メッシーアッシーな日②-3-3
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇リンダ視点◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「実は私は、この身なりから察していたかもしれませんが、マウントブック家の王女なのです」
思ったより頭がよくないのかもしれないと感じ私は自分の身分を明かした。
「はぁ。さようですか」
しかし反応は芳しくない。
ホモと言えど実はそんなに賢くなかった?
「……私が王都に戻れれば、恩賞も与えられるでしょう」
なのでもう少し具体的に言ってみる。褒美が欲しければ取りに来い、私を送れと。
「あ、いえ、そういうのは大丈夫です」
「はい? え。大丈夫、とは……?」
「私が勝手にお助けしただけですので恩賞などのお気遣いは無用でお願いします」
「えっ(?)と……」
このオーク、自分が何を言っているかわかっているのだろうか。
褒美をやると言っているのにそれを拒否するなんて。
もしかして私の言葉を信じていない?
「それでは、金銭がいらないというのであれば勲章でも職でも、なんでしたら騎士爵位でも……」
「いえいえ、お気持ちだけ頂戴いたします。それらは私には分不相応なものですので。姫様からの感謝のお気持ちだけで私には十分でございます」
「あの、そういう訳には……ぜひ王都に戻って然るべき褒美を――」
駄目だ。信用されてない。対価など払えないと思われている。
たぶん小娘だと舐められているんだ。オークのくせに。
どうしてくれよう。このオークを跪かせたい。
けれど今の私の手元には価値あるものがなにもない。お金も宝石も供の者に持たせていたのでここにはないのだ。
困った。
このままでは帰れない。それどころかこのオークが気を変えたら私は対価に孕み袋扱いされるかもしれない。どうしよう。
私が内心冷や汗をかいてこの窮地を切り抜けようと頭をフル回転させていると
「そうですか。そこまで言われては辞退するのも心苦しいですし、そういうことでしたら姫様、褒美の代わりとして、私に王都までの道を教えていただけませんでしょうか」
「え?」
「私はずっとこの森に棲んでおりましたので王都には行ったことがないのです。もし姫様がお嫌でなければ、王都までの道をお教えいただきたく思います。勿論乗り物も用意させていただきますので」
オークが折れた。
良かった。頭に血が巡って理解が今更ながら追いついたのね。時間差理解は頭のよくない人に多いと思うのだけどその辺はオークだし大目に見ましょう。そうよ。私を無事に城に返さなければ報酬は得られないの。それがわかれば十分。これで道中の私の安全は保障されたといえるだろう。
「まぁ! それはありがたい申し出です。えーっと、あなたのお名前をお伺いしても?」
王族たるもの市井を相手にわざわざ名前なんて呼ばないけれど、名前を呼んでやれば少しは特別感を得られるはずだ。程よく名前を呼んでやればやる気も出るに違いない。
なんといっても声をかけているのはこの私だ。姫の中でも美少女である私に特別扱いされて舞い上がらない男などこの地に存在しないのだから。
「小杉です」
「コスギ……わかりました。ではコスギ、宜しくお願いしますね」
コスギ?
変な名前だ。でも
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