうか?)


勇者「なぁ、あんたさ。村の人達に顔とか見られてる?」


氷女王「まぁ……数回は赴いたことがあるが」


氷女王「はっきりと見られてるかは知らん」


勇者(うーん、微妙だな……まぁいいか、その辺はおいおいな)




魔法使い「……やっぱり、落ち着いてられない!」


僧侶「……行く?」


魔法使い「心配、だしね……見当はついてないけど、探してればいつか見つかるさ!」


僧侶「……だね」スク


村人たち「わー わー わー」


魔法使い「ん……?なんか外が騒がしいね」


村長「そんな……氷の女王め……生きておったのか!」


村人A「生贄を取り返しにきたのか!」


村人B「勇者様が倒してくださったのではなかったのか?」


村人C「終わりだ……報復に来たんだ……」



勇者「おいおい、随分な怖がられようだな」


氷女王「……まぁ、こんなものであろう」



魔法使い「騒がしいから外に出てみれば……」


村人たち「わいわい がやがや」


僧侶「……勇者」


村長「隣の男は一体誰じゃ……人間に見えるが、女王の手下か?」


村人D「魔物に手を貸すとは、なんて奴だ!」


魔法使い「えーと……あれが女王なの?まさか」


魔法使い「なんで勇者と一緒にいるのさ……」


村長「おお!勇者様!」


村人たち「そうだ、勇者様……今は勇者様がいるんだ!」


勇者「ん?勇者は俺のはずだが?」


魔法使い「あちゃー、見つかっちゃったかぁ……」


僧侶「……行こう」


勇者「おー、魔法使い!無事だったのか、お前ら。心配したぞ」


魔法使い「いや、それはこっちの台詞だよ……」


僧侶「……説明して」



村人たち『勇者様が何か話しておられる……なぜお倒しになられぬのだ?』ヒソヒソ


勇者「とまぁ、そういうわけなんだ」


魔法使い「……なるほど、ね」


僧侶「……把握」


魔法使い「言いたいことは色々あるけど……今はそんな場合じゃないんだよね?」


氷女王「これが貴様の仲間か?おなごばかりではないか」


魔法使い「……女の子だけど、今の君の頭を潰すぐらいの力はあるよ?」


氷女王「や、やめぬかっ!」


村人たち『さすが勇者さまだ……あの氷女王が恐れおののいている……』ヒソヒソ



勇者「そう喧嘩腰になるなって……これから一緒に旅すんだから」


魔法使い「え?」 僧侶「……え?」


魔法使い「ここで退治しちゃうんじゃないの?」


勇者「いやー、なんかこいつそんな悪い奴じゃないんだよな」


氷女王(……)


勇者「魔物事情に詳しいやつがいれば一石二鳥だしな」


魔法使い「だからって……魔物と一緒に旅なんて、聞いたことないよ!」



村長「えーと、勇者様……?」


魔法使い「へ?」


村長「先ほどから何を話しておるのですか?その者は一体……」


魔法使い「えーと、あの、そのだね」


勇者「どうも、勇者です。氷の女王は無害にしたんで安心していいですよ」


村長「勇者……?無害にしたとは、一体……?」



村長「失礼致しました!あなたが本当の勇者様でしたか」


勇者「あー、まぁ。そんな感じです」


氷女王「……くっ、下賤な者どもがわらわに枷などを……」


村長「こうも容易く捕らえられるとは……無害になったとは本当だったのですね」


氷女王「人間どもめ……わらわにこのようなことをして許されるとでも思っているのか……」


村長「黙れ!貴様に今まで殺されたもの恨み……」


氷女王「……!!!」


勇者「あー、村長さん?ちょい待ちちょい待ち」


村長「……?」


勇者「お前さ、本当に村の人殺してたの?」


氷女王「……」


勇者「黙ってたらこのまま死ぬぞ?いいのか、それで」


氷女王「……村の者は、殺してなどおらん」


村長「な、なんじゃとっ!?」


氷女王「歯向かってきたものたちは、わらわの魔力で氷の牢獄に眠らせておる」


氷女王「……誰一人、死んでなどおらん」


魔法使い「えっ!?」


僧侶「……」


勇者(やっぱりか)


村長「な……何をバカな!この期に及んでたばかりおる気か!」


勇者「まぁまぁ、村長さん落ち着いて……」


勇者「……論より証拠だよな、やっぱ」


勇者「ここに全員連れてきてもらえるか?今までの人達全員」


氷女王「……ふん。後悔することになっても知らぬぞ?」


勇者「んー……後悔すんのは俺じゃないと思うから構わない」


魔法使い『ねぇ、勇者!どういうことなんだよ!』ボソボソ


僧侶『……』


勇者『まぁ、見てりゃ分かるんじゃないかね。後、戦う準備しとけ』


氷女王(こやつ……何を考えているのだ、まったく)



少女達「……あれ?村だー」タタタッ


村人A「おお、無事だったか娘よ!」


村人B「本当に……本当に生きてたんだ!やったー!」


捕虜A「村だ……やっと帰ってこれたんだ……」


村人C「男達も無事だぞ!」


村長「ど、どういうことなんじゃ……」


氷女王「……ふん」

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