〇に引かれて善光寺参りな日 ③-3-2

「え。……と。宝具? なんですかそれは。そんなものどこに?」


「何を言っているんだマスター! エリーを召還した時に異界から神器を取り寄せたではないか」


「あぁ、宝具を持ってるのぉ? マスターぁって、実はすごいんだぁ?」


「いや、なにがなんだか? そんなものあったかなぁ」


「ちょっと待ってろ! 私が取ってくるぞ! いいな?!」


そういってマキちゃんは部屋の外へ。階段を上る音がしたので行先は倉庫のようだ。


そうこうしているうちにモニターの向こうでは、エリーちゃんに渡した武装ドローンが羽根つきトカゲとエンゲージ。


なんかスティンガーミサイルみたいなのを発射していたんだけど目の錯覚か。私は目をこする。


もう一度モニターを注視すると、爆炎の中をトカゲとドローンが飛び回っていた。


うん。今一斉にドローンからハイドラ70ロケット弾みたいなのが放たれたように見えたよ? すぐにお空が真っ白になってよく見えなくなったけど。


視界不良の中偵察ドローンが拾ってくる情報は、今やエリーちゃんドローンの固定武装であるM230 ・30mmチェーンガンの発砲音のみ。正直モニターじゃ何が起こっているのかまるで分らない状況です。


――相手生き物じゃないの? あれだけの攻撃で死なないの? 特撮怪獣かなにかか?


「来いマスター! 屋根からあれを迎え撃つぞ」


「はい?」


「ほらほらぁ、はやくはやくぅ」


マキちゃんに呼ばれエリーちゃんに背中を押され私は半強制的に移動させられる。

着いた先は倉庫の上、屋上だ。


「さぁこれを! マスター! 見せ場だぞ! 決めてくれ」


手渡されたのは人形ドールを買った時に一緒に買った大人のお遊び用グッズの中のひとつ。確か名前を御手杵とかいうエッチなポールダンスに使うちょっとボコボコした長い棒だ。アレを刺激する用に凄く緻密な細工が棒全面に入っていて、そのせいで無駄に芸術性の高い見た目になっている。


「決めるって、これをどうするんです?」


先端が地面に刺せるよう槍の穂先みたいになっている棒を構えて、ノリで歌舞伎のようなポーズをとってみると。


「なんだそのカッコいいポーズは。マスター、確かに決まってはいるが、その体勢からどうやって投擲するのだ?」


「とうてき? 投げるんですか?」


投げるってなんだ。これ余裕で二メートル超えているのだけれども。無理だよ。そもそもどれだけ距離が離れていると思っているのか。絶対にあんなところまで届くわけがない。そう思っていると。


「大丈夫だよぉ? 超越宝具キュリオは主人の思う通りの結果を出すからぁ。マスターぁ、投げてみてぇ」


「いや、投げるって、下に落ちると思うんですが……まぁ、じゃあ、投げてみます?」


「安心しろマスター! 詔勅宣令エグゼデイマスを下せば勝手に飛ぶ」


「括れ、て言って投げればいいよマスターぁ」


「……はぁ」


私はやり投げのポーズで飛翔体トカゲを確認。煙の中にちらりと見えるタツノオトシゴに羽と足が生えたようなどうやって浮いていられているのかわからない存在を見据える。

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