メッシーアッシーな日②-3-1
◇◇◇◇リンダ視点◇◇◇◇◇◇
食事を終えた私は寝ることにした。
睡眠薬上等だ。犯すなら犯すがいい。
どのみち一人ではどうにもならない。オークがその気になれば私はいつでも犯されるだろう。女の身であの巨漢に抗えるとは思えない。
どうせならさっさと眠ってしまって体力を回復しておくべきだ。
そう思って私は布団の中で丸まった。
そこへしばらくして、扉の開く音がした。
きたか!
遂に来た。これが世の吟遊詩人たちが謳うところの「くっころ」というやつだろう。捕らえられた姫騎士がオークに無理やりいやらしいことをされるのだ。
くそう! 来るなら来い! やるならやれ! 私はえっちな声などださないぞ!
布団から離れた私は壁際まで後退する。
「傷はどうですか? 痛みはないですか?」
そこへ何食わぬ顔でお盆を運んできたオーク。
ふん。何を紳士ぶっているんだこの汚らわしいオークめが!
すまし顔なんかして。どうせズボンの中ではその汚らわしい肉棒をビクンビクンと振るわせているくせに。
と思ってオークの下半身を見ると平たかった。
あれ。
オークって巨根では?
大きくなったらそんな布の服なんかでは押さえきれませんよね?
という事は、欲情してない?
まさか。
自分で言うのもなんだけど、私結構美人な方だと思うのだけど。
え? まさか。え?
その時、私は閃いた。
もしかしたらこのオーク、オークの中でも希少趣味だという、同性愛者なのでは、と。
「……(多分そうだわ。それならば私に手を出さなかった辻褄が合うのだわ)」
私は九死に一生を得た。彼はオークの上位種だ。確か、ホモゴブリンだかホブゴブリンだかいうアレと同じなんだ。ホモは知能が高いと聞いたことがある。さしずめ彼はホモオークと言ったところだろう。
ならば犯される危険はないのかもしれない。
私は少し安心して、話をしてみる決意をした。
「あなたが助けてくれたのですか?」
「えぇまぁ。たまたま通りかかりましてね。ところで、もしよければお茶でもいかがですか? お菓子も用意しました」
なんと、食事だけでなくお茶の用意までしてくれた。
あぁ、やはり彼はホモオークだ。毒見とかしてるし。
これならば人間の話も理解できるだろう。
私は彼の用意したお茶とお菓子をいただくことにした。
何だこのお茶は。不思議な香りだ。そして飲みやすい。砂糖を入れなくても苦くない。
いやむしろ甘いお菓子によく合う。凄く合う。凄くおいしい!
あ、だめだめ、お菓子に夢中になっている場合ではないのだわ。
会話が成立するならこのオークから話を聞けるはず。状況について聞かなければ。
「皆は、どこにいるのでしょうか?」
「すみません。私が助けられたのはあなただけでした。損傷がひどくとても手が付けられない状態で、勝手ながら埋葬させていただきました」
「……そう、ですか」
なんてこと。全滅したというの。
あぁ、みんなごめんなさい。私が近道を選択して森を抜けようなんて言ったばかりに。
自分の責任だ。申し訳なくて悲しくなる。
でも一刻も早く王都に帰らなければならなかったのだ。
……いや、それも今となってはもう間に合わないか。
敵の何度もの追手によって足止めを喰いすぎた。私が帰る頃にはもう王都にヴァルマス家の先鋒隊がついている頃かもしれない。今更急いで飛び出しても何の助けにもならない、いやむしろ足手まといになるだけだろう。
そんな私の心情を察したのだろうか。
「今後どうされますか? あなたさえよければ体調が戻るまでここにいらしていただいても構いませんが」
その言葉に身が震える。
戦端が開かれてしまえば私にできることなどない。ましてや手足の一部を失っている身だ。避難することになれば足手まといになる。
しかしいいのだろうか。
ここで諦めてしまっても。ここで身を潜めていても。
もしヴァルマス家がまだ王都についていなかった場合、私の持つ情報は王都防衛にプラスになるはずだ。奇襲される前に準備を整えられればきっといくらかでも有利に事を運べるだろう。
ここで養生していては私を庇って死んでいった供の者たちに申し訳が立たない。
「私は、王都に行かなければならないのです」
「王都ですか」
知能の高いホモオークならわかるだろう。それが何を意味するかを。
私はよい身なりをしている。そしてかなりの美少女だ。高貴な人間だという手がかりは売るほどある。
そしてそんな私の手足は欠損しているのだ。
さぁ供をなさい。オークはオークでもホモならばいいでしょう。その汚らわしい身でも私は触れられることを我慢いたしましょう。
私はオークが恭順するのを待つ。
でもこのホモオーク、察しが悪いのか黙っている。
私は間を繋ぐためにお菓子を食べる。お茶を飲む。
しかしオークは動かない。
え、なんで黙ってるの?
わかるよね? 知能高いよね? ホモだもんね?
あ、お菓子無くなった。お茶もなくなった。
しょうがないのでお茶をお代わりです。
そんなこんなをしていたら、ようやくオークが口を開いた。
「では、お好きな時に出発なさってください。鍵はかけておりませんので」
「え……」
は?
何言ってんの? ホモは弱視なの? 私の身体が見えていないの?
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